2021年03月25日

宇宙戦士コディ(Commando Cody: Sky Marshal of the Universe=ロケットマン・コディ) 放送リスト

「Commando Cody: Sky Marshal of the Universe」はアメリカで1953年に劇場で先行上映されたのち1955年7月16日〜10月8日にかけてNBCで放映された全12話から成る連続SFテレビドラマシリーズである。

日本では「宇宙戦士コディ」の邦題で、1958年にNET(日本教育テレビ、現:テレビ朝日)で放送されている。海外ドラマ史を取り上げた文献の中には「ロケットマン・コディ」という邦題で紹介しているものもあるが、この2つの邦題は「NETでの本放送タイトル」と「他局での放映タイトル」という関係ではない。
まず、NETで本放送が始まった当初、邦題は下記の新聞記事でも紹介されているとおり「宇宙戦士コディ」となっていた。
ComCody.jpg
わが名は“宇宙の保安官” NETテレビ「宇宙戦士コディ」
NETテレビ きょう午前11時からは、新番組・米テレビ映画「宇宙戦士コディ」。“宇宙の保安官”コマンド・コディの活躍をえがく空想冒険物語だ。
今夜の第一話は「宇宙の敵」。コディ(ジュト・ホールデン、声・青野武)は、地球を侵略しようとする宇宙の敵と戦うため新型ロケットの建造をはじめた。技術者のテッドとジョーンは、司令官ヘンダーソンの許可でコマンドといっしょに働くことになる……。

写真:熱線銃で活躍するコディ(ジュト・ホールデン)と助手ジョーン(アライン・タウン)

ところが本放送第4話から突然タイトルが「ロケットマン・コディ」に改題され、以後NETでの再放送は全て「ロケットマン・コディ」に統一されて現在に至るという次第である。改題の理由はわからないが、あえて邪推するならば……まだ戦争の記憶も残る時代でもあり「戦士」という直訳由来の単語を誇らしく番組名に使うのは教育番組専門局として放送免許を受けた「日本教育テレビ」には相応しくない、と判断されたのかもしれない。
吹き替えでは主人公コディを青野武、ジョーンを前田敏子、テッドを愛川欽也が演じている。

ストーリーについては改めて触れるようなものもない典型的な連続活劇であり、登場する宇宙人の容姿も中世の騎士のようでアナクロ感を拭いきれない。しかし実景と見比べたときに違和感をおぼえにくいというモノクロ特撮のメリットが効果的に発揮されていることは特筆に値する。
たとえばロケットパックを背負ったコディ(の人形)が矢のような一直線でオープンセットの空を飛んで行き、また別の回では光線砲を受けた岩山がグニャグニャに溶けて曲がっていく。実景のつもりで見ていると突然ありえない光景が目の前に現れて「えっ?」と驚く、そんな心地よい混乱を体験できる理想的なセンス・オブ・ワンダーを内包した痛快娯楽SF作品と評してよいだろう。

【1958年】朝 11:00 枠 ※ちなみにアメリカNBCでの本放送も朝11時枠であった。
題名「宇宙戦士コディ」
1 07/14 宇宙の敵
2 07/21 ロケットを盗め
3 07/28 遊星人の逆襲

題名「ロケットマン・コディ」(以後、全話を「ロケットマン・コディ」に統一)
4 08/04 暴風雨作戦
5 08/11 敵ロケットを逮捕せよ
6 08/18 黒い太陽
7 08/25 怪物ロボット現わる
8 09/01 月の基地を爆破せよ
9 09/08 太陽を撃て
10 09/15 北極の嵐
11 09/22 水星を探検せよ
12 09/29 支配者を逮捕せよ

【1958年】夕方 18:15 枠(前番組「アラーの使者」と後番組「狼少年ケン」の繋ぎ)
再1 10/14 宇宙の敵
再2 10/21 ロケットを盗め
再3 10/28 遊星人の逆襲
再4 11/04 暴風雨作戦
再5 11/11 敵ロケットを逮捕せよ
再6 11/18 黒い太陽

【1959年】夕方 16:30 枠
再7 01/06 (サブタイトル不明)
再8 01/13 (サブタイトル不明)

なお本作を語る上ではリパブリック・ピクチャーズがかつて製作した“砲弾型ヘルメットをかぶり背中にロケットを背負って空を飛ぶヒーロー”の登場する連続活劇映画「King of the Rocket Men(1949年6月公開)」、「Radar Men from the Moon(1952年1月公開)」、「Zombies of the Stratosphere(1952年7月公開)」といった各作品についても紹介するべきだが、これらは日本未公開作品であり、当時テレビを見ていた日本の視聴者は他の映画との関係など知らず宇宙戦士コディの活躍だけを楽しんでいたことであろうから今回は取り上げない。
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2021年03月17日

宇宙物語・遊星人M 全話レビュー/第5話「不敵な挑戦」

宇宙物語シリーズその二 遊星人M
第五話「不敵な挑戦」
1957年1月9日(水)20:30~21:00放送

原作:香山滋、脚色:魚住大二、音楽:宇野誠一郎、広告代理店:博報堂、提供:シルバー携帯ラジオ(白砂電機)
制作:大垣三郎、演出:北代博、フロアマネージャ:忠隈昌、AD:柴田馨、デザイン:坂上建司、美術連絡:青山宏央、美術進行:芦田光長、小道具:高橋俊一、衣装:山我幸江、化粧:小松英子、音響:高橋孝・市川昭和・居作昌果、テクニカルディレクター:岩西浩、カメラ(ロケ):糸田頼一・藤波貞夫・中村昭三、ビデオエンジニア:北大路矗、オーディオエンジニア:林清男・須賀良浩、照明:倉本泰司

出演:
浅香(天文台勤務 理学博士)50歳……江川宇礼雄
園部伊都子(その助手)26歳……西朱美
水島亮吉(新聞記者)33歳……沼田曜一
関なち子(その恋人 インターン医学生)23歳……藤波京子
小野寺善樹(国立細菌学研究所長 医学博士)45歳……河野秋武
今井周一(科学小説家 アマチュア写真家)36歳……原保美
今井カズ子(その妹 サラリーガール)21歳……青島純子
寺尾晃(カズ子の恋人 サラリーマン)27歳……相原巨典
遊星人M(惑星ガロア人)……江見渉
守口(動物園守衛)……天草四郎
早野少年(給仕)……山本豊三
ゴリラ……高木新平
小塚(天文台要員)……寺田彦右
警視庁要員……荻原昂
ナレーター……浦野光

