2021年03月06日

「宇宙パトロール・オリオン」がリメイクされる?

放送開始から55年、ここにきて驚くべきニュースを見かけたので紹介したい。
ドイツのWEBニュースサイト「ハイゼ・オンライン」の記事によると、当ブログでも全話レビューをもって紹介した60年代特撮テレビドラマ「宇宙パトロール~宇宙船オリオン号の素晴らしき冒険~(Raumpatrouille – Die phantastischen Abenteuer des Raumschiffes Orion)」がババリア・フィルムによってリメイクされるかもしれないというのだ。

https://www.heise.de/news/Raumpatrouille-Orion-Ruecksturz-ins-Fernsehen-5072795.html
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とはいえ記事によれば、記者が掴んだこの企画はまだごく初期の段階であり、実現の可能性も含めて何も決定していないと報じている。あとの記事は1966年放送「宇宙パトロール」の簡単な説明と、ババリア・フィクションが2018年に80年代のドラマをリメイクしたほかいくつかのドラマの製作実績があることを紹介するのみである。

2003年にはいくつかの新撮を加えて再編集された劇場映画「宇宙パトロールオリオン・劇場に帰還す(Raumpatrouille Orion – Rücksturz ins Kino)」が公開されたが、いまひとつ成功を得られなかったという。今回のリブート企画がうまく進めばオリジナルシリーズも再び注目されることになるだろうし、デジタルリマスターBlu-ray BOXの発売だって夢ではないかもしれない。ひょっとすると、まだ日本で一度も放送されていないオリジナルシリーズ全7話に日本語吹き替えが付いてスカパーで放送されるような日が来るかもしれないのだ。

そんなわけで、主人公マクレーン大佐に憧れる極東の島国の1ファンとしてリブート企画を心から応援している次第である。

2020年02月04日

TV 宇宙パトロール・オリオン 全話レビュー/第7話(最終回)「侵略」

第七話「侵略(Invasion)」1966年12月10日(土)20:15~21:15放送 視聴率39%
監督:Michael Braun、脚本:Rolf Honold, W. G. Larsen (※5人の共同ペンネーム)

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ある日ワムスラーは自分のオフィスにマクレーンを呼びつけて、干されてパトロール任務に甘んじているべき立場のマクレーンが結局はいつもパトロール活動の枠に収まらない大事件に関わっていることに苦言を呈していた。これ以上何もするなというのなら自分はもう辞めるしかないと口を尖らせるマクレーンにワムスラーは、あと半年我慢すれば謹慎が解けるんだ、そんな大立ち回りは宇宙軍に復帰してから好きなようにすればいいじゃないか、と終始苦り顔。
そこへ副官のスプリングブラウナー伝令将校が飛び込んできて、シークレットサービスの巡洋艦タウから遭難信号が入ったとワムスラーに報告してきた。通信音声を執務室のスピーカーに切り替えると、タウ号のリンドリー指揮官と冥王星軌道の宇宙ステーション0/3との交信が響いて来た。タウ号は太陽嵐に巻き込まれてコントロール不能に陥っているという。それを耳にしたワムスラーが驚く。「なんてことだ!タウ号に誰が乗っているか知ってるか?ヴィラ大佐と彼の部下たちだぞ」
タウ号の船内ではリンドリーが必死で宇宙ステーションに呼びかけていた。「状況は絶望的!こんなに強力な太陽嵐は見たことがない。エネルギー供給が全て止まってしまい脱出できない」横からヴィラ大佐がリンドリーに言う。「これは太陽嵐じゃないぞ、リンドリー。重力波に揺さぶられてるんだ!」シャトルでの総員脱出を決断したリンドリーだったが、ヴィラはこれが重力波であることを報告しないうちは脱出できない、ことによるとこれはエイリアンの攻撃かもしれないといって拒否する。「あなたは神経質だ」と言うリンドリーを尻目に、ヴィラは光波通信で宇宙軍と宇宙パトロールを呼び出した。「タウ号は反重力場に閉じ込められている。これは通常の太陽嵐ではなく振動する重力場だ。少し前にマクレーンが陥った状況に似ている。地球外生命体の可能性がある。シャトルへの移乗を余儀なくされた。エネルギーも枯渇している。これから小惑星ゴードンの宇宙基地にシャトルで向かう。可能性は最小限だが……」これを最後にタウ号からの通信は切れてしまった。
呆然と聴いていたスプリングブラウナーにワムスラーは「なぜまだここにいる?惑星ゴードンの基地に連絡するんだ!何が起こっているのか知る必要がある」と命じる。「ゴードン基地はまだ気づいていません」「ナンセンス!ゴードン基地は重力場のハリケーンに気付いているはずだ。もう一度連絡してみろ!それから宇宙軍につなげ!緊急会議と調査を求める」スプリングブラウナーがすっ飛んで行くとマクレーンがワムスラーに尋ねた。「将軍、ヴィラ大佐はそこで何をしていたんですか?シークレットサービスの責任者はデスクにふんぞり返ってるのが任務でしょう」「時と場合によるんだ」「では彼らは何を?」「わしも知らん……ヴィラは絶対の確信を持った時にしか手の内を見せんのだ。だから私は今から最高指揮官のところへ行ってくる。君は君の任務を遂行したまえ……ちょっと待った。ヴィラはさっき君のことを言ってなかったか?」「はい、私もMZ4基地(※第一話参照)で振動重力場に出くわしましたので」「じゃあ出発は延期だ。委員会は君の専門知識を必要とするかもしれん」

所変わってスターライトカジノ。ここでは今日もまた数人の男女が固まって風変わりな社交ダンスに興じている。そこへマクレーンがタマラと話しながら歩いてきた。「……でもあなたはシークレットサービスが嫌いなんじゃなかった?」「例外をひとり除いてね」そこは軽く受け流すタマラ。「ヴィラは人間としても上司としても素晴らしい人よ。まだ信じられないわ」「ああ、彼は大抵の人よりはずっと賢い。いちいち名前は挙げないがね。みんなが戦争したがってる時、私がクロマへ飛ぶことを彼が認めてくれたのには感謝してもしきれないよ。冷たいインテリのように見えても彼こそ本当の理想主義者であり宇宙全体の平和主義者さ。彼の後任がその反対にならないことを願うね」「……私に探りを入れたいのなら諦めることね、マクレーン。あれは誰にも知らされていないほどの秘密なの」そこへ宇宙パトロールの女性伝令が任務を知らせにやってきた。命令書を一読して驚くマクレーン。「ええと、貴官はこれより……おい、ヴィラは生きてるぞ」「えっ?」「うん、彼とその部下たちはシャトルでゴードンに着いたらしい。……犠牲になったのはリンドリー艦長と乗組員だけだそうだ」「しかし、どうやって……」嬉しいながらも困惑を隠せないタマラ。「ヴィラはゼファー号に乗っている。3日後にここへ着くそうだ」命令書を最後まで読むと、今度はマクレーンが困惑した。「その宇宙軍の会議に私が召集されてる」
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後日、宇宙軍の会議にて。アーサー卿がヴィラの帰還をねぎらっている。ヴィラがすまし顔で「あの太陽嵐の中をどうやってゴードン基地に辿りついたものか、自分でも説明がつかないよ」と答えるのを聞き、ハッとして聞き返すワムスラー。その横にはマクレーンも同席している。「……太陽嵐と言ったか?」「ああ、太陽嵐だ」これにはアーサー卿も引っかかったらしく「しかし、タウ号からの最後の通信で君は何と言ったかな……もう一度頼む」とワムスラーに振る。「重力場の振動です。あなたはそれが地球外生命体の仕業かもしれないと言っていた」「ええ、覚えています。否定はしません。しかし正直なところ、私は言葉がコントロールできなくなっていたのです」すぐにヴィラの横に座っていた精神科医のハイネ博士が口を挟む。「ヴィラ大佐が重度のショックを受けていたことに疑う余地はありません」アーサー卿はなだめるように言う。「質問責めになるのは許してほしい。だが君のタウ号からの最後のメッセージを聞いて私たちはとても心配したんだ」ヴィラは顔色を変えないでにこやかに話し始めた。「みなさん、通信ではあのように言いましたが、あれは間違いなく地球外生命体のしわざなどではありません。大災害が私に見せた幻だったというわけです。その点をお詫びします」ワムスラーはまだ納得のいかない顔をしている。「謝る必要はありません。誰もがマクレーンのようにクールでいられるわけじゃないですからね」アーサー卿たち参謀がクククと笑うのを割って入るようにハイネ博士が再び発言する。「ヴィラ大佐のような多才な脳は、簡単に言えば、興奮した瞬間に幻を見たり、それが強迫観念にまで発展するのかもしれません」マクレーンがハイネ博士に尋ねる。「つまりあなたは私の脳は原始的だと考えているわけですね?」「いえ、そうではありません」立ち上って興奮ぎみに話すハイネ博士をヴィラ大佐が制するが、構わずマクレーンが続ける。「質問していいですか?私の意見としては、最初の説明には何の問題もありません。放電や、推進力がブロックされたこと。私もMZ4で遭遇しました。そしてもし私が閉じ込めたなら……!」「それで、君は何を尋ねたいのかね?」「なぜそれが太陽嵐だけだと確信したのですか?」「ゴードン基地では通常の太陽嵐のみ記録していることは知っているね」「その通常の太陽嵐は人工重力場の結果である可能性があります」「リンドリー指揮官はただの太陽嵐だと言っていた」「リンドリー指揮官と彼の乗組員は行方不明です。証拠がない」「私がリンドリー指揮官の言葉を誤って伝えているとでも言いたいのかね?」「私はただ……」「マクレーン!もう十分だ」ワムスラーに制されたマクレーンは今度はワムスラーに「矛盾を指摘できないのなら、私はなぜここにいるんですか!?」と食ってかかる。それを今度はアーサー卿が「これらの食い違いは、ヴィラ大佐がこうむった精神的なショックのせいだということで説明できるよ」と制し、ヴィラ大佐の機嫌をとるように「驚いたね、もし私が君の立場だったら、きっと異星人の怪物に取り乱していたことだろうよ」と話しかけた。マクレーンはヴィラ大佐へ別の質問をぶつけてみる。「タウ号に乗った目的について尋ねてもいいですか?」「まもなく機密報告書で宇宙軍にお知らせします」「ひどい秘密主義だ」「宇宙船の指揮官に秘密情報を明かす義務はないのでね」ヴィラ大佐が横のハイネ博士に目で合図をするとハイネ博士は心得た体で「ヴィラ大佐にもう質問しないでください」とその場の全員に伝えた。マクレーンが「しかし、何かがおかしい」と異議を唱える。アーサー卿がたしなめるのを重ねて「ミッションの目的からつながりを探すのは間違っていますか?」と言うマクレーンにヴィラ大佐は「私と私の側近以外、誰も目的を知らないのです。特にフロッグスはね……超能力でもない限り」そこでアーサー卿は議論の終了を宣言した。これ以上の質問はなし、マクレーンも例外じゃないぞと釘を刺すアーサー卿。散会するとマクレーンはワムスラーに調査委員会を動かすよう進言するが拒否され、ワムスラーから明日また通常のパトロール任務に就くよう指示される。マクレーンはパトロールの代わりに惑星ゴードンへ行って何が起きているか見てきたいとワムスラーに申し出るが、これも一蹴されてしまった。


