2021年03月05日

イギリスCFF製作SFテレビ映画「宇宙人カドイン」「金星から来たミーバ」「宇宙から来たボール」

子供のころ、夕方にNHKで不思議な海外ドラマが放送されているのを偶然見たことがある。子供向けののどかな宇宙人モノなのだが、宇宙人の頭から生えた肉質のネギ坊主が食事中のお母さんの方に向かって動くシーンや、底なし沼のようになった芝生に人間が顔まで埋まってしまうシーンがトラウマのように焼き付いて十数年経っても脳裏から消えなかった。大学生になって併設図書館の書庫に入り浸るようになると新聞の縮刷版を手繰る楽しさを覚え、ふとあの番組はいったい何だったのか探してみようと思いついた。タイトルどころか何年何月のことかもわからないので、自分が物心ついたころにあたる数年分のテレビ欄の全ページを片っ端から探してまわった結果ついに「これに違いない!」という番組を特定することができた。それはイギリスの児童劇映画財団「Children's Film Foundation」(略称CFF)が1972年に製作・放映したSFテレビ映画「Kadoyng」で、日本ではNHK総合テレビが「宇宙人カドイン」という邦題で1973年12月31日(月)――つまり大晦日の18:00~18:50に放送していたものだった。

大まかなストーリーを掻い摘んで紹介しよう。
イギリスの小さな村で農業を営むバルフォー家の3人の子供たち、長男のビリー・長女のルーシー・末っ子のバーニーは林の入口に不時着している巨大なタマゴ型の宇宙船を発見、中から出てきたちょっとトボケたヒッピー風の宇宙人・カドインと友達になる。惑星ストイカルの住人であるカドインは見た目は地球人にそっくりだが、頭のてっぺんからネギ坊主のような触角が生えていて、瞬間移動や人間を自由に操る超能力を使うことができた。ルーシーが持ってきたシルクハットで触角を隠したカドインは、地球人のふりをしてしばらくバルフォー家に住むことになった。
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そのころ彼らの村にはひとつの問題が立ち上っていた。地元の政治家が不動産業者と組み、広場に高速道路を通すというのだ。バルフォー一家は高速道路に反対する村民の代表で、推進派との公開討論会を控えている。ちなみに政治家の息子とその取り巻きはふだんからビリーたちをいじめているイヤなやつ。バルフォー夫妻に協力することになったカドインは、公開討論会の傍聴席から推進派にこっそり超能力をかけて発言をめちゃくちゃな言葉に変えて妨害活動を行なったが、むなしくも高速道路の建設は決定してしまった。
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こうなったら最後の手段、植物を一晩で巨大に育てるコンキーという薬を広場に撒いて巨木だらけにし、工事を邪魔するしかない。起工式を明日に控え宇宙船の自立型コンピューターに相談して薬品の調合方法を調べるカドインだったが、猛烈な睡魔が襲ってきて頭がうまく回らない。困ったバルフォー一家はカドインの補佐となって薬品作りを行ない、夜が明けないうちに一家総出で広場に薬品を撒いて回った。
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翌朝、広場では政治家やその息子、不動産業者たちが集まってセレモニーが始まった。固唾をのんで見守るバルフォー一家だったが、テープカットが始まっても何も生えてくる様子はない――と、そのとき政治家たちの足元の芝生がグズグズと柔らかくうねり始めた。まるで底なし沼のようになった芝生は、その場にいた政治家や息子や不動産業者を地面の中に飲みこんでいくではないか。驚いたカドインがルーシーにどうやって薬を作ったか聞きだし、さらに驚いて叫んだ。「そりゃコンキーじゃない、スロンキーの作り方だ! スロンキーは何でもグニャグニャにしてしまう薬なんだ……」
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後日、高速道路計画は撤回され、カドインは広場を元に戻すために改めてコンキーを作り直した。ところが広場の入り口に入るとき、バーニーが気を利かせて有刺鉄線を持ち上げようとしてくれたのにカドインはちゃっかり瞬間移動で広場内に入ってしまう。ムッときたバーニーがカドインの尻を叩くと、びっくりしたカドインはコンキーをその場にこぼしてしまった。コンキーを被った草はたちまち見上げるような巨木に早変わり。たまたま自転車で巡回中だったお巡りさんは目の前で伸びていく巨木に仰天、転倒して腰を抜かしてしまう。それを見て気まずそうにそそくさと帰っていくカドインとバーニーだった……

原作・脚本および主人公カドインを演じたのはレオ・マグワイア(Leo Maguire、声:富山敬)。三兄弟の長男ビリーをアドリアン・ホール(Adrian Hall、声:沢村正一)、長女ルーシーをテレサ・コドリング(Teresa Codling、声:関口奈緒美)、末っ子のバーニーをデビッド・ウィリアムス(David Williams、声:内海敏彦)が演じた。監督:イアン・シャンド。
ちなみにカドインが着ている宇宙服は「謎の円盤UFO」で宇宙人が着用している宇宙服のうちの1つを流用していることでも知られている。