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この空のどこかに空飛ぶ円盤すなわち遊星ガロアの宇宙船が保護色を使って停止していると考えた浅香博士はサーチライトを使って円盤を照らし出す実験を「空の怪異対策委員会」で主張。その日の夜半、水島・周一・寺尾をはじめ大勢の野次馬たちが見守る中でその実験が行われた。しかしこの時すでに遊星人Mの空飛ぶ円盤は周一の妹カズ子を乗せたまま地球を遠ざかりつつあった。Mは武器として使っていた病原体に特効薬が作られてしまったことを逸早く察知し、新たな武器を調達する必要に迫られていたのだ。
M「必ず、再びやってくる、あの女のためにも」カズ子「あの女?」M「園部伊都子」
カズ子はMが無自覚な様子で口走ったその言葉を訝しんだ。Mは相変わらず感情を表に現さないようだったが、円盤を操縦している間にもMの頭の中ではだんだんと伊都子に対する執着が大きくなっていったようだった。
M「あの女……そうだ、引き返す」カズ子「えっ、何て言ったの」円盤が大きく方向転換したのを感じ取ったカズ子が聞き返す。「どうしたの……引き返すの?」Mは答えない。「引き返すのね!」目を輝かせて喜ぶカズ子。

一方地上では――浅香博士の予想に反してサーチライトは夜空の中に何も照らし出すことがなかった。何も起こらないことに飽きた路上の野次馬たちは三々五々と散っていく。周一は予想外の結果に自分が信じられない様子だった。寺尾はサーチライトで照らしたという行為が円盤に捕まっているカズ子にとって悪影響とならないか懸念して言う。「Mのやつ、腹立ちまぎれにカズ子さんを……」周一「Mはこれまでのところ、警告したとおりに行動してる……その点は大丈夫だよ」「あんたは信用し過ぎるよ、人を」「人……?」寺尾の言葉に引っかかるものがあったのか、変な顔をする周一。水島がピンときて周一に尋ねた。「今井さん、人でなけりゃ何だと思うんです、Mを」「さぁ……しかし少なくとも……」そのとき寺尾が路傍の闇の中に何かがいるのに気付いて「おやっ、何だ!?」と振り返った。突然のことにギョッとする三人。「どうしたの」「何だか唸り声みたいな……例のゴリラかと」「ゴリラ?」問い返されて考え直す寺尾。「まさかこんなところにねぇ……僕は臆病なんかじゃないですよ? なにしろあのゴリラ、摩訶不思議の術をMから授かってる……」そう言う寺尾の背後から本当にゴリラが姿を現わした! 周一と水島は驚き、ゴリラを刺激しないよう手真似で寺尾に知らせようとするのだが寺尾は気付かない。「そうじゃないですか、第一この大都会の中を逃げ回ってて誰にも見つからないなんて……そうだ、わかった。Mと一緒に円盤の中にいるんだ……何です、どうしたんです?」ようやく二人の様子に気づいた寺尾は振りかえり、驚いて水島にしがみつく。迫るゴリラ、じりじりと後ずさる三人……。ところがゴリラの様子が何だかおかしい。勢いがなく、何だかよろめくような足取りである。周一「こいつ変だぞ、死にかけてるんじゃ……」水島「あっ、そうだ、病気なんだ。遊星人Mの意志が働きかけているときだけ元気な、あの病気なんだ」周一「じゃ、今は……」ドタリとその場に倒れ伏すゴリラ。周一「今はMの意志が作用していないんだ。しかし、なぜだろう……ゴリラが捕まっちゃってもいいつもりなのかしら」水島「もう用済みなのかな」周一「あるいは、作用できる範囲の外にいるのか……もしかすると」周一は夜空を見上げて言う。「もう、円盤はいないのでは……」

円盤ではMが操縦をやめてテレビモニターのダイヤルを操作し始めた。カズ子は円盤がテレビを映せるほど地球の近くまで戻ってきたと喜んだが、そこに映し出された三鷹天文台の様子を見て驚く。「どうしてここは昼間なんでしょう? 私たちがさっき飛び出したのは夜中前で、あれからまだ1時間ちょっとしか経っていないのに」M「時間の収縮が起こったのだ。私たちの飛んだ時間は1時間でも、その間に地球では三日経ったのだ。非常な速さで飛んだから」カズ子はMの話が信じられないのでトリックではないかと疑うが、Mは「今にわかる」とそれ以上の説明はせず、天文台の施設の中から伊都子のいる一室を見つけ出した。「あの女……あの女だ」

園部伊都子の傍らには浅香博士がおり、そこへ周一、寺尾、早野少年が入ってきた。周一は浅香に、昨晩のサーチライト探索で円盤が見つからなかったのは既に円盤が飛び去った後だったからではないかと話し、昨晩遭遇したゴリラが半死半生になっていた一件を伝えた。そのゴリラは昏睡状態で動物園に引き取られていったという。「円盤は地球を去ったというのかね」「ええ、何かの事情で」「君の妹さんを乗せたまま……?」痛いところを指摘されて暗然とする周一。

円盤の中でその様子を見ていたカズ子はせめて自分の声だけでも兄・周一に伝えようとモニターのダイヤルに触れるが、画面は消えてしまう。Mはカズ子の手を静かにダイヤルから除け、音声はこちらから相手には伝えられない事、M自身の意志を伝える時は精神感応で聞こえたように感じさせていることをカズ子に説明した。そしてMが再びモニターを操作すると、今度は動物園のゴリラの檻が映った。檻の前には守衛の守口や警備主任、猛獣使いのシャムラたち数人が集まってなにやら話し合っているのが見える。

そこへ鞄を抱えた関なち子と小野寺博士が園長に案内されて来た。例の熱病の特効薬でゴリラを治療しようというのだ。後ろにはちゃっかり水島記者と亀田カメラマンもついてきている。ゴリラが眠り続けているのを心配する動物思いの守口を、なち子は「大丈夫ですわ。この注射一本で……現に大勢の人が射つと同時に全快してるんですから」と元気づけた。小野寺が注射器を受け取り、シャムラの先導でゴリラの檻に入っていく。