翌日、パトロール出発50分前のマクレーンたちオリオン号メンバーがスターライト・カジノで待機していると、タマラがやってきて「ヴィラの命令で今日のミッションはキャンセルになりました。代わりにシークレットサービスがこの任務を引き継ぎます」と伝えた。マリオたちは思わぬ臨時休暇に気分を良くして、シークレットサービスの気が変わらぬうちにと遊びに行ってしまう。マリオたちを見送ったマクレーンはタマラからシークレットサービスの出発日程を聞き出そうとする。オリオン号は今回、ベスタ管区のレーダー衛星をチェックする任務を受けていたが、これは惑星ゴードンのそばにある。きっと何かがそこで起こっており、ヴィラはそれを秘密にしているのだと訴えるマクレーンだが、タマラは疑い過ぎだといって取り合わない。「君も少しは疑いを抱いていてほしいんだがね」「じゃあ、ヴィラはどうしてそれを隠す必要があるの?何を隠してるというの?」そこへちょうど、マクレーンの同僚でマリガン大佐が泥酔して割り込んで来る。マクレーンからタマラを紹介されたマリガンは、タマラがシークレットサービスだと知ると悪態をついた。「きみ、失礼だぞ。彼女が何か間違ったことをしたか?」「いいや、だが彼女の仲間に文句があるのさ。俺が理由もなく酔っ払ってると思うか? 俺は10年間ずっと発進基地での監視任務に努めてきた。苦労の甲斐あって3年前そこの主任になれたんだ」「それで?」「クビになったよ、何の理由もなくね!」ふらふらと立ち去ろうとするマリガンにマクレーンが問いかける。「いつ?誰がそんなことを?」「2時間前に言い渡されたよ。シークレットサービスのセキュリティ部門からだ。シークレットサービスが直ちに基地の監視を引き継ぐんだと……俺がどれほど怒っているか口じゃ言い表せないね」マリガンが行ってしまうと、マクレーンはあらためてタマラにヴィラの異変を訴えた。「まだ僕が疑いすぎだと思うかい?ゴードン基地から帰ってきてから、ヴィラは何かがおかしい」「怪談はもう結構よ」「これは怪談じゃない、事実だ。彼はゴードン基地で起こった事を軽視し、宇宙監視を引き継いで艦隊基地を掌握してる。彼の次のステップは何だろう」「何か計画に基づいて行動してるみたいね……何だと思う?」「馬鹿げた話じゃないとしたら……クーデターの準備だね」
歩きながらタマラと話すマクレーン。「彼を完全に寝返らせるような何かがゴードン基地で起きたに違いない。彼は3年前にマリガンの仕事ぶりを高く評価していたにも関わらず、突然地上管制の仕事を取り上げてしまった。僕自身、ワムスラーのオフィスでそれを聞いていたんだ」話を遮るようにタマラが口を挟む。「今夜の話はそれだけ?」「……申し訳ない。何か飲むかい?」「結構です」熱弁のあまり本題からだいぶ逸れてしまったと気づいたマクレーンは、あらためてヴィラたちの航行日程を尋ねるが、タマラは知らないと答える。「じゃ、その時君は何をしてるんだい?新しい仕事でも?」「何も。……これはイエスという意味になるわね」怪訝な面持ちのマクレーンにタマラが続けて言う。「私は、マクレーン指揮官の義務違反、サービス規則違反、軍事的違法行為を防ぐためにオリオン号に派遣されてきました」「ベビーシッターとしてね……しかし、素晴らしいベビーシッターさ」「厳しすぎたかしら?」「……手伝ってもらえないかい?明日にでもヴィラと話がしたいんだ」「……どうして?」「僕がゴードン基地へ行けるよう特別許可を頼んでみるだけさ。彼が認めてくれれば、僕の考えは間違っていたことになる。しかし、そうでなければ……」「それは何の証明になるの?」「……タマラ、僕はいままで一度も主張したことはなかったけど、勘が働くんだ。今はそれ以上言えないよ」「わかったわ、それであなたが今晩ぐっすり寝られるのなら。明日、時間があるかどうかヴィラに聞いてみます」「ありがとう。それから、シークレットサービスの本部にいるとき、お願いがあるんだけど」「何かしら?」「探してほしいんだ。たぶんヴィラが惑星ゴードンの近くで任務を遂行していた理由がわかる……文書があるはずなんだ」タマラが目を丸くして聞き返す。「クリフ、気でも狂ったの?あなたが何を頼んでるのかわかってる?」真顔で頷くマクレーン。

マクレーンが会いたがっているという話をタマラから聞いたヴィラは、笑って承諾しながらもその真意を訝しんでいた。「無論OKだとも。いつだってマクレーンのために割く時間はあるさ。彼は何がしたいのかな?」「彼に個人的に話をさせてあげましょう。きっと重要な事だと思います」「重要な話でなくちゃ困るね。マクレーンはとても利口なんだろう?」「はぁ」「納得していないようだね。君はいつも彼を尊敬していると思っていたが」「……個人的な感情はよしましょう」「君は、たとえ火の中水の中の間柄だと思っていたがね」「……」「そのへんにしておこうか。今のところは。……それでは彼と話すことにしよう。他には?」「ありがとうございます、大佐。それで全部です」退出するタマラ。それを黙って見送るヴィラの目からは笑みが消えている。
ヴィラのオフィスを出たタマラは文書保管室へ向かい、壁に据え付けられたコンピューターを操作し始めた。そこへ不意に「面白いじゃないか、中尉」と声をかけられてタマラは飛び上がる。振り向くと壁のモニター画面にヴィラの顔が映っていた。「君の友人のマクレーンはとても喜んでいただろうね。だが君が発見したものを彼に知らせるチャンスはないよ」慌てて笑顔を取り繕うタマラ。「あ、その、お詫びします大佐……」「いいえ、どういたしまして。君の行動は私の役に立っているよ。それとも私が許可していなければ、君がその部屋に入れたと思うかい?」「あの、単なる好奇心でしたの……」「そうだね。マクレーンの好奇心だ」「マクレーンは何も関係ありませ……」「馬鹿を言うな! マクレーンは君にここを覗き見るよう頼んだのだ。私は彼が何を嗅ぎまわっているのか知るために、君を泳がせておいたのだ。次は私の番だ。彼女を逮捕しろ」文書保管室の扉が開くとシークレットサービスの男性職員2名が現れ、タマラのもとへつかつかと歩み寄った。

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その頃マクレーンは精神科医のレグワート博士に質問をぶつけていた。「……君が何を言いたいのかがまだわからんのだがね、マクレーン君」「私自身もはっきり掴めているわけじゃない、それで先生にお尋ねしているんです。信頼できる人物を外部の力によって生まれ変わらせてしまうという事は可能でしょうか?」「催眠術かテレノーシスという意味かね?」「いえ、そうじゃありません。つまり人間が、外見は変わらないのに、内面では敵のように考えたり感じたりするんです。テレノーシスに影響されている間だけじゃなく、その先もずっと」「ふん、人間を完全に変えてしまうためには、脳を再プログラミングする必要がある。それは何か月も何年もかかる、無限にも等しい複雑な手順だ。医学的観点からいえばね」「エイリアンが関わっている可能性は?」「フロッグスかね?」「そう呼ばれているものです。彼らは私たちよりもはるかに早く人間の頭脳を書き換えられると考えられますか?」「そのためには、まず捕虜にした人間が必要だな」「彼らはどれで試したんでしょうか。最初はMZ4で、次にテレノーシス事件で、そして今回……。先生、私はもはや正気かどうかはわかりませんが、ひとつだけ頭から離れない事があるんです。……ヴィラと彼の部下が乗ったタウ号は、回避不可能な災害に巻き込まれます。ヴィラは奇跡的に生き残り、数日後に説明のつかない帰還をして、災害はタウ号で容易にしのげる通常の太陽嵐だったと言いました」「……それで?」「私はその災害を亜空間通信で聴いていました。それは振動する重力場で、フロッグスだけが作り出せるものでした。ヴィラはシャトルで惑星ゴードンに降りようとした。それが上手くいくなんてますます怪しいんです。本当ならシャトルはもみくちゃにされて破裂してしまいます」「マクレーン君、どういう意味かね」「これを説明できるのは一つしかありません、先生。ヴィラがシャトルに乗るとフロッグスはエネルギーフィールドをオフにしました。彼らはヴィラを殺すよりも、むしろ生かしておいてキーパーソンにしようと企んだからです」「ヴィラがタウ号に乗っているのを彼らが知っていたと仮定するならね」「ええ、知っているでしょう。おそらく彼らは私たちの無線通信を監視できます。それもありそうです。それに好奇心をより高めるために歪んだ無線送信を使ってヴィラを惑星ゴードンへおびき寄せたかもしれません。……彼の任務の目的についてすぐにでもわかるといいのですが」「君は何か忘れているようだね。君の悪夢のような予想が本当なら、ゴードン基地にはフロッグスがいるはずだ。誰も気づいてないようだが?」「我々がMZ4で彼らに遭遇したのは全くの偶然でした」「しかしゴードン基地はタウ号が遭難したことの報告を完全に通常通り送ってきたぞ」「おそらくゴードン基地の職員の頭脳は既に書き換えられていたんでしょう」「なぜワムスラーに話さないんだね?」「信じてなんかくれるもんですか。すぐさま精神病院に送られるのが関の山だ」「正直いって、マクレーン、病院で診てもらうのも別に悪くないんじゃあないかな。君とのつきあいはもう10年にもなるが、こんな妄想を言い出すことはなかったからね。また時々ここへ来て、ヴィラのことをどう思っているか話してみるといい」「先生も私が狂っていると? そう診断するんですか?」そこへスピーカーからマクレーンを呼び出す声が流れてくる。ヴィラ大佐が6時半にシークレットサービス本部でマクレーンを待っているというのだ。

