2021年03月28日

縮小人間ハンター(World of Giants) 放送リスト

1950年代にSFテレビドラマ「空想科学劇場(文春S・F劇場)」「宇宙探検(宇宙パイロット/マッコーレー隊長/宇宙にいどむマッコーレー)」を製作した米ZIVプロダクションは、もうひとつSFテレビドラマ史において特筆すべき作品「World of Giants」を世に送り出している。番組のオープニングコールから「WOG(ウォグ)」と呼ばれることもあるこの作品の邦題は「縮小人間ハンター」という。思いがけない事故で体が6インチの大きさに縮小してしまった主人公メル・ハンターがその隠密性を活かし政府の防諜エージェントとして活躍するという筋書きだ。

特筆すべき――というのは、この「縮小人間ハンター」が“思いがけない事故で特異体質になった主人公が、その能力を活かしてヒーローとなる”という設定に関係している。今でこそありふれたプロットではあるが、テレビドラマ黎明期においては1940年発表のアメコミ作品「ザ・フラッシュ」が該当するくらいで、それ以前のヒーローといえば使命のために自らを鍛え抜いたマッチョ・ヒーローか、スーパーマンのような生まれつきのヒーローだけがSFドラマの主人公となっていた。一方、何らかの事故で突然変身したり超能力を身につけたごく普通の人間は、その力を犯罪や破壊に使うようになってしまうものとして描かれることが多かった。「ジキル博士とハイド氏」「透明人間」といった古典はもちろんの事、1955年「原子人間(The Quatermass Xperiment)」、1957年「戦慄!プルトニウム人間(The Amazing Colossal Man)」、1959年「4Dマン(4D MAN)」と当時の怪奇SF映画では枚挙にいとまがない。
ところが従来悪の存在であった透明人間が1958年・英ITP/OF製作のテレビドラマ「透明人間(H.G. Wells' Invisible Man)」では政府機関のエージェント――つまり“正義の味方”として描かれ、また1957年の映画「縮みゆく人間(The Incredible Shrinking Man)」では事故の被害者にすぎなかった縮小人間も1959年の本作「縮小人間ハンター」で透明人間同様に政府機関のエージェントとなって活躍することになった。悪人や怪物とみなされていた特異体質人間が「透明人間」「縮小人間ハンター」では一転して正義の味方になるという、「デビルマン」的パラダイムシフトが起きたのである(※善玉の透明人間という点では1954年の東宝映画「透明人間」の方が早い)。以後1961年「ファンタスティック・フォー」1962年「スパイダーマン」1968年「電撃スパイ作戦」1973年「600万ドルの男」1976年「ジェミニマン(TV)」etc.……と“思わぬ事故で超能力を得たヒーロー”というジャンルが連綿と続いていくのはご存知の通り。

ところがこの「縮小人間ハンター」、何かどうウケなかったのかアメリカ本国では13話しか作られなかった。米Wikipediaには「Not a success(成功しなかった)」としか紹介されておらず、原因に言及できるだけの情報が記されていない。(※"American Science Fiction Television Series of the 1950's: Episode Guides and Casts and Credits for Twenty Shows"という本にWOGの記事が若干あるようなので、翻訳して何か有益な情報が見つかれば後日追記する。)

現在、米本国でもDVDは発売されていないようだが、Youtubeに第1話「Special Agent」と第13話(最終回)「Off Beat」がアップロードされており、ある程度の内容を窺い知ることができる。第1話「Special Agent」は第一話であるにも関わらず縮小人間の誕生編ではなく、既にエージェントとなったメル・ハンターが任務を受けるところから始まるようだ。メルが縮小人間となった経緯は冒頭のナレーションで語られるだけらしい。現在の目で見ると、メルが鞄で運ばれるところからは1969年の英センチュリー21作品「ロンドン指令X(The Secret Service)」が、猫に襲われる場面からは1968年米アーウィン・アレン・プロ作品「巨人の惑星(Land of the Giants)」が、巨大な電話機の受話器を外して必死でダイヤルを回すシーンからは「ウルトラQ」の「1/8計画」が想起させられる。1957年の映画「縮みゆく人間(The Incredible Shrinking Man)」はもちろんの事、シーンによっては1940年の映画「Dr. Cyclops」を連想したりするかもしれない。巨大な人間と小さな人間がひとつの画面の中で動き回るモノクロ特撮の絵面は見ているだけでも楽しいものだ。
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日本では日本教育テレビ(NET、現:テレビ朝日)で1960年9月17日から毎週土曜19:00~19:30に放送されたが、10月15日の第5話をもって何の終了表記もなく消えてしまっている。日本で放送された際のサブタイトルと、そこから推測されるあらすじを持つWOGの各エピソードとを突合してみると、日本で放送した5本はWOGの第6話および第9~12話に該当するようだ。おそらく日本教育テレビでは最初から全話を放送するつもりはなく、この枠でレギュラー放送していたZIV製作の人気海外ドラマ「バット・マスターソン(Bat Masterson)」に1ヵ月の穴が開いたため、繋ぎとして同じZIV作品の「縮小人間ハンター」を買い付けたのだろう。「空想科学劇場」や「宇宙探検」のように他局で全話放送されたかについては今のところ調査できていない。声の出演は鷲見光保、大宮悌二、翠潤子ほか。

【1960年】19:00 枠
1 09/17 秘密薬品の行方 ……WOG#06「Chemical Story」
2 09/24 落下点へ急げ ……WOG#09「Rainbow of Fire」
3 10/01 人体密輸船 ……WOG#10「The Smugglers」
4 10/08 ニセ札 ……WOG#11「Unexpected Murder」
5 10/15 迫り来る悪魔 ……WOG#12「Panic in 3B」

【追記】
2021/06/04 事故が原因で特異体質化したヒーローのさきがけを「グリーンランタン」としていたが「ザ・フラッシュ」に改めた。発表年はいずれも1940年。

posted by 猫山れーめ at 02:48
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