カズ子は、Mがゴリラを治療させまいと遠隔操縦の機械に手を伸ばしたのに気付き、その腕にしがみついて邪魔をするが、Mに「お嬢さん!」と凄まれてハッと手を放してしまう。「……おとなしくせねば、ただではおかぬ」と長い指をヒラヒラさせてカズ子に迫るM。

地上の動物園では檻の中の寝床で眠っているゴリラの様子をシャムラが確かめ、小野寺に向かって頷く。それを受けて小野寺が注射にかかろうとしている――。

Mに迫られてカズ子は後退りしていたが、やがて壁際に追いやられてしまった。カズ子の背中がわずかに壁と触れたとき、Mが手をさっと振り降ろすと途端に怪しい音が響き、カズ子は失神してその場にくずおれてしまう。邪魔者を眠らせたMは急いで遠隔操縦機のもとへ戻り、ゴリラを目覚めさせた。

小野寺が今まさにゴリラへ注射しようとした時、どこからか怪しい音が響いたと思うと、突然ゴリラが唸り声をあげた。一瞬たじろいだ小野寺は、なお注射を射とうとしたが、ゴリラは勢いよく身を起こして立ちあがった。シャムラは小野寺となち子を檻の外へ逃がしながらゴリラに戻るよう命じたが、ゴリラはシャムラなど相手にせず、その場にいた人たちを威嚇しながら檻をから出て木陰へとかくれ潜んでしまった。シャムラは制御不能になったゴリラの射殺を決意し、銃を取りに行ってしまう。ゴリラが殺されてしまうのを憐れんだ守口は、小野寺から奪うように注射器を取って、自らゴリラに注射を射つべくゴリラが隠れているはずの木陰へと単身近寄って行った。ところが……「あれ、どこへ行っちゃったんだ……いませんよ」「そんなバカなことが……他に行きようがないじゃないか。みんな見てるんだもの」「だって、いないものはいませんよ」「変ね。病院の屋上でもMはこんなふうにいなくなったわね」この不思議な現象を目の当たりにして、小野寺は何かの仮説をつかんだようだった。しかし耳敏く聞き返した水島に対して小野寺は「いやいや、単なる憶測にすぎん。というよりも、夢のように架空な理論だよ」と慌てて口を閉ざした。

警察無線では脱走した依然ゴリラが発見されていないこと、厳重警戒のうえ見つけ次第射殺することが全管区に伝えられていた。警戒にあたる武装警官たち――。

円盤の中でカズ子が意識を取り戻すと、Mがモニターのダイヤルを操作していた。殺されていなかったことに安堵するカズ子にMは「殺しはせぬ、無益には。生かしておいて役に立つものは」と言う。「誰があなたなんかの役に立つものですか。ゴリラはどうなったの」と憤慨するカズ子だったが、Mは答えずに浅香たちがいる天文台のあの部屋の様子を映しだした。

浅香「……ガロアなんて遊星は世界の誰もまだ発見したことのない星だ。少なくとも数百光年、いや数千光年の向こうにある小さい星だろうと思われる」寺尾「数千光年……じゃ、そこからやってくるには」早野少年「光と同じ速さで飛んでも数千年かかるんですか」寺尾「大変だ、円盤に乗ってるやつだって死んじゃうじゃないですか、その間に」浅香は微笑んで、周一にアインシュタインの相対性理論を説明するよう促す。伊都子も微笑んで周一の説明を見守っている。周一「今世紀の初めにアインシュタインという科学者が時間収縮率の法則を発見したんだ。それによると、地球の時間と空飛ぶ円盤の中の時間とは、時間の長さが違うんだよ」寺尾「そんなバカな」周一「たとえば光が届くのに百億年かかる距離を、光と同じ速さのロケットで飛ぶとすると、何年で行けるか……」寺尾「やっぱり百億年さ、同じ速さなんだもの」周一「いや、三十三年で行ける。ロケットの中では時間が収縮するんだ……速度が速くなれば速くなるほど、その中の時間は地球の時間の何分の一、何十分の一に縮まってしまう」伊都子が早野少年に「わかった?」と聞くが、早野少年は首を横に振るばかり。寺尾「しかし、ほんとか嘘か誰も経験したものはないんだから……」浅香「いや、ある。現に今も一人……ねえ、今井君」寺尾「今も一人? 誰です」周一「カズ子だ。ガロアの円盤が飛び去ったものとすれば、多分あの時からだから三日経つ……しかし円盤の中のカズ子には、おそらく数時間しか経ってないだろう」

円盤の中でMがカズ子に振る。「その通りだ。お嬢さん、わかったか」カズ子も早野少年のように首を横に振るばかりだ。

そのとき天文台の小塚要員が浅香のもとへ報告に来た。「ただ今ラジオのニュースで、動物園から逃げ出したゴリラが……」周一「えっ、ゴリラが逃げ出した!?」伊都子「まあ、また……」小塚要員「どこにも姿を見せなかったんですが、ついさっき、この近くで見かけたものがあるから注意してくださいと」そこへ水島となち子が慌ただしく入ってくる。「ごめんなさい、ゴリラがまたずらかったんですよ」伊都子「聴きましたわ、この付近に現われたんですって?」周一「Mの仕業だ」水島「もちろん」寺尾「何を企んでるんだ」水島「また浅香博士か、あるいは園部女史……」伊都子「まあ、いやですわ」なち子「悪いわ、そんな冗談言って」水島「いや、どうもあの病院の屋上以来……」一同、それを思い出してギクリとする。

円盤内のカズ子「そうだ、わかったわ……ゴリラに園部さんを攫わせる気ね!?」Mは答えない。

水島はMの円盤がふたたび地球に舞い戻ってきていることを確信し、サーチライトの夜に寺尾が言っていた“空一杯に無数の風船を上げて円盤に当てる”作戦を浅香に提案した。それを試してみるのも面白いと思った浅香は、関係当局へ連絡するために席を立つ。

大喜びで早く風船を上げてほしいと浮足立つカズ子に「その必要はない。こちらから姿を見せてやる」と独りごちるM。

浅香が部屋を出ている間、周一はMやゴリラがなぜ自由自在に姿を隠せるのかについて、科学小説家独自の見地から考えを巡らせていた。水島「また保護色ですか?」周一「いや、少し違う」早野少年「じゃ、わかってるんですね。教えて下さいよ」周一「うん、夢みたいな説明だが理屈には合う」水島「夢みたいな……? 小野寺博士もそう言ってた」周一「小野寺博士も?」水島「面白い! さあ、君の話から聞きましょう」そのとき伊都子がアッと声を上げた。「窓が、今、開きかけたの」すると皆が見ている目の前で窓がスーッと開くではないか。凝然となる一同。水島と寺尾が窓の外を覗いて誰もいないことを確認したが、そのとき空にだんだんと何かが姿を現し始めた。「あっ水島さん、あれは円盤じゃないですか!?」「えっ」「なに、円盤!?」一同が窓へ駆け寄ると、空には円盤が次第に形を現していき、やがてその姿を完全に現した――。