約束の時間になり、シークレットサービス本部のヴィラのオフィスへヴィラとマクレーンが話しながらやってきた。「君も知ってると思うが、マクレーン、私はいつだって君の観念的な計画をサポートしてきたよ。しかし、いったいぜんたい、惑星ゴードンで何をやりたいのかね」「タウ号で起きたことのあなたの分析について、あなたとリンドリー指揮官が正しいことを確認したいだけです」「そうかね。会議でやりこめられたのがまだ気になるかね?」「まぁ、そんな感じです。プロとしてのプライドが傷ついた……とでもいうか」「それで、君はまだこの事件が地球外生命体によって引き起こされたと信じているのかね?」「私は何も信じちゃいません。その可能性を排除したいだけです」「なぜワムスラーに聞いてみない?」「“ゴードン”と言いだす前に追い出されました」「私が許可すれば宇宙軍司令部にも伝えなければいけないことは知ってるね」「あなたは宇宙軍司令部の完全な信任を得ています。以前お願いした時は問題になりませんでしたが」「よろしい。行ってください。全て手配しておきましょう」目論見が外れて拍子抜けするマクレーン。「……ありがとう。ありがとうございます、大佐」席を立って退出しようとするマクレーンにヴィラが声をかける。「マクレーン? ……そこに本当に何かが起こっていて、タウ号と同じ事態に陥ったらどうなるかな?」「それは私が負うリスクです」「いや、そこまでの責任は負わせられんよ。安全のためオリオン号には重力場発生装置を装備させよう」「そりゃすごい……しかし時間がありません」「長くはかからんよ。新しいシステムを全艦隊に導入するところなんだ。技術主任のクランツを知っているかね」「名前だけは聞いたことがあります」「いわば専門家だ。人工重力の第一人者といえる。彼を同行させよう」「……ありがとうございます、大佐」マクレーンが再び退出しようとすると、またもヴィラが呼びとめた。「マクレーン、言うのをすっかり忘れていた。君のチャーミングな公安官は一緒に行けないよ。特別な訓練コースに行ってもらったのでね。その後のミッションまでは知らなかったんだ」「……それはどんなコースですか?」「彼女は昇進を一年以上待っていてね、そのコースを受けるのが昇進の前提条件なんだ。彼女自身が希望したのさ」「……なぜ彼女は教えてくれなかったんだろう」「何も聞いてないのかね?」「何も」「そりゃまずいね。何か怒らせるようなことでも?」心あたりもなく狐につままれたような面持ちで首を振るマクレーン。「彼女のことはさっぱりわかりませんよ」「女性とはそういうもんさ」

海底の104基地でオリオン号が打ち上げ準備に入っている。たまたま打ち上げ地点にスピラ指揮官のループス12号が帰還してきたが、女性管制官に呼び出すまで待つよう指示されてしまった。「本艦は重要書類を積んでおり最優先で処理されなければならない。マリガン大佐を出してくれ!すぐに潜水できないのなら別の基地に移動する必要がある」と連絡しても「マリガン大佐は休暇中です。あと数分で空きますので」とそっけなくあしらわれてしまった。出発準備の整ったオリオン号はクランツ技術主任を乗せて海底基地を発進し宇宙へ飛び立っていく。

そのころシークレットサービス本部では部下を集めて命令を下すヴィラの姿があった。「極めて重要なのは――コスモスマイナス186地点で宇宙軍の全ての通信の妨害。コスモスマイナス100地点での宇宙基地の封鎖。すべてのレーダー警報装置を記録専用モードにセットすること。接近データは転送せず、保存のみになっていることを確認しなければならない。コスモスマイナス164ではその宙域の全部隊に対し、最も近い基地へ帰投するよう最優先命令を発動する。コスモスマイナス200は午後11時に開始。コスモスプラス200で任務完了だ」

基地を飛び立って18時間経ったオリオン号艦内では、クランツ主任技師が自分のシステムのテストをさせてもらえることの悦びを1時間おきに語るので、マクレーンは辟易していた。そのときレーダー担当のヘルガが遠く離れた宇宙空間に何か動く物体を発見する。その物体の発している信号はMZ4事件で聞き覚えのある、フロッグスの三進法信号だった。それはすなわちフロッグスが2つのレーダー警報装置をすり抜けてきたことを示している。ただちに宇宙パトロールへ報告するアタン。

ヴィラは様々な命令書を暗号化して送信するよう部下に命じていた。「コスモスマイナス200を開始する。コスモスマイナス150の侵略部隊にゴードン基地経由でエネルギーを供給せよ」そこへオリオン号から宇宙パトロールに光波通信が送られてきたとの報告が入る。宇宙パトロールに代わって通信を取るシークレットサービスの副官。「宇宙パトロールは現在停止中だ。通信を転送している。報告があるのか」「ある。4つの区間でUFOを発見した。RS-118・KL90からRS-118・KL94。やつらはレーダー装置の外側を通過した。地球へ向かうコースに乗っている」マクレーンの報告を聞いて指を噛むヴィラ。副官は「把握している。対策を講じているところだ」「ワムスラー将軍には通知したか?」「もちろん。現在のコースに留まって次の命令があるまで待機せよ」「我々のコースはUFOから離れている!」「それで大丈夫です」「UFOに誰が乗っているんだ!フロッグスか?」「言う権限がありません。通信おわり」宇宙パトロールと繋がらないなんて前代未聞だ、と焦るマクレーン。通信相手が誰だったかアタンに尋ねられても、マクレーンには見当がつかなかった。ヘルガはUFOが間違いなく地球に向かっていると報告した。
一方シークレットサービスでは全ての宇宙ステーションから滝のような問い合わせが集中していたが、それに対してもヴィラは既に対策ずみだと回答することで2時間は問い合わせを止めさせるよう指示していた。そこへタマラがシークレットサービス職員に付き添われてやってきた。「なぜ私をここに引き留めているの!?」「正当な理由があってね」「最後にあなたが何をしようとしているのか教えてくれるかしら」「君はもう知ってるんじゃないかな? 君の友人のマクレーンが、君にここでスパイをしてほしいといっただろう」「それじゃやっぱり……クーデターを企んでるの?」「クーデター? なんて幼稚な考えだ。私はそんな些細な事に構っている暇はない」そこへ管制基地47-36-A5から通信報告が入る。先遣部隊は地上基地や部隊からの妨害もなく予定通り侵入ルートに到達したと聞いて「素晴らしい!」とご満悦のヴィラ。「コスモスマイナス164の侵略部隊は集合地点を離脱せよ」「了解」驚いてヴィラに問いかけるタマラ。「大佐、どういう意味ですか?侵略部隊?信じられない……狂ってるわ!」「なぜ平均的な頭で理解できない事をすべて狂気として片づけるのかね?」「しかし、お願いです、考えなおしてください……」「議論する時間はないんでね。マクレーンは遅かれ早かれ、我々を呼び出すだろう」「呼び出すのは宇宙パトロールだわ」「いいや、彼の声は誰にも聞こえないさ。私は彼らの暗号変換機を自由に操れるのでね。……マクレーンが連絡してきたら君が相手をしろ。その時、どう答えるかは私が指示する」

フロッグスの大編隊をレーダーで捉えたオリオン号は再度宇宙パトロールへ連絡を取ろうとするが、依然応答はなかった。マクレーンは繰り返し呼び出しを続けるようアタンに指示すると、同乗のクランツから銃を取り上げる。「何をする!? そんな権利はないぞ!」「念のためです。あのヴィラが単なる好意であなたを同乗させたとは思えない」「ばかばかしい!」「それなら結構。いまにわかります」