今回DVDを見返しながら記憶の細部を補完してあらすじを書いてみたが、50年ちかく前に一度見たときの記憶とだいたい合っていたのには驚いた。それほど子供心にも記憶に残るような作品だったということだろう。本作の映像ソフト化はビデオテープ草創期にβとVHSで発売された事はあるが、絶版になってからはソフト化の機会に恵まれず再見することができなかった。しかしCFF作品を管理している英国映画協会「British Film Institute」(略称BFI)は近年になって協会が保管する映像作品の再評価に積極的となり、「Children's Film Foundation Collection」と銘打って過去の作品を次々とリリースするようになった。そして2014年、CFFの代表的なSF作品をカップリングしたDVDシリーズ第6弾「OUTER SPACE」に「宇宙人カドイン」が晴れて初DVD収録されるに至ったのである。よって今では手軽に鑑賞することができるのだが――イギリス版DVDなので映像規格がPALであることや、字幕が含まれていないなど、日本のファンが視聴するにはまだまだハードルが高い面がある。なんとかNHKで当時の日本語吹き替え版を再放送してもらえないものだろうかと切に願っている次第。上記あらすじも私が日本語吹き替え版で視聴したのが50年近く前なので、ストーリーはともかく台詞まわしはもうほとんど記憶の彼方になっており、せいぜいカドインの頭に生えている触角のことをバルフォー一家が「タマネギ」と呼んでいた事くらいしか覚えていない状態だ。従って聞き取りミスや思い違いが含まれている可能性があるので気の付いた方はコメント欄から御指摘をお願いしたい。
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さて2014年発売のDVD「OUTER SPACE」には「宇宙人カドイン」の他にもCFFが製作した子供向けSFテレビドラマが2本収録されているが、こちらも「宇宙人カドイン」と同様にNHK総合テレビで日本語吹き替え版が放送されているので放送履歴を簡単に紹介しよう。

ひとつは1956年作品「Supersonic Saucer」。これは劇映画「E.T.」を先取りしたような作品で、空飛ぶ円盤に変身できる宇宙人の子供ミーバを操り人形を使って演じ、生身の子役俳優たちと絡ませるという独創的な方法で撮られた。例えるならアメリカのSFコメディ「アルフ」のような作品だが、ミーバの外見が何となくベールを被った中東の女性っぽい出で立ちなので(ただしミーバは男の子らしい)、私は「透明ドリちゃん」の主人公青山ミドリと水の精との絡みを連想した。
日本ではイギリス放映から10年後の1966年8月15日(月)、13:25~14:15に「金星から来たミーバ」のタイトルで放送されている。ミーバと交流を結び誘拐犯から彼を守る少女スマックをマルシア・マノルシュ(Marcia Manolescue、声:陳嘉子)が、同じくグレタをギリアン・ハリソン(Gillian Harrison、声:松尾佳子)が、堅物の少年ロドニーをフェラ・エドモンズ(Fella Edmonds、声:野中繁夫)が演じた。原作:フランク・ウェルズ、脚色:ダラス・バウアー、監督:S・G・ファーガソン。

もうひとつは1977年作品「The Glitterball」、ボールのような宇宙生物の活躍をコマ撮りアニメーションで活き活きと描いた。日本のマンガや特撮でいうと「星雲仮面マシンマン」のボールボーイのような感じか、手足がない点でいえば益子かつみの「怪球Xあらわる!!」のほうが近いが「The Glitterball」はそこから更に目もアンテナもないただの銀のボールに見える。
日本ではこれまたイギリスから遅れること4年後の1981年4月29日(水)、17:05~17:55に「宇宙から来たボール」の邦題で放送されている。主人公マックス・フィールディング役をベン・バックトン(Ben Buckton、声:小山渚)、ピート役をキース・ジェイン(Keith Jayne、声:大見川高行)、ジョージ役をロン・ペンバー(Ron Pember、声:大泉滉)が演じている。原作・脚本:ハーレイ・コークリス、ハワード・トンプソン、脚色:ハワード・トンプソン、マイケル・エイブラムス、監督:ハーレイ・コークリス。

DVD「Children's Film Foundation Collection vol.6 OUTER SPACE」ではこれら3作品が現存する35mmインターポジフィルムを元に(音声は「宇宙人カドイン」のみ光学トラック、他の2本はシネテープを使用)デジタルリマスタリング処理を経て収録されており、ハーレー・コークリス監督、BFIプロデューサーのアレックス・デビッドソン、BFI映像キュレーターのヴィック・プラット、ウェールズ大学映像文化上級講師のロバート・シャイルらによる詳細な解説書が付属している。

子供のための映画を専門に数多く製作したCFFには他にも1962年のテレビシリーズ「Masters of Venus」などSFドラマがいくつか存在するようだが日本で放送されるケースはあまりなかったようだ。少年ドラマシリーズにCFF作品が含まれていないだろうかとアスキー出版局刊「NHK少年ドラマシリーズのすべて」巻末の放映番組リストを眺めてみたが、米英仏豪いくつもの国の数多くの制作局から番組が取り寄せられており、CFF製作の作品は含まれていないようだった。CFFは1947年から児童映画を製作しているが、私が見落としていなければ、NHK総合テレビではじめて放送されたCFF作品は1962年12月31日(月)11:00~11:55に放送された「空飛ぶテレビ」(1955年作品「The Flying Eye」)だと思われる。Youtubeで見ることができる冒頭5分の番組紹介映像を見た印象では模型飛行機に超小型テレビカメラを取り付けて空撮する話らしく、各国の動画視聴者から「幼い頃に見た」「懐かしい、DVD化してほしい」「1955年型ドローンだ」と数多くコメントを集めていた。日本での声の出演は松島ミノリ(現:松島みのり)、中野慶子、古賀浩二。

posted by 猫山れーめ at 00:03
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