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【解説】
円盤と地上との2元中継のような構成の回。画面の対象が行ったり来たりするので放送局のスイッチャーはもちろんのこと、視聴者もさぞかし目まぐるしかったのではないか。

江見渉(=江見俊太郎)が演じる遊星人Mは細長い指をヒラヒラさせるという描写から一応香山滋の原作に沿った身体的特徴を持つようだが、性格は全く違うようだ。原作のMは魔術師ヨチヤムリを名乗って怪しげな言動で人々を引っ掻き回す怪人物だが、ドラマのMは寡黙で感情をほとんどみせない。宇宙物語シリーズの前作「誰か見ている」で白石奈緒美・戸川弓子・由美川淳一(=朝戸鉄也)が演じた宇宙人“アンチクトン人”が感情をみせない謎の人物として描かれていたことが、本作にも引き継がれているのかもしれない。
ゴリラを演じているのは戦前からのアクションスター高木新平。半年前にも同じラジオ東京テレビの特撮時代劇「猿飛佐助旅日記」で魔人ガラジャードを演じたが、その時のフランケンシュタインばりの特殊メイクは高木氏本人の考案によるもの。翌年からラジオ東京テレビ=TBSで放送が開始されることになる「月光仮面」シリーズで巨獣マンモスコングを演じたのも高木氏である。

今回は特に特撮を駆使した演出はあまりないようだ。冒頭で瀕死のゴリラに遭遇する夜の暗い歩道はスクリーン・プロセスを使用している。生放送劇中で撮影済みフィルムをインサートした場面は1.円盤が地球から遠ざかるところ、2.輝く天体の間を円盤が飛んで行くところ、3.円盤内の壁に三鷹天文台の遠景が映し出されるところの三か所。うち1と2は第4話でも使用したフィルムだろう。今回、円盤のモニター越しに地上の様子を見るシーンが何度かあるが、台本ではシーンによって「テレビ」「素」と注釈が添えられている。おそらく「素」は何も加工を施さない素の演出を指し、「テレビ」と注釈されているシーンは全て円盤のモニター越しに見ているシーンなので、テレビ画面を直接カメラに撮ったかまたはテレビ画面の枠の囲みを合成したと考えられる。下記画像は「遊星人M」から1年10ヵ月後、既にVTRが導入された時代の東芝日曜劇場「マンモスタワー」(作:白坂依志夫、演出:石川甫・蟻川茂男・神永方義)がTBSチャンネルで放映された際のキャプチャだが、黒木本部長がテレビインタビューに答える場面はテレビ画面撮り、奈美がミュージカル番組で歌う場面は合成と、それぞれ異なる方法で表現されていた。台本上での指示の有無は確認していない。みすず書房「季刊テレビ研究」第2号の脚本採録では技術指定に関する記述は含まれていなかった。同書では宇宙物語シリーズでもテクニカルディレクターを務めた岩西浩による技術解説も掲載されているが、VTRとフィルムとの調和に腐心した記述が主であり、このようなテレビinテレビを表現する演出方法についての言及はなかった。YuseijinM_03.jpgYuseijinM_04.jpg

なお、この第5話から放送時間が木曜ヨル8時から水曜ヨル8時30分へと移動し、スタジオもこれまでの60坪のBスタジオから100坪のAスタジオに代わっている。参考までに台本に記された進行予定によると、ドラマ本編が終わるのが8時57分22秒。そのあと次回予告を8秒とり、8時57分30秒からCMフィルム(1分14秒)、それに続いて横ロールテロップによる「今週の配役」を流す段取りとなっている。この配役紹介は生放送による本編時間が押したり余ったときのクッションの役割を兼ねており、結果的に8時58分48秒から提供タイトル(5秒)を映せるよう進行時間を調節する。8時58分53秒に終了タイトルを表示。ここもまたクッションの役割を兼ねており、アナウンサーが次のようなアナウンスを行なった。
この番組について皆様のご意見やご希望がございましたら、
港区赤坂局区内 ラジオ東京テレビ「宇宙物語」
の係までお寄せ下さいますようお願いいたします。
では来週のこの時間までさようなら
この局アナウンスを担当したのが誰だったかは現時点では判明していない。可能性のある人物を挙げるならば、番組ナレーターであるKRT劇団所属の浦野光、前番組「誰か見ている」でナレーターを務めたKRT局アナの鶴田全夫、生コマーシャル担当者の高橋恵美子……といったところか。

8時59分20秒から次の番組までの40秒間はステーションブレークとなる(詳細は下記「テレビ放送ハンドブック」参照)。
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2021年03月06日

「宇宙パトロール・オリオン」がリメイクされる?

放送開始から55年、ここにきて驚くべきニュースを見かけたので紹介したい。
ドイツのWEBニュースサイト「ハイゼ・オンライン」の記事によると、当ブログでも全話レビューをもって紹介した60年代特撮テレビドラマ「宇宙パトロール~宇宙船オリオン号の素晴らしき冒険~(Raumpatrouille – Die phantastischen Abenteuer des Raumschiffes Orion)」がババリア・フィルムによってリメイクされるかもしれないというのだ。

https://www.heise.de/news/Raumpatrouille-Orion-Ruecksturz-ins-Fernsehen-5072795.html
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とはいえ記事によれば、記者が掴んだこの企画はまだごく初期の段階であり、実現の可能性も含めて何も決定していないと報じている。あとの記事は1966年放送「宇宙パトロール」の簡単な説明と、ババリア・フィクションが2018年に80年代のドラマをリメイクしたほかいくつかのドラマの製作実績があることを紹介するのみである。