シークレットサービスでヴィラに食ってかかるタマラ。「あなたは私を殺すことはできても、マクレーンに誤った命令を伝えるよう私に強制することはできないわ」「まず、私は君に強制できる。次に、私は命令をくだす。そして彼がそれに従うのを確信しているよ」「あなたはマクレーンのことを知らないんだわ!」
そのとき副官が、オリオン号の発した光波通信をキャッチした。ヴィラは副官に命じてマクレーンがどれだけのことを知っているかワムスラーの代わりに聞き出させようとするが、一向に宇宙パトロールへ繫がれないことに業を煮やしたマクレーンは「今から自分の判断で行動する!」と宣言。ヴィラはタマラに「奴と話すか、それとも酷い目に遭わされたいか」と脅すがタマラは身じろぎもしない。苦々しい顔でヴィラは自ら「マクレーン、こちらはヴィラだ。君を驚かせることがある」と通話に出た。タマラがふと視線を落すと机の上のインターホン用スイッチに目がとまった。「わしと一緒にいるのは公安官のヤジェロフスク中尉だ。君がわしの命令に従わなければ彼女はここで死ぬことになる」タマラの背中に突きたてられている光線銃。ヴィラがタマラに話をさせるため部下に合図をすると、部下がタマラを後から突き飛ばした。タマラはよろけて机に手を突くと、咄嗟にインターホンのスイッチを押した。

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「タマラ!」「マクレーン!あなたが正しかった。手遅れよ、ヴィラが勝ったわ!侵略が始まったの、フロッグスよ!私の声が聞える?」宇宙パトロールの館内スピーカーを通じて放送されるタマラとマクレーンの声に、執務中だった宇宙パトロールの女性職員たちが驚いて、居眠り中のスプリングブラウナー伝令将校を起こす。「聞いたかね、マクレーン?これは脅しじゃないぞ。彼女の命は君の手の中にある。わしの言うことを聞いてくれるかな?」「何をすればいいんだ?」「クランツはどこだね?」「ブリッジにいる」「彼と話がしたい」マイクの前に歩み寄るクランツ。「クランツです。大佐、私は武装解除されました」「そんなことだろうと思った。マクレーン、1分だけやろう。それまでにクランツが指揮権を執ったと報告させろ。クランツに武器を返し、彼の命令に従うんだ。そうしなければタマラは死ぬ。わかったか?」マクレーンはクランツが前を向いている隙にアタンへ目で合図をする。「ああ、はっきりわかったよ!」「それからクランツは私に暗号でメッセージをくれるから、彼を強要しようとは思わんことだな。今から1分だ」アタンはこっそり自分の光線銃を椅子に乗せて上着で隠した。ヴィラがカウントダウンしながら言う。「50秒……マクレーン、わしらが少し古臭いことを忘れないでくれ。わしらの武器がひと昔前のものなので、反撃できると期待しているかもしれんからな。君はいつか、わしら全員が死なねばなんと言い出すかもしれんから、これだけは言っておこう。君はガールフレンドが支払わなければならん対価を低く見積もっているよ」

一連の放送が悪い冗談のようで及び腰だったスプリングブラウナーは秘書官の説得もあってワムスラー、宇宙司令部および政府への通知を部下へ指示した。一斉に動き出す部下たちへ慌てて付け足すスプリングブラウナー。「伝令を使って!時間はかかるけど、全ての回線は支配されてると思ったほうがいい」

ヴィラのカウントダウンが残り15秒を告げる。マクレーンはクランツに「ばかみたいに突っ立ってないで!何をすればいいのか言ってくれ!」と言うが、クランツは黙って立ったままだ。「10秒……」「一人では決められない!」「7秒……」ハッソーから武器をクランツに返すよう促されるマクレーン。マリオとヘルガも同じように武器の返却を訴える。「4秒……」マクレーンが光線銃をクランツに渡すと、クランツは「よろしい……それから動かないで!」と銃口をオリオン号のメンバーに向けたままアタンの所へ。「渡してもらおう」隠した光線銃を渡すアタン。「気づいていないと思ったんだが……」「ヴィラ大佐、こちらクランツです。01、00、2、3。アルゴル、ベスタ、インターコスモス、ウー、インディゴ」「認証した、インディゴ。……彼は対応できたようだ。コスモス管制どうぞ」壁のモニター画面に管制官が映る。「集結地点の侵略部隊です。宇宙軍の妨害はありません」もう一つのモニターに女性管制官が映る。「コスモスマイナス150」「今から侵入ルートに入れ。ゴードン基地からビームでエネルギーを供給する」副官がヴィラにタマラを処分するか尋ねると「コスモスマイナス50まで待とう。宇宙パトロールが口を挟んできたとき必要になるだろうからな。彼女はよく繋がってくれているよ。連れていけ」

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宇宙空間を悠悠と飛んでくるフロッグの宇宙戦闘機の編隊。
宇宙軍本部を大股でズカズカと歩きながらウェナースタイン政府委員とアーサー卿に「部下の訴えを聞いてゾッとした!ヴィラは気が狂ったに違いない!」とわめいているワムスラー。また他方ではクブライクリム元帥が3人の部下にそれぞれ「シークレットサービス区画を磁気的に分離しろ!それからドアをバルゴ光線で焼き切れ!ヴィラの不意を突くんだ!」「作戦地域へのすべての部隊は、デルタ計画でいく」「現時点ではデルタ計画での全セキュリティ対策は有効だ。報道管制を敷け!」と命じている。

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ヴィラが遂に基地本部の破壊命令を発した。「コスモスマイナス100。艦隊基地をブロックせよ!発着ベイを爆破!」海底基地の宇宙船発着場に轟音が響くと天井から大量の海水がなだれ込み、そこに駐機していたオリオン号と同型の宇宙船を押し潰してしまう。
さらに、宇宙防衛を手薄にするためのダメ押しの命令がヴィラから発せられた。「作戦中のすべての部隊へ光波通信。アルファオーダー、地球に戻れ!これはアルファオーダーである!」
時を同じくしてワムスラーが宇宙パトロールに指令を発する。「こちら宇宙パトロール。アルファ警報!フロッグスの侵略軍が地球へ近づいている。重戦闘部隊出動せよ。第25番基地の1から12部隊!第25番基地の12部隊は第30番基地へ!」
アーサー卿がウェナースタイン政府委員に報告している。「最高宇宙司令部より政府へ。フロッグスは我々の基地を爆破しました。基地は浸水しています。フロッグスの侵略艦隊はセクター118-KL12から118-KL4に近づいています。抵抗の甲斐もなく。侵入を止められません。我々は交渉を提案します」
モニターの向こうでウェナースタインが言う。「政府より宇宙司令部へ。仲介交渉者は軍法会議にかけられるだろう。敵は何らかの手段で阻止しなければならない」
ワムスラーの指令が響いている。「宇宙パトロールより全ステーションへ通達。基地と作戦部隊の間の光波通信はシークレットサービスによって転送されるため無駄である。繰り返す……」シークレットサービスで放送を聞いているヴィラたち。「……光波通信は転送されるため無駄である。繰り返す。光波通信は転送される……」そこへ武装した大勢の宇宙パトロール職員が駆けつけ、ヴィラたちを拘束した。後ろ手に組んで平然として語るヴィラ。「何でそんなに時間が掛かったんだね、紳士諸君?もう手遅れだよ!計画は進行中だ。誰にも止めることはできん。24時間以内に、地球はついに知的存在の手に渡るだろう」それを聞いていたスプリングブラウナーが言う。「奴らがあなたより遥かに知的でないのなら、我々は何も心配はしませんよ。ご同行ねがいます!」職員に促されてその場から連れ出されるヴィラ。

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オリオン号の船内では銃を構えたクランツがソファへもたれてメンバーに目を光らせていた。その緊張を破るようにマリオがクランツへ話しかける。「……理解できないね。なぜシンプルに俺たちを殺しておいて、コンピューターに宇宙船を操縦させないんだ?5人も監視し続けるのはストレスが溜まるだろう?」「ストレス?君たちが行儀よくしていれば問題ない。……君たちの最初の質問に関してだが、君たちはゴードン基地から期待されている。ヴィラは彼らに知らせていた」マクレーンが尋ねる。「誰が私たちに期待しているって?」「……そのうち分かる」「フロッグスか?」「……知的な存在さ。そして彼らは君たちのオーバーキル・システムについて特に興味があるんだ。君たちにはすてきなデモンストレーションをやってもらう」「死んだ方がましだね」「まあまあ……ゴードンに着いたら、まず最初に眠ってもらうんだ。目が覚めた時には全てが違って見えるだろうね」思わず椅子から立ち上がって声を荒げるマクレーン。「奴らは私たちの頭脳を置き換える気なのか?……奴らがヴィラにやったように!?」「ちっとも痛くないさ」「失敗したな、クランツ……私たちにそれを教えるべきじゃなかった!」激高して飛びかかろうとするマクレーンにクランツは銃を向けて「そこにいろ!……もう一歩だ。このことはヴィラに知らせる。タマラを忘れるなよ」と制した。「ちょっと待て……惑星ゴードンはまだ遠い。君は遅かれ早かれ失敗するだろうな」とうそぶいて席に戻るマクレーンを見て冷ややかに笑うクランツ。そのときブリッジの計器が奇妙な音を立て、クランツの後ろのコンソールが点滅し始めた。「今のは何だ!?」と驚いて尋ねるクランツ。マクレーンが計器に手を伸ばしてクランツから牽制されると、成り行きを覗っていたヘルガやアタン、マリオも各々の担当計器をチェックし始めた。モニター画面が点いてハッソーが報告する。「機関室から指揮官へ。変圧器の3番と5番が誤動作しています。どうしますか?」クランツが銃を構えたまま「どういう意味だ?」と聞き返すと、ハッソーが続けて言う。「変圧器の役割の技術的な説明をしましょうか?というか、むしろなぜそれらが誤動作しているか説明しましょうか」クランツがマクレーンに言う。「修正するよう命令しろ」マクレーンが何か言いかけるが、ハッソーが畳みかけるように「それはつまり、一時的に半分の速度で飛行しなければならないことを意味しています」と言う。「マクレーン、おまえがしているのは妨害行為だ」「……君がしていることは違うのか?」「……ジビヨンソン、はったりをやめろ。オリオン号をすぐフルスピードに戻さないなら、どのクルーが一番の犠牲者かを決断しなきゃならない……俺の言ってることがわかるか?」息をのむマクレーンたち。だがモニターの向こうのハッソーは強気の姿勢を崩さない。「降りて来て、自分の目で確かめてみるんだな!」「……馬鹿にしてるのか?」クランツはあたりをねめまわしてからモニター越しのハッソーに「仕事にかかれ!」と言い放った。