2003年にはいくつかの新撮を加えて再編集された劇場映画「宇宙パトロールオリオン・劇場に帰還す(Raumpatrouille Orion – Rücksturz ins Kino)」が公開されたが、いまひとつ成功を得られなかったという。今回のリブート企画がうまく進めばオリジナルシリーズも再び注目されることになるだろうし、デジタルリマスターBlu-ray BOXの発売だって夢ではないかもしれない。ひょっとすると、まだ日本で一度も放送されていないオリジナルシリーズ全7話に日本語吹き替えが付いてスカパーで放送されるような日が来るかもしれないのだ。

そんなわけで、主人公マクレーン大佐に憧れる極東の島国の1ファンとしてリブート企画を心から応援している次第である。

2021年03月05日

イギリスCFF製作SFテレビ映画「宇宙人カドイン」「金星から来たミーバ」「宇宙から来たボール」

子供のころ、夕方にNHKで不思議な海外ドラマが放送されているのを偶然見たことがある。子供向けののどかな宇宙人モノなのだが、宇宙人の頭から生えた肉質のネギ坊主が食事中のお母さんの方に向かって動くシーンや、底なし沼のようになった芝生に人間が顔まで埋まってしまうシーンがトラウマのように焼き付いて十数年経っても脳裏から消えなかった。大学生になって併設図書館の書庫に入り浸るようになると新聞の縮刷版を手繰る楽しさを覚え、ふとあの番組はいったい何だったのか探してみようと思いついた。タイトルどころか何年何月のことかもわからないので、自分が物心ついたころにあたる数年分のテレビ欄の全ページを片っ端から探してまわった結果ついに「これに違いない!」という番組を特定することができた。それはイギリスの児童劇映画財団「Children's Film Foundation」(略称CFF)が1972年に製作・放映したSFテレビ映画「Kadoyng」で、日本ではNHK総合テレビが「宇宙人カドイン」という邦題で1973年12月31日(月)――つまり大晦日の18:00~18:50に放送していたものだった。

大まかなストーリーを掻い摘んで紹介しよう。
イギリスの小さな村で農業を営むバルフォー家の3人の子供たち、長男のビリー・長女のルーシー・末っ子のバーニーは林の入口に不時着している巨大なタマゴ型の宇宙船を発見、中から出てきたちょっとトボケたヒッピー風の宇宙人・カドインと友達になる。惑星ストイカルの住人であるカドインは見た目は地球人にそっくりだが、頭のてっぺんからネギ坊主のような触角が生えていて、瞬間移動や人間を自由に操る超能力を使うことができた。ルーシーが持ってきたシルクハットで触角を隠したカドインは、地球人のふりをしてしばらくバルフォー家に住むことになった。
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そのころ彼らの村にはひとつの問題が立ち上っていた。地元の政治家が不動産業者と組み、広場に高速道路を通すというのだ。バルフォー一家は高速道路に反対する村民の代表で、推進派との公開討論会を控えている。ちなみに政治家の息子とその取り巻きはふだんからビリーたちをいじめているイヤなやつ。バルフォー夫妻に協力することになったカドインは、公開討論会の傍聴席から推進派にこっそり超能力をかけて発言をめちゃくちゃな言葉に変えて妨害活動を行なったが、むなしくも高速道路の建設は決定してしまった。
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こうなったら最後の手段、植物を一晩で巨大に育てるコンキーという薬を広場に撒いて巨木だらけにし、工事を邪魔するしかない。起工式を明日に控え宇宙船の自立型コンピューターに相談して薬品の調合方法を調べるカドインだったが、猛烈な睡魔が襲ってきて頭がうまく回らない。困ったバルフォー一家はカドインの補佐となって薬品作りを行ない、夜が明けないうちに一家総出で広場に薬品を撒いて回った。
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翌朝、広場では政治家やその息子、不動産業者たちが集まってセレモニーが始まった。固唾をのんで見守るバルフォー一家だったが、テープカットが始まっても何も生えてくる様子はない――と、そのとき政治家たちの足元の芝生がグズグズと柔らかくうねり始めた。まるで底なし沼のようになった芝生は、その場にいた政治家や息子や不動産業者を地面の中に飲みこんでいくではないか。驚いたカドインがルーシーにどうやって薬を作ったか聞きだし、さらに驚いて叫んだ。「そりゃコンキーじゃない、スロンキーの作り方だ! スロンキーは何でもグニャグニャにしてしまう薬なんだ……」
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後日、高速道路計画は撤回され、カドインは広場を元に戻すために改めてコンキーを作り直した。ところが広場の入り口に入るとき、バーニーが気を利かせて有刺鉄線を持ち上げようとしてくれたのにカドインはちゃっかり瞬間移動で広場内に入ってしまう。ムッときたバーニーがカドインの尻を叩くと、びっくりしたカドインはコンキーをその場にこぼしてしまった。コンキーを被った草はたちまち見上げるような巨木に早変わり。たまたま自転車で巡回中だったお巡りさんは目の前で伸びていく巨木に仰天、転倒して腰を抜かしてしまう。それを見て気まずそうにそそくさと帰っていくカドインとバーニーだった……

原作・脚本および主人公カドインを演じたのはレオ・マグワイア(Leo Maguire、声:富山敬)。三兄弟の長男ビリーをアドリアン・ホール(Adrian Hall、声:沢村正一)、長女ルーシーをテレサ・コドリング(Teresa Codling、声:関口奈緒美)、末っ子のバーニーをデビッド・ウィリアムス(David Williams、声:内海敏彦)が演じた。監督:イアン・シャンド。
ちなみにカドインが着ている宇宙服は「謎の円盤UFO」で宇宙人が着用している宇宙服のうちの1つを流用していることでも知られている。

今回DVDを見返しながら記憶の細部を補完してあらすじを書いてみたが、50年ちかく前に一度見たときの記憶とだいたい合っていたのには驚いた。それほど子供心にも記憶に残るような作品だったということだろう。本作の映像ソフト化はビデオテープ草創期にβとVHSで発売された事はあるが、絶版になってからはソフト化の機会に恵まれず再見することができなかった。しかしCFF作品を管理している英国映画協会「British Film Institute」(略称BFI)は近年になって協会が保管する映像作品の再評価に積極的となり、「Children's Film Foundation Collection」と銘打って過去の作品を次々とリリースするようになった。そして2014年、CFFの代表的なSF作品をカップリングしたDVDシリーズ第6弾「OUTER SPACE」に「宇宙人カドイン」が晴れて初DVD収録されるに至ったのである。よって今では手軽に鑑賞することができるのだが――イギリス版DVDなので映像規格がPALであることや、字幕が含まれていないなど、日本のファンが視聴するにはまだまだハードルが高い面がある。なんとかNHKで当時の日本語吹き替え版を再放送してもらえないものだろうかと切に願っている次第。上記あらすじも私が日本語吹き替え版で視聴したのが50年近く前なので、ストーリーはともかく台詞まわしはもうほとんど記憶の彼方になっており、せいぜいカドインの頭に生えている触角のことをバルフォー一家が「タマネギ」と呼んでいた事くらいしか覚えていない状態だ。従って聞き取りミスや思い違いが含まれている可能性があるので気の付いた方はコメント欄から御指摘をお願いしたい。
Kadyng03.jpg


さて2014年発売のDVD「OUTER SPACE」には「宇宙人カドイン」の他にもCFFが製作した子供向けSFテレビドラマが2本収録されているが、こちらも「宇宙人カドイン」と同様にNHK総合テレビで日本語吹き替え版が放送されているので放送履歴を簡単に紹介しよう。

ひとつは1956年作品「Supersonic Saucer」。これは劇映画「E.T.」を先取りしたような作品で、空飛ぶ円盤に変身できる宇宙人の子供ミーバを操り人形を使って演じ、生身の子役俳優たちと絡ませるという独創的な方法で撮られた。例えるならアメリカのSFコメディ「アルフ」のような作品だが、ミーバの外見が何となくベールを被った中東の女性っぽい出で立ちなので(ただしミーバは男の子らしい)、私は「透明ドリちゃん」の主人公青山ミドリと水の精との絡みを連想した。
日本ではイギリス放映から10年後の1966年8月15日(月)、13:25~14:15に「金星から来たミーバ」のタイトルで放送されている。ミーバと交流を結び誘拐犯から彼を守る少女スマックをマルシア・マノルシュ(Marcia Manolescue、声:陳嘉子)が、同じくグレタをギリアン・ハリソン(Gillian Harrison、声:松尾佳子)が、堅物の少年ロドニーをフェラ・エドモンズ(Fella Edmonds、声:野中繁夫)が演じた。原作:フランク・ウェルズ、脚色:ダラス・バウアー、監督:S・G・ファーガソン。

もうひとつは1977年作品「The Glitterball」、ボールのような宇宙生物の活躍をコマ撮りアニメーションで活き活きと描いた。日本のマンガや特撮でいうと「星雲仮面マシンマン」のボールボーイのような感じか、手足がない点でいえば益子かつみの「怪球Xあらわる!!」のほうが近いが「The Glitterball」はそこから更に目もアンテナもないただの銀のボールに見える。
日本ではこれまたイギリスから遅れること4年後の1981年4月29日(水)、17:05~17:55に「宇宙から来たボール」の邦題で放送されている。主人公マックス・フィールディング役をベン・バックトン(Ben Buckton、声:小山渚)、ピート役をキース・ジェイン(Keith Jayne、声:大見川高行)、ジョージ役をロン・ペンバー(Ron Pember、声:大泉滉)が演じている。原作・脚本:ハーレイ・コークリス、ハワード・トンプソン、脚色:ハワード・トンプソン、マイケル・エイブラムス、監督:ハーレイ・コークリス。

DVD「Children's Film Foundation Collection vol.6 OUTER SPACE」ではこれら3作品が現存する35mmインターポジフィルムを元に(音声は「宇宙人カドイン」のみ光学トラック、他の2本はシネテープを使用)デジタルリマスタリング処理を経て収録されており、ハーレー・コークリス監督、BFIプロデューサーのアレックス・デビッドソン、BFI映像キュレーターのヴィック・プラット、ウェールズ大学映像文化上級講師のロバート・シャイルらによる詳細な解説書が付属している。

子供のための映画を専門に数多く製作したCFFには他にも1962年のテレビシリーズ「Masters of Venus」などSFドラマがいくつか存在するようだが日本で放送されるケースはあまりなかったようだ。少年ドラマシリーズにCFF作品が含まれていないだろうかとアスキー出版局刊「NHK少年ドラマシリーズのすべて」巻末の放映番組リストを眺めてみたが、米英仏豪いくつもの国の数多くの制作局から番組が取り寄せられており、CFF製作の作品は含まれていないようだった。CFFは1947年から児童映画を製作しているが、私が見落としていなければ、NHK総合テレビではじめて放送されたCFF作品は1962年12月31日(月)11:00~11:55に放送された「空飛ぶテレビ」(1955年作品「The Flying Eye」)だと思われる。Youtubeで見ることができる冒頭5分の番組紹介映像を見た印象では模型飛行機に超小型テレビカメラを取り付けて空撮する話らしく、各国の動画視聴者から「幼い頃に見た」「懐かしい、DVD化してほしい」「1955年型ドローンだ」と数多くコメントを集めていた。日本での声の出演は松島ミノリ(現:松島みのり)、中野慶子、古賀浩二。

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2021年03月03日

宇宙物語・遊星人M 全話レビュー/第4話「火星を越えて」

宇宙物語シリーズその二 遊星人M
第四話「火星を越えて」
1957年1月3日(木)20:00~20:30放送

原作:香山滋、脚色:魚住大二、音楽:宇野誠一郎、広告代理店:博報堂、提供:シルバー携帯ラジオ(白砂電機)
制作:大垣三郎、演出:北代博、フロアマネージャ:忠隈昌、AD:柴田馨、デザイン:坂上建司、美術連絡:青山宏央、美術進行:芦田光長、小道具:高橋俊一、衣装:山我幸江、化粧:小松英子、音響:高橋孝・市川昭和・居作昌果、テクニカルディレクター:岩西浩、カメラ(ロケ):糸田頼一・藤波貞夫・中村昭三、ビデオエンジニア:北大路矗、オーディオエンジニア:林清男・須賀良浩、照明:倉本泰司

出演:
浅香(天文台勤務 理学博士)50歳……江川宇礼雄
園部伊都子(その助手)26歳……西朱美
水島亮吉(新聞記者)33歳……沼田曜一
関なち子(その恋人 インターン医学生)23歳……藤波京子
小野寺善樹(国立細菌学研究所長 医学博士)45歳……河野秋武
今井周一(科学小説家 アマチュア写真家)36歳……原保美
今井カズ子(その妹 サラリーガール)21歳……青島純子
寺尾晃(カズ子の恋人 サラリーマン)27歳……相原巨典
遊星人M(惑星ガロア人)……江見渉
川北利子(看護婦)……山岡久乃
ゴリラ……高木新平
阿古川(青年)……川上連太郎
ナレーター……浦野光