一方、宇宙軍本部のクブライクリム元帥はアーサー卿に「重戦闘部隊が発進できないなら、どうやって敵の攻撃を撃退するんですか!?」と興奮気味にまくしたてていた。「……宇宙には巡洋艦が何隻あるかね?」「標準警備艇が8隻。攻撃規模に比べれば無いも同然です」館内放送が聞えてくる。「侵略軍はレーザー砲台7番から9番を通過中。彼らに多大な損失を与えるも、いまだ進路は変えておらず」クブライクリムが言う。「信じられないほどの数です。奴らの砲列の半分を潰せたとしても」ウェナースタイン政府委員は「ヴィラに何かやらせることはできないのか?」と尋ねるが「ヴィラには何もやらせることができん。彼は精神病棟にいるんだ!」と言うワムスラー。
そこへタマラが「元帥、私たちはヴィラが侵略を指揮するために使用した暗号を解読しました」と駆けつけてきた。「本当か?」「彼らは前進するためのエネルギー供給に明らかな問題を抱えていました。それが、彼らがすべてゴードン基地経由で近づいている理由です。ゴードン基地はエネルギーの供給と彼らの誘導を行なっています」ワムスラーが言う。「奴らが我々の砲台を通過するときでもコースを変更しなかったのはそういうことか」ウェナースタイン「つまり、攻撃を止める唯一の方法はゴードン基地を破壊することだ」クブライクリム「では、それをどうやって実行する?ヴィラはすべての隣接セクターを隔離してしまった」アーサー「それと、どの部隊なら時間内に惑星ゴードンへ行けるのかね?」クブライクリム「ありません。ヴィラの最後のアルファ・オーダーで、彼らはすべて地球に戻ってしまった。我々は彼らを惑星ゴードンに転進させましたが、そこに着くには時間がかかりすぎます」そのやりとりを聞いていたタマラが言う。「マクレーンだけが時間内に惑星ゴードンへ到達するかもしれない。でも彼はクランツの支配下にあります」ワムスラー「我々はオリオン号に連絡をとろうと1時間前から粘っています。スクリーン上に捉えてはいるのですが、返答がないのです」
オリオン号ではヘルガの前の呼び出し機器がさかんに鳴っている。ヘルガが取ろうとすると「中尉!」とクランツが銃を向けてそれを制止するのだ。「神経質にならなくてもいい。あるいは……私が神経質になって、君たちを不快にさせるかもしれん」マクレーンがクランツに言う。「本当にチャンスがあると考えているのか?」「私はあなたが持っていないことを知っています」「誰かが私たちと話をしたがっている。誰が、どうして?ヴィラだけが私の離陸を知っていた。だからそれができるのはヴィラだけだ。……彼の計画が露呈して、宇宙司令部がコンタクトを試みてこない限りはね」「気にするな、マクレーン!ヴィラは決して露呈させたりしない。彼の計画は……完璧なんだ」

そうこうしているうちにフロッグスの宇宙戦闘機編隊は刻一刻と地球へ近づいていた。「侵略者はセクター116-LM-4を通過しています。コースは変更されていません」「オリオン8号応答なし」管制からのモニタリングを聞いていたタマラは「私たちも何かしなければ……」とやみくもに焦るが、ワムスラーから「本当かね?それじゃ何を?」と軽くいなされてしまう。スプリングブラウナーがやってきて「フォン・ダイク将軍の配下のヒュードラーは惑星ゴードンに進路を定めました」と報告するも「役に立たん。彼女は惑星ゴードンに着くには遅すぎる」と目も合わせないワムスラー。「彼女はオリオンの前にいると思われます」「ヒュードラーはいつからオリオンよりも速くなったんだ?」「オリオンはしばらくの間、半分の速度で飛行しています」それを聞いてタマラとワムスラーはお互いに目を見合わせる。タマラがワムスラーに尋ねる。「ヒュードラーはオリオンに追いつけないんですか?」「ああ。しかし、それが何かね?ヒュードラーはクランツを冬眠キャビンに追い込むと思うかい?」だが、タマラは名案を思い付いたらしくニッコリ笑う。「ヒュードラーにマクレーンを攻撃するよう命じてください!」「気でも狂ったのかね?」「オリオンが攻撃された場合、マクレーンが制御を取り戻す可能性があります。クランツはオリオン号を守る必要があります。彼にはマクレーンとド・モンティが必要です」ピンとこない様子のワムスラーにタマラが畳みかける。「分からないの?!彼は彼らが必要だから、彼は彼らの支配権を失うかもしれない……やってみなけりゃわからないわ」少し考えたあとのワムスラーは即断した。「わかった。ヒュードラーへ光波通信……」

オリオン号の機関室で何やら機器の調整をしているハッソー。パネルのネジを回したあとでレバーを動かすと機器がショートしたりしている。モニター越しにクランツが疑わしい目で尋ねる。「何をもたもたやってるんだ?」「加速しようとしたんです。しかし、結果ばごらんのとおり。だめでした」「ジビヨンソン、もう十分だ。君のことはもう信じない」「私を信じないなら、マクレーンに聞いてみてください」クランツは緊張の面持ちで見守っている傍らのマクレーンに向かって言った。「……君はずいぶんと静かなんだな?」表情を崩して答えるマクレーン。「あなたはジビヨンソンが正しいのを知っている」クランツはマクレーンに近づいて言う。「私もすぐわかるよ、いつまでも飛行速度を半分にしていたら君らの仲間が一人殺されるということをね」「じゃあさっさとやったらどうだ!」感情的に怒鳴りつけるマクレーンに銃口を向けたまま押し殺したような声で言うクランツ。「……リスクを冒し過ぎだぞ、マクレーン」唾を飲むマクレーン、頬に脂汗がにじんでいる。その時ヘルガが飛行物体の接近をレーダーに捉えた。「警戒警報!飛行物体です。高速接近中、距離144、143」

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飛んできたのはヒュードラー号である。ヒュードラーのブリッジではかつてマクレーンの上司だった女性将校リディア・フォン・ダイクが指揮を執っていた。「指揮官から機関室へ。これで全速力か?」「ヒュードラーには持てる能力を全て注ぎ込んでいます」嘆息するダイク。「指揮官から戦術士へ。距離109でオリオン号を攻撃。わかっているだろうが、オリオン号を使用不能にしてしまわないように!」「わかってます」
オリオン号のブリッジでも接近してくるのがヒュードラー号だということがわかった。「オリオン級の戦艦」「距離110」「クリフ、これはヒュードラーだ!」クランツがマクレーンを脅す。「ジビヨンソンに加速させろ」「なぜオリオン号が故障するリスクを冒すんだ?ヒュードラーの目的もわからないんだぞ」「やつらがここへ乗り移ってこないためにだ」「距離109」マリオが慌てて報告する。「クリフ、あいつら攻撃してきた!俺たちは射程圏内にいるぞ!」クランツは動じない「君のお連れさん方は君を撃ったりしないさ」「標的は我々じゃない君だ!フォン・ダイク将軍はおそらく、我々はもう死んでいると確信したんだ」ブリッジにチリチリッ……と焼きつくようなノイズが響く。ヒュードラーの砲撃だ。「命令だ、私たちを守れ」「どうやって?」「あの船を攻撃しろ!今すぐだ!」「……仰せのままに」精一杯の嫌味を言って踵を返すマクレーン。「マリオ、戦術卓の配置につけ」「あいよ」エレベーターに向かおうとしたとき砲撃で船体が大きく揺れ、よろけるマリオ。クランツも背後へ倒れそうになる、その隙を突いて銃を持ったクランツの右腕を掴んで椅子の背もたれに叩きつけるマクレーン。無邪気な笑顔で成り行きを見守るマリオのカットバック。マクレーンのパンチを受けたクランツが殴り返そうと構えたところを、いつの間にか背後に忍び寄っていたハッソーが取り押さえた。「まぁ落ち着きな、あんちゃん。マリオ、こっちに来てくれ。僕は下に戻らなきゃいけないんだ」クランツをマリオに引き渡して階下に降りるハッソー。ホッとしたマクレーンはすぐさまアタンのいる操作卓へ駆け寄ってヒュードラーに連絡を取った。「オリオンからヒュードラーへ。フォン・ダイク将軍、こちらマクレーン。我々は無事、もう少し長生きしたい。聞えるか?」「マクレーン、大丈夫か?」「はい、将軍」「オリオン号は全て自由自在に動かせるか?」「技術的には、はい。神経のほうは少々すり減っています」「クランツはどこだ?」「ここにいます。彼は少し落ち込んでいるようです」ダイクの顔に一瞬、ホッと笑みが浮かぶが、すぐに毅然とした表情に戻る。「では超空間航行に移り、コースを惑星ゴードンにセットせよ。ゴードン基地はオーバーキルで排除する。これは政府からの命令である」「まだ存在してるんですか?」「余計な質問さえしなければ、そう長くはない!以上だ」マクレーンが「ハッソー、超空間航行はいけそうか?」と尋ねるとハッソーは笑顔で「問題ない」と操作卓のスイッチを入れてみせる。ブリッジのレベルメーターがモーターの高鳴りとともに上がっていく。それを見て「そんな事だろうと思ったよ」とつぶやくクランツに、マクレーンが呆れぎみに返す。「そうだな。君は賢いから」ヒュードラーと別れて宇宙の彼方へスピードを上げていくオリオン号。

宇宙パトロール本部のワムスラーたちの元へ「オリオン号が惑星ゴードンへ向かって超空間航行速度で飛行しています!」とスプリングブラウナーが駆け込んできた。ざわめく一同。ワムスラーが管制室にインターホンで尋ねる。「フロッグスから地球までの距離は?」「47.20」「オリオン号から惑星ゴードンまでの距離は?」「47.30」わずかにオリオン号のほうが遠い。「危険な賭けだ」

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宇宙ステーション7の傍を通過しようとするフロッグスの編隊。すれ違いざまに目に見えない砲撃が展開され、かろうじて3機のフロッグスを撃墜するもステーション7は宇宙の塵となって消滅した。
その間にも宇宙の深奥へ向かって一直線に飛んでいくオリオン号。

宇宙パトロール本部にステーション7の敗北が伝わった頃、モニターホンを通じてクブライクリムがワムスラーに状況を尋ねてきた。「どうなっている。オリオン号はいけそうか?」「やり遂げられるのはマクレーンだけです」「数値を教えてくれ」「フロッグスと地球、47.8。オリオンとゴードン、47.6」ややオリオン号の方が近づいたようである。「マクレーンは頼りになるな。彼を降格した天才は誰だったかな」「あなたです、元帥」「私が?……ああ」モニターホンを切ってしまうクブライクリム。

オリオン号ブリッジでレーダーを見ていたヘルガが報告する。「インパルス受信。前方に敵基地」「共鳴接触。距離は?」「距離37.4」「指揮官から戦術士へ」「はい、クリフ」「準備はどうだ?」「準備OK、奴らは射程圏内です」「距離37.3」「機関士から指揮官へ。ウルトラインパルス実行中」「距離を」「12、11、10、9、8、7……」「5秒以内にオーバーキル発射。いいか、マリオ」「いいぞ!」「狙え……オーバーキル」
次の瞬間、惑星ゴードンから巨大な火柱が上がった。

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後日、宇宙軍本部で報告会が開かれ、レグワート博士がプレゼンテーションを行なっている。「言うまでもありませんが、この情報は直接関係者のみに留めるべき極秘事項であります。そうしないとパニックが発生します。不信と疑いの波がすべての政府機関を覆うでしょう。誰もが他人に対して頭脳の書き換えを疑うでしょうから。幸い、我々は影響を受けた者を正確に特定することができます。それはゴードン基地のクルー、そしてヴィラと彼のスタッフだけです」クブライクリムが発言する。「失礼します、教授。あなたはいま“影響を受けた者”と言いましたか?」「ええ、それは一種の病気です」「彼らは私にとっては犯罪者だ」ワムスラーも「その通りだ」と言う。レグワート博士が説明を続ける。「不本意な犯罪者です。それは自由意志による意図的な行為ではありません。地球外生物の手にかかれば、あなたたちも同じことをしたでしょうね。あなたたちの脳は新しい願望で再プログラムされたでしょう。巨大な星間領域へ版図を広げる地球外の勢力に、地球を明け渡したいという願望」ウェナースタイン政府委員が質問する。「教授、ヴィラの再プログラミングはどのようにして行われたのでしょうか?」「私たちは、一連のテスト、精神化学、および精神電気に取り組んでいます。再プログラミングのプロセスを再作成する必要があるのです。そうして初めて我々は元に戻せるという望みを持つことができるわけです」アーサー卿「ヴィラたちはまた元通りになる望みがありますか?」「やります。あらゆる手段を講じて」レグワートは「他に質問は?」と参加者に呼びかけたが、誰も手を挙げないようだ。「以上で私のプレゼンテーションは終わりです。今日ここにいる人々、そしてもちろん政府には進行中の調査の結果が通知されます。ありがとうございました」

散会する中でワムスラーが「オリオンの乗組員はもうしばらく残っていてくれないか?」と呼びかける。ハッソー「何を始める気なんだろうか?」マリオ「聞くまでもないよ。将軍に黙って出発したことについてさ、賭けてもいい」アタン「それはないさ。俺たちが助けてなきゃ将軍はフロッグスに脳みそ書き換えられてたんだぜ」ヘルガ「そんなの分らないわよ。彼、頑固だから」と銘々が噂し合っているうちにワムスラーがフォン・ダイクと話を終えて戻ってきた。「マクレーン、何か言いたいことはあるか」「ええと……何も思いつきません」「では私から言わせてもらおう。君が私の命令に逆らって惑星ゴードンへ出発したのは明らかに不正行為だ」オリオン号の面々が騒ぎそうになるのを上から重ねるように「それ自体は!不正行為だ」と強調するワムスラー。「殺されたり洗脳されたりする危機から我々を救った。思いがけない幸運とはまさにこの事だ。もし君のカンが間違っていたら、今頃クビになっていたんだぞ」さすがにバツが悪いと感じたマクレーンが「お願いです、もし……」と言いかけるとワムスラーが強い調子で制した。「マクレーン大佐!」思わず顔をそむけてしまうマクレーンだったが、ふとワムスラーの言った言葉に気が付く。マクレーン“大佐”だって?

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「……マクレーン大佐。宇宙パトロールでの任務は本日で終了する。懲戒処分の終了に伴い、君を高速戦闘部隊に戻す」予想外の昇任と原隊への復帰に喜びを隠せない一同。「どこで飲むか教えてもらえれば、私も参加するぞ」がっしりと握手するワムスラーとマクレーン。「そうですね……では」「スターライトカジノで!」続けてフォン・ダイクがきびきびとした口調で言う。「あなたたちの任務は乗組員全員への3ヵ月の特別休暇をもって始めます。今のところはそれだけです。落ちついたところでまた会いましょう」マリオがダイクに尋ねる。「休暇の目的地はみんな別々でもいいんですか?」「よろしい」「それじゃ、クロマに行きたいです!」それを聞いて皆が一斉に吹き出すので「何が可笑しいんだよ!」とむくれるマリオ。皆と一緒に会議室から出ていこうとするマクレーンをタマラが呼びとめて話しかけた。「……昇進おめでとうございます」「ありがとうございます」「その……古巣に戻れたことをお喜び申し上げますわ」「そうだね、みんなも素晴らしいことだと感じてるよ」「そうね、でも私はどうかしら。何をしたらいいのか思いつかなくて」「本当に?じゃあ私たちと一緒にいませんか?」「私がベビーシッターをするのは、あなたが転任するまでの間だけよ」「だからさ。君なしでいることなんか想像も……」「何事にも終わる時は来るのよ」「MZ4を覚えていますか?私たちが一緒の最初のミッション。私たちは喧嘩ばかりしてた」「それからムーラ、刑務所のコロニー。ああまったく、私は怒ってたのよ」「そしてあなたは私に、あの詩人とイチャついてみせた」「ちょ、ちょっと待って。クロマでのこと覚えてる?あなたがあの女王と一夜を共にしてたら、私はあなたを絞め殺してたかもしれないわ」「でも君は私にキスをした、私の記憶が正しければ……」急にしおらしくなるタマラ。「……ええ……忘れてるかと思ったわ」「フォン・ダイクに話してみるよ。ベビーシッターを続けてほしい、でなきゃサービス終了だってね」「このサービスのことしか考えられないの?プライベートのベビーシッターは要らない?」抱き合ってキスを交わす二人。

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突然、壁の巨大モニターにヘルガのアップが映し出される。「ありがとう、クリフ。もう十分よ。マリオと私で賭けをしてたの。ここにいる恋の専門家さんは、まさか会議室でキスするわけないよなって主張したのよ。で、私はシャンパンを10本獲得」横からヘルガを押しのけてマリオが画面に割り込んで来る。ヘルガが「くたばれ!」と言い捨てると今度はマリオが「あなたを見くびっていたよ、クリフ。僕は専門家だけがそれをやってのけると思ってたんだ。まったくあなたは驚くべき人だ……」と賛辞を述べ始めた。祝福されていることに喜ぶタマラとマクレーン。マリオが画面袖のヘルガに「おいで!」と引っ張られてモニターが消されると、今度は本当に誰も見ていない会議室でゆっくりと抱き合いキスをする二人だった。 【完】

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本作は第7話をもって最終回である。フロッグスとの決着がついたわけではないが、宇宙パトロールから高速機動艦隊へ復帰できたことで「宇宙パトロール(Raumpatrouille)」としての物語はこれで一旦区切りがついたといえるだろう。視聴者から見ていけすかないキャラを大いに立たせてきたヴィラ大佐はまさかのラスボスになって退治されるし(精神病院)、マクレーンは地球を救った功績で少佐から大佐への昇進というおまけ付きである。命令無視を覚悟の働きで大手柄をあげて処分どころか逆に昇進して終わる大団円というと確かTVアニメ「佐武と市捕物控」の最終回がそうだった気がする。古典作品のストーリーで何かお手本になるものがあるのだろうか。
宇宙ステーション7はどう見ても絵にしか見えなかったが惑星ゴードンは幾何学的な立体テクスチャを備えたワンダーあふれる造型だったと思う。ヒュードラー号が再登場したのも嬉しい。一方でタウ号の外見は判らない終いだったし、そもそもヴィラがなぜ自らタウに乗ってゴードンのそばに行ったのか明らかにされないままだったのは残念だった。劇中ではすでにゴードン基地を占領していたフロッグスの策略でおびき寄せられたのだろうというマクレーンの推測が語られるだけだが、まったくもってマクレーンの言うように管理職は前線などに出ずデスクにふんぞり返っているべきである。