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 円盤内のテレビモニターで兄・周一(原保美)からの連絡を聴き取ろうと必死でダイヤルを回すカズ子(青島純子)だったが、突然モニターから浅香博士(江川宇礼雄)の声が響いてくる。「ガロアの宇宙船に告ぐ……Mは危機に落ちた……Mは危機に落ちた」画像の映らないモニターからは続けてゴリラの唸り声や女性の悲鳴などが聞こえてくる。カズ子がさらにダイヤルを回すと、どうやら水島記者(沼田曜一)たちが遊星人M(江見渉)をピストルで追い詰めているらしき場面が聞こえてきた。やがて聞こえる拳銃の音――ところが続けて聞こえてきたのは関なち子(藤波京子)の怪訝な声。「あらっ、もう居ないわ。どうしたんでしょう」水島「すばしこい奴だ……が、それにしても変だな」川北看護婦(山岡久乃)も言う。「魔法使いみたい……ガロアの人間って魔法も使うのかしら」三人がMを探し回る音はやがてノイズに紛れて聞こえなくなった。カズ子が円盤の底面シャッターから眼下を覗くと、街の灯の中からMがぐんぐん上昇している。驚いて身退りすると、カズ子の覗いていたシャッターからスーッとMがせり上がり、円盤内に入り込むとカズ子には目もくれずに機械の操作を始めた。カズ子は怖れつつも思い切ってまたシャッターから眼下を覗いてみると――街の灯が急速に遠ざかっているではないか。Mはカズ子へ示すようにテレビモニターを点けてみせると、そこには浅香が入院していた国立細菌学研究所附属病院の小高い裏山が映し出された。ゴリラは再び昏倒した浅香を抱えて裏山の松林の中に逃げ込んだのだ。

地上では周一や水島たちがMとゴリラを追って裏山に集まっていた。水島の話によると、クリスマスパーティーでゴリラに引っ掻かれた女の子は今流行っている例の熱病を発症して病院に担ぎ込まれたそうだ。熱病に感染しているゴリラに接触すれば自分も熱病に罹る惧れがある……水島の話を聞いて戦慄する周一たち。水島は浅香博士の助手・伊都子(西朱実)に戻るよう呼びかけ、自分の恋人であるなち子にも伊都子を送っていくよう頼んだ。なち子は一旦は承諾しつつも、それよりあなたに話があると切りだす。周一たちは気を遣って水島となち子の二人だけを残してその場を離れるが、その隙をみてゴリラが忍び寄ってきた。水島はゴリラに気付かず立木のつもりでゴリラにもたれかかっている。
なち子は後を向いたまま水島に、特効薬の実験に失敗した小野寺所長(河野秋武)の実験を引き継ぎ、調合を変えて自ら実験台になるつもりだと打ち明ける。その前に水島から自分への感情を確かめておきたい……というなち子に、水島はお互いの気持ちが同じであると語った。なち子が喜んで水島の方を振り返ると、水島の真後ろにゴリラがいる! 仰天したなち子を見て水島もようやくゴリラの存在に気付いたが、逃げる暇もなくゴリラの一撃を喰らってその場に倒れてしまった。足がすくんで動けないなち子を尻目に、ゴリラは木の陰に隠していた浅香を抱え上げ、周一たちが去った向きとは逆の方向にノッシノッシと去って行った。
我に返ったなち子は悲鳴をあげて助けを呼び、倒れている水島にすがりついた。気が付いた水島はすぐさまゴリラを追いかけようとしたが、なち子から「あなたはもうゴリラから熱病をうつされてしまったのよ。症状は急激に来るわ。高熱・めまい・それから幻覚……」と聞かされるとショックで目を回し、再びひっくり返ってしまう。なち子はオロオロして立ったり座ったりと落ちつかない……ところが倒れた水島が目をキョロリと開いて「おい、変だよ。何でもないらしいよ」とその場で体操を始める。「変ね、どうしてあなただけ……あなたは特別なのかしら」「免疫かな……そんなら僕から血清をとるといいんだがね」「そうね、そして小野寺先生の薬の代わりに飲むといいんだわ、ウィスキーに混ぜて」「ウィスキー? 君、その薬はウィスキーに混ぜて飲むものなのか!」なち子の話を聞いてようやく、自分が小野寺所長の研究室でこっそり飲んだものはただのウィスキーではなく熱病の特効薬だったことを知る水島。「それじゃ、先生がお飲みになったのは……」「僕が新しく注いでおいたから、多分それを」「馬鹿……」だが、水島がピンピンしているということは特効薬の効果が証明されたということでもあるのだ。「すてきな馬鹿ね、あなたは」

宇宙空間に浮かぶ地球からぐんぐん遠ざかっていく円盤――その円盤内で機械を操作し続けているM。距離をおいて床にしゃがみMを睨みつけているカズ子。Mに何を尋ねても返事をしないのでカズ子は苛立っていた。「いいわ、兄さんが今に助けに来てくれるから。兄さんはそう言ってたもの。みんな力を合わせて助けに来てくれるわ」それを聞いたMがはじめて振り返って言う。「力を合わせて助けにくると?」Mがシャッター窓を開いてカズ子に見るよう促すと、窓からは遠ざかっていく地球が見えた。「君の体にショックを与えないよう速度を徐々に増した……今では光と同じ速さで地球から飛び去りつつある」戦慄するカズ子。「いやっいやっ、降ろしてっ……あたしをどこへ連れて行くの」「ガロア」いくらカズ子が泣き喚いて懇願してもMは顔色一つ変えない。「私は一旦ガロアへ帰らねばならぬ。大人しくしていれば害を加えはせぬ。おかげで君は珍しい旅行ができるというものだ。地球人の誰もまだしたことのない宇宙旅行を」絶望してガックリとその場にくずおれるカズ子。
やがて円盤は火星に近づいていく。機械を操作しながらMが放心してうずくまっているカズ子に言う。「しばらく火星の引力を利用して飛ぶ……見るがいい……地球人の誰一人、見たことのないものだ。君も二度とは見られぬ」Mの話を聞いているうちに好奇心が湧いてきたカズ子は、Mに対しては硬い表情を崩さないまま、シャッター窓を覗いてみた。火星の表面が急速に近づくのが見える。「火星の引力圏を抜ける。次は木星へ向かう……木星までは地球の時間であと約30分かかる」無数の星々の間を飛んで行く円盤の姿。
「あなた、なぜ一旦ガロアへ帰るの」「……」「また来るの、地球へ」「必ず来る」「そんならなぜ、一度ガロアへ戻るの」「私の大きな武器の一つが地球人に敗れた……あの便利な病気が」それを聞いて喜ぶカズ子にMが釘を刺す。「喜ぶのはまだ早い……私が一旦ガロアへ帰るのは新しい武器を積み込むためだ。そして再びやって来る……今度こそは失敗せぬ」

地上ではMが地球から一旦退去した事が知られないまま、「空の怪異対策委員会」で浅香がサーチライトを使った円盤探索を訴えていた。最初は笑って聞き流していた大鳥博士(清水一郎)も、全快した浅香と小野寺の両博士の決意表明を聞いて「まあやってみるのもいいでしょう。円盤が見つからなかったところで別にどうという事はないのですから」と鷹揚な態度を示した。「ただし、円盤が存在すると称して世人に衝動を与えた責任は、博士、この実験が失敗したら……」浅香「もちろん取ります」

その夜、水島記者から取材を求められて喫茶店に来た周一が、カズ子の行方について寺尾(相原巨典)と話をしていた。カズ子を人質に取って周一の口を塞いでいても、浅香博士が全快した今となっては円盤が目に見えない秘密は遅かれ早かれ明かされる。だからもうMにはカズ子を捕らえておく必要はない。とすると、帰してよこすか、あるいは――
そこへ水島が遅れてやって来た。早速、円盤が見えなくなる理論を尋ねる水島に周一は笑いながら事もなく話しはじめる。「つまり、保護色です」寺尾の胸のハンカチとマフラーが同色同柄なのを見て、それらを重ねてみせる周一。なるほどパッと見だと区別がつかない。「これと同じ理屈ですよ。円盤の表面が全てそのままテレビスクリーンだとすると……」周一はコーヒー皿を持ち上げながら説明していく。「上の風景がそっくり下の面に映る。昼なら雲と青空を、夜なら星空を……下から見て区別がつかないほど精巧に」寺尾が話に乗っかって言う。「じゃ、風船を上げればぶつかるから位置がわかる」周一は笑って頷き「そして夜ならば……」と言葉を継ぐと――「あっ、やった!」ふと窓の外を見た寺尾が素っ頓狂な声をあげ、水島たちも窓の外を見ると、夜の街に煌々とサーチライトの灯が伸びている。「サーチライトで照らせば、円盤に映っている星空の部分だけ特に光って見えるはずです」喫茶店の一隅から窓の外を見守る三人……そこにサーチライトに気付いた客が一人また一人と集まって窓の外の様子を眺めはじめるのだった。

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【解説】
さて、前話から年末年始を挟んでおり視聴者にストーリーを思い出させるためか、少々長めの「これまでの粗筋」が番組冒頭に設けられている。――が、本作は基本的に生放送ドラマ。前話のフィルムを焼き増しして繋ぐという事など出来はしない。なんと“これまでの粗筋”も生放送での実演である。浅香博士のバストショットをテロップボードで映すカットが1つある以外は、2台のテレビカメラを切り換えながら、俳優が異なる背景のセットを行き来して浦野光のナレーションにあわせた演技をした。

裏山での水島となち子の会話では、二人が話している間中、ゴリラが水島を襲おうとしては知らず知らずにすり抜けられ、また水島も木の枝と思い込んでゴリラの腕に寄り掛かるといったコント仕立て(今でいうところの「志村ー、後ろー!」)になっているのが微笑ましい。
ゴリラは水島を殴ったあと浅香博士を抱えてどこかへ姿を消してしまったはずだが、ラスト近くの「空の怪異対策委員会」の席上では浅香博士は全快して熱弁を揮っている。山狩りで発見されたゴリラが浅香を置いて逃げ出したのかもしれないが、言及する描写がないので唐突さが拭えない。なおネタバレになるがゴリラは次回、Mによる支配力が失われており熱病で半死半生になっているところを発見される。

Mはガロアへ向かう際、火星へ接近することでその引力を利用して飛び(スイングバイ)、続いて木星に舵を向けている。ところが放送当時の火星の方向は木星と正反対の方向にあり、見たところスイングバイするメリットがあまりない位置関係のように見受けられる。
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(※国立天文台・4次元デジタル宇宙プロジェクトが公開しているマルチ天文ソフトウェア「Mitaka」で再現した放送当日の位置関係)
それでもMがあえて円盤を火星の傍まで接近させた理由は、接近中のMの言動から考えるとやはり観光目的でカズ子にサービスしたかったからという気がしてならない。

今回の特撮シーンはカット繋ぎ用の「宇宙空間に浮かぶ地球から円盤が遠ざかっていく様子」と「無数の星々の間を円盤が飛行する様子」がミニチュアを用いて16mmフィルムで撮影されており、生放送中にインサートされた。こういうカット繋ぎシーンの間に出演俳優が大慌てでセットを移動したり衣装を着替えたり、スタッフが背景セットを組み替えるのである。
また粗筋冒頭の星空、円盤のモニターに映し出される裏山にはスライドが用いられている。裏山のスライドはミニチュアを作って撮影したものを種板に使っており、台本では「この山の裾に夜の病院をも作れればなお結構。なくてもよし」という記述が見られる。

この「宇宙物語シリーズ」では本番終了後にデスク連が次回のためのブレーンストーミングを開き、この段階で「劇中でやりたいこと」と「それが技術的に実現できるか否か」の擦りあわせが行なわれたという。今日でいう美術監督の坂上建司、特技監督の岩田浩らが「こうすれば映像化できると思う」と判断したものが最終的に台本上に残った描写であるが、中には「ここまでやれればベターだけど、スケジュール厳しくて間に合わなさそうなら無くてもいいよ」と鷹揚に判断されたカットなどもあるだろう。上記の「山裾のミニチュアに夜の病院があると尚よし」もあらかじめ柔軟に対応できる範囲を示すことで多忙な現場に配慮した当時の知恵と工夫の痕跡なのかもしれない。
posted by 猫山れーめ at 00:45| Comment(0) | 遊星人M(TV版) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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