さて、どうにか最終回まで翻訳し終えることができた。他の回は一晩寝なければ片がついたのに最終回は何度も気力が続かなくなってしまった。訳語や口調の不統一も心残りだがもし同人誌にまとめる機会があれば統一したい。意訳した部分もかなり多いが脳内でスタートレック声優に置き換えて口調をシミュレートしている影響もある。別にアフレコ台本を作ってるわけじゃないので粗筋で事足りるのだが、セリフの一つ一つが理解できていないとストーリーを読み違えてしまっているのではないかという恐怖心が勝ってしまうのだ。それにGoogle翻訳結果のまま読むと意味不明な日本語になってしまい、フレーズ扱いで検索してみたら「ことわざ」や「よくある言い回し」だったという事も度々あった。せっかく苦労して調べた翻訳をむざむざ省略してしまうのも癪に障るのでレビューに盛り込んだという部分も少なからずある。

兎に角、宇宙パトロール・オリオンは最高に面白いSFドラマである。それもたった7本とそれを再編集した劇場映画1本しかないのだから、ボイスオーバーでも良いから吹き替え声優を充ててスカパーで放送してほしい。海外では古典的名作として語り継がれているのに日本では一度も放送された事が無い白黒ドラマは沢山ある(だいたい1964年の「The Adventures of Robinson Crusoe」なんて日本ではテーマ曲だけは有名だけど本編を見た人は何人いるのやら。たった13話しかないんだから……。「秘密諜報員ジョン・ドレイク」だって配給元のトランスグローバルに残っていないのであれば新たに吹き替えを新録するべきであろう)。というわけで白黒ドラマ専門チャンネルの開局を切に願う次第。

2019年09月09日

TV 宇宙パトロール・オリオン 全話レビュー/第6話「宇宙の罠」

第六話「宇宙の罠(Die Raumfalle)」1966年11月26日(土)20:15~21:15放送 視聴率51%
監督:Theo Mezger、脚本:Rolf Honold, W. G. Larsen (※5人の共同ペンネーム)

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マクレーンはワムスラー将軍から宇宙胞子の調査補助を命じられた。スプリングブラウナー伝令将校がパンスペルミア仮説(他の惑星で発生した生命が隕石などを介して地球に伝わり広がったというもの)の薀蓄を得意げに語るのをジョークで遮ってそそくさと任務に出ようとするマクレーンだったが、そのときワムスラーはスプリングブラウナーからもう一つの“最高司令官からの”指令を伝えるよう促され、しぶしぶマクレーンに話を切りだした。それは世界的に有名なSF作家のピーター・ポール・イプスンを惑星アンブリエル(※天王星の第2衛星と同名だが別の星という設定)に連れて行ってほしいというものだった。イプスンは小説のネタ集めのためにフィアンセの父親である大臣のコネを使ったのだ。なぜ今、それもオリオン号でなければいけないのか、イプスンに自腹で航宙チケットを買わせればいいではないかと突っかかるマクレーンだが、スプリングブラウナーは「誰かがあなたを推薦したに違いない。君は有名だからな」と答えるだけだった。「もし私が拒否したら?」「わしに恥をかかせたいなら、そうすればいい」ワムスラー将軍にそうまで言われてしまっては受け入れざるを得ないマクレーン。

発進準備中の機内ではアタンが愚痴をこぼしていた。「ピーポ(イプスンの愛称)は嘘っぱちさ。人間が自分の意思で時空を超えるんだぜ」ハッソーも言う。「彼がもし機関室に入ってきたら、頭をぶんなぐってやるよ」ヘルガだけは「いい人かもしれないじゃないの」とフォローするが、タマラなどはいつもにも増して「これはスキャンダルよ!このことはシークレットサービスにも報告します」とおかんむりであった。
あと5分で出発するという時になってブリッジへイプスンが現れた。荷物はどうしたと尋ねると、指示された9番キャビンに置いて来たという。誰も案内しないのにどうやって行ったのかと尋ねると「船の図面を調べて準備しました」と悪びれずに言うイプスン。「図面は機密だと思ったんだがな」「イプスン氏は上と繋がりがある人のようね」と目を見合わせて呆れるマクレーンとタマラ。マクレーンがクルーを紹介しようとしても「存じてます、自分で調べましたので」という始末。マリオが「何でも知ってるんなら、いったい何しにここへ来たんだ?」と言うとイプスンは「理屈の上ではそうですが――実際には学ぶことが山ほどありますので」と苦笑いをした。

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マクレーンが号令をかけ、オリオン号の発進シークエンスに入る。そのやりとりを興味深く見て回るイプスン。宇宙空間に出てマクレーンがコンピューターを操作しているとイプセンが横から「近い将来、複数のコンピューターは1台に統合され、これは数年のうちに金属ごみになるでしょう。私はそれを4年前に小説に書きました」と茶々を入れて内ポケットから自分の小説を読ませようとして来る。無言で静止するマクレーン。「ハハ、すみません……ちょっとトイレへ」と空笑いでブリッジを出て行くイプスン。ヘルガとタマラがイプスンのことを「ハンサムじゃない!」と興味を示しているのを聞いてマクレーンは渋り顔で「いまブリッジに女性2人は要らないな」と聞こえるようにつぶやく。ンマー!という表情のあと、笑いながらブリッジから出て行くヘルガとタマラ。マリオ「女性陣は夢中だな!おお怖い!」マクレーン「スターライトカジノで君が両手に花の所を見かけた時の私の気持ちがまさにそれだよ」マリオ「嫉妬はいけませんぜ?」ムスッとして出て行くマクレーン。

イプスンのキャビンではヘルガとタマラがソファに腰かけてイプスンの話を面白おかしく聞いている。それを機関室のアタンとハッソーがスピーカーを通してこっそり聴いて笑っていると、マクレーンが来てスピーカーのスイッチを切った。「おいクリフ、なぜ彼の旅をもっと楽しくする方法を探さないんだい?」「そんなつもりはないね。大臣の義理の息子をつける余裕なんてないんだ」

地球ではワムスラー将軍が、イプスンのフィアンセの父親である惑星外務大臣の話を聞いていた。大臣はイプスンの女癖の悪さに不安を感じており、オリオン号に女性2人が搭乗していることを気にしていた。ワムスラーは笑って、ヘルガは秘かにマクレーンのことを愛しているし、タマラのことは誰も女性扱いしていないが魅力的なロボットというわけでもない――と話す。大臣はイプスンから話をさせて娘を安心させたいのでオリオン号に連絡を取ってほしいというと、スプリングブラウナーはステーション1の接続が昨夜から故障しておりオリオン号へ通信が送れない状況であることを大臣に伝えた。大臣は「娘に何といえばいいのだ」と憤慨し、時々起こるよくある事だという二人に耳を貸さず、すぐに修繕できなければ面倒なことになるぞとワムスラーを脅して去っていった。

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その頃オリオン号でも通信切断状態が続いており、マクレーンは宇宙パトロールに合流できないまま宇宙胞子採取エリアに近づいていた。隕石の塵を磁気で収集、運が良ければ科学者を一年中忙しくさせるだけの宇宙胞子が採取できる寸法である。そのときイプスンがマクレーンに、宇宙空間で小さな粒子を苦労して集めるより、眼下にあるアンブリエルから2万キロ離れた小惑星で岩石をひとつ収集すれば事足りるだろうと提案してきた。マクレーンが同意するとイプスンは自分がシャトルを操縦して行きたいのだと言いだした。4週間前にシミュレーターで最高得点を出したと自慢げに語るイプスンをたしなめるマクレーンだが、自信過剰のイプセンは「私の願いをかなえて下さい、明日は私の40才の誕生日なのです」とまで言い出す始末。マリオがふざけて「♪ハッピバースデーツトゥーユー」と歌いだし、タマラに目で制される。「本当に対応できる?」「私の本ではシャトルの操縦なんて古い技術ですよ」「君の本じゃ人間がテレポーテーションで旅行してるじゃないか」「まさに小惑星への旅。それが問題なら、あなたは私が許可なく出て行ったと記録すればよろしい」「わかった。モンティ中尉に同行させよう」「一人で行かせてください!」イプスンは夢見がちなことばかり言って埒が明かず、結局イプスンに何があっても自己責任だぞと言い聞かせてシャトル1へ搭乗させることになった。それでもマクレーンは万一のためにシャトルをガイドビームで係留していたものの、イプスンがそれに気づいてビームを解除してしまった。するとシャトルはイプスンの意に反してコースを外れていき、原因がわからないまま小惑星ムーラへ軟着陸してしまった。イプスンは離陸しようとするがシャトルが目に見えない力に引き寄せられて高く浮びあがることができない。イプスンが意を決してシャトルの外へ出ると、複数の武装した男が現れてイプスンをどこかへ連れ去ってしまった。マクレーンは無線でイプスンに何度も呼びかけるが応答はない。

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捕えられたイプスンは暗い部屋で椅子に拘束され、レーザーガンで武装した男たちに囲まれて尋問にかけられていた。尋問室を見下ろす別室からスピーカーで尋問していたリーダーらしき男は、イプスンの乗ってきたオリオン号が大型高速戦闘艇だと知ると、イプスンにオリオン号を迎えに来させるよう、拷問マシンを作動させてイプスンに応じさせた。

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マクレーンたちはイプスンから連絡が連絡が入った事に一応安堵するが、彼の言う植民星ムーラの管理棟へ来てほしいという内容に疑念を抱く。マクレーンはタマラのキャビンを尋ねて「一応確認なんだが、ムーラへの着陸は許可されているかな?」と尋ねてみた。「シークレットサービスと補給船だけ、トップレベルの着陸許可を除けばね。つまり着陸は禁止されているわ」「聞きたかったのはそれだけだよ。じゃ」踵を返して出て行こうとするマクレーン。「でも、イプスンを連れ帰らなければ私はクビ。あなたもただではすまないでしょうね」「じゃ、どうするのがお勧めかい?」「あなたがイプスンをムーラに残していきたいのは知ってるわ、彼が帰るまで半年かかるけど」「それは的外れだよ。これは君次第なんだ」マクレーンの言い方にカチンとくるタマラだったが、マクレーンが決定権をタマラに委ねようとしていることを悟ってシークレットサービス所属の自分の権限で着陸することを認めた。アタンにムーラへの着陸指示を出すと、マクレーンはタマラからムーラについての情報を尋ねた。タマラの話によれば、ムーラはそれほど悪環境ではなく、追放されて暮らしている住民は人道的で自由に出歩けるが、以前は刑務所と死刑があった。収容されているのは不必要な個人や悪名高い有名人。「じゃあイプスンはぴったりじゃないか」

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そうこういっているうちにオリオン号は植民星ムーラへと到着し、アタンとヘルガに留守番を命じて他のメンバーが地上へ降りようとすると、ムーラの管理センターを名乗る人物からテレビ電話を点けるよう通信が入った。訝しみつつモニターをオンにすると、イプスンの姿が映った。「イプスン、君ってやつは……」と言いかけたときモニターから「彼の苦境が見えるかね!」と声が響いた。イプスンのこめかみには拷問具の火柱が突き付けられていた。「全員船を離れろ。非武装で、ひとりずつだ。少しでも抵抗すればイプスンは焼け死ぬ。わかったか?」マクレーンの言葉を遮ってモニターからの声が畳みかけるように言う。「議論の余地はない!誰かを船に残そうとは思わないことだ!こちらは君たちが何人いるか知っている。さあ始めろ!」やむをえずクルー全員の下船を命じるマクレーン。

武装した男たちから追い立てられるようにして管理棟へ連れてこられたマクレーンたちはそこで男女別に分けて監禁され、マクレーンはイプスンと入れ替わりに尋問室へ連れてこられた。現われたリーダーらしき男はマクレーンの問いかけに対し、我々はこの呪われた追放用コロニーからの亡命を望んでいると語った。そのために何年もかけて地球当局の隙を探し、物資部門の責任者が合成麻薬ほしさに賄賂を受け取ったことを突き止めた。彼を脅して武器を調達したのだ。彼らはオリオン号を奪ってこの流刑地から脱走し、地球当局よりも自分たちをもっと高く評価してくれるところ――フロッグスへ亡命しようとしているのだ。「君たちの目には、エイリアンは汚らわしいけだものに見えるだろう。フロッグス(カエル)と呼ぶくらいだからな。このムーラでは考え方が違うんだ。君らが彼らを憎むように、我々は君たちを憎んでいる」「フロッグスへ行くっていうのか?あなたは狂っている」「私は地球では狂人だと思われている。だが彼らは間違っているよ」男の言動で何かに思い当たるマクレーン。「……あなたはもしやトゥーレンヌでは?」「光栄だな。そう、私はかつて有名人だった。私の作ったパラライザーは大評判だったよ」「そして何千人もの命を危険に晒しました。あなたがここにいる理由はそれです」「倫理観が異なるというだけで地球当局は私を砂漠の星に追放した。地球当局はパラライザーに興味を示さなかったようだが、別の人が欲しがるようになればきっと目を覚ますだろうな」「エイリアンに武器を売る気か?あなたは自分が何を言っているかわかってるのか?」「私が出て行くのを咎められる覚えはない!」「あなたは本当に人類絶滅を望んでいるのか?」「これ以上のことはムーラの誰も何も望んではおらんよ」「フロッグスはあなたたちを殺すぞ」「考えが甘いな。私にしっぺ返しをさせてくれ、なぁに些細な事だ」「何のことだ?」「選択の余地はない。君は役に立ちそうだから殺すのは気が進まないが、君はある意味ヒーローであり、危険な存在だ。君はきっと私の計画を阻もうとするだろう、だから死んでもらわねばならない。君自身の名声の犠牲者というわけだ」「私たちを殺す必要がどこにある?ここに置き去りにすればいいじゃないか」「君たちは知り過ぎた。地球当局は私たちの亡命計画をまだ知らないはずだからな」「じゃあ何で教えたんだ?」「私自身の喜びのためさ。恐怖に歪む君の顔は貴重だからね」「この汚い豚ども!」いきり立って詰め寄るマクレーンだがすぐに光線銃を構えた男たちの手で椅子に引き戻されてしまう。笑みの消えた冷徹な表情でマクレーンを睨むトゥーレンヌ。「私の善意をなめないでくれたまえ!君には痛みのない死を与えるつもりだったが――気が変わるかもしれん」

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オリオン号との連絡が途絶えて6日。惑星外務大臣は娘に何と言ったらいいのだとカンカンになってワムスラー将軍に詰め寄っていたが、ワムスラーもまたステーション1の通信障害が回復した後もオリオン号と連絡が取れないことについて苛立っていた。つまりオリオン号が何か他の事態に巻き込まれた事を察していたのだ。大切な義理の息子をマクレーンなんかに預けたのは無責任だと言い出す大臣に、あなたがマクレーンを希望したんじゃないですかと言い返すワムスラー。大臣は自分のことを棚に上げて「わしより君のほうがずっとマクレーンがどういうやつか知ってたはずだ」と突っかかってくる。ワムスラー「ええ、そうですとも!……彼は最高の男です」大臣「ハッ、いまにわかるさ」

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監禁中のヘルガとタマラは、どうやら彼らの目的はオリオン号を奪って脱走することらしいと気付く。自分たちがムーラの女性不足のために選ばれたのではないことに少し安堵すると、自分たちを監視しているムーラの男性の身の上などもまだ若いのに命令に尽力して気の毒だと思える余裕が出てきた。そのうちヘルガはあるアイデアを思いつく。ヘルガがドアを叩くと監視モニターに男の姿が映った。モニターカメラの死角に隠れるタマラ。カメラの前に出たヘルガは男を情報や色仕掛けで誘おうとするが、男は全くなびかない。「面白いやつだ。全く気の毒だよ。もうじき時間切れなのがな」「それって私たち全員?」「そうだ」「じゃ全員捕まえたのね?」「どういうことだ?」「それが言いたかったの。同僚が出て行っちゃったのよ」驚いてモニターカメラの向きを調整する男、たしかにタマラの姿は映らない。男がドアを開けて部屋に入った途端、陰に身を潜めていたタマラが男の腰から光線銃を奪い取った。男を脅してもう一方の監禁室からハッソー・アタン・マリオを開放した一同はオリオン号へと向かう。

トゥーレンヌはマクレーンを前にして余裕たっぷりに最期の別れを聞かせていた。マクレーン「あなたは詳細な計画を立てながら、最も重要なことを忘れているようだな。訓練を受けた人員なしにどうやってオリオン号を操縦するつもりだ」トゥーレンヌ「ムーラにどれだけ多くの専門家がいるか君は知らないようだが、みんな宇宙船をもう一度飛ばせるとはりきってるんだ」「最後に大きな船を操縦したのは?」「最高の男が3年前に我々の仲間になったよ。自分の宇宙飛行士を窒息死させた後にな」「3年?そいつはオリオン号の操縦じゃ全く役に立たないぞ!医者を演じた俳優に本物の手術を頼むようなものだ」「からかってるのか?」「とんでもない!私は何も失うものがないんだ。天国の特等席から、あなたが出合い頭に隕石と正面衝突するのを楽しませてもらうよ」「……変更点はたくさんあるのか?」「エンジンは完全に別物だな。コントロールは出発直前に交換した」「はったりだ!」「自分の目で確かめることだな」「私は科学の発展を注意深く見守ってきたんだぞ」「なら3年という年月がどれほど長いかよくわかるはずだ。諦めろ、トゥーレンヌ!あなたは私を殺すことはできても感心させることはできない。あなたは偏屈だ」トゥーレンヌは部下に命じてマクレーンに拷問器を作動させた。「私は、おまえのようなガキの扱い方を知っている。ビームを寄せろ!」マクレーンの喉元に放電針が迫る。「楽に死ねると思うなよ……さぁ、怖いと言え」「ああ、私はばかげた意地悪爺さんが怖いね!」「こいつを燃やせ!」マクレーンがグッと目を閉じたとき警報が鳴った。「オリオン号の乗組員が脱走しました!ヘンドリックが人質になっています!」苦々しい面持ちで処刑を中止するトゥーレンヌだが、かわりにイプスンを処刑するとマクレーンに予告した。「誰かが私に逆らうたびにオリオン号の乗員が死ぬだろう。最初は重要じゃない奴。次にシークレットサービスの女、そしてもう一人の女、そうして最後に君だ。……まだばかげていると思うかね?」

オリオン号に戻ったクルーたちは、まず人質にしたムーラ人を地球当局に帰還した時の証人とするために人工冬眠機で眠らせてから、機内の機器チェックを始めた。今すぐ緊急離陸するよう提案するマリオにハッソーは残りの乗員が戻らないうちは発進しないと答える。マクレーンとイプスンが報復として殺されることを危惧しているのだ。

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そのころトゥーレンヌは部下に命じてイプスンを拷問椅子に縛り付け、マクレーンの目の前でイプスンが死ぬところを見せつけようとしていた。そこへオリオン号からトゥーレンヌへ通信が入る。スピーカーからは呼び出しにかこつけてトゥーレンヌのことを口汚く罵るハッソーの声が響く。応答に出たトゥーレンヌにハッソーは語気を荒げて言い放った。「オリオン号にエネルギーを過給した。これがどういうことか知っているな?クルーがオリオン号へ15分以内に戻らなければエネルギーを放出する。イプスンもだ、わかったか?」「聞いている。我が民は……」「聞きたくない!オリオン号は15分で爆発する、コロニーもろともだ。私の時計は秒まで正確だぞ」「オリオン号は力場で閉じ込めてある。我々は……」今度はマリオが大声でトゥーレンヌの言葉を遮った。「クルーが戻って来ない限り15分後に爆破する。以上だ!」苦り切った顔でマクレーンとイプスンを解放するトゥーレンヌ。

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マリオはオリオン号の警備が手薄だったことを疑問に感じたが、ハッソーは我々がまさか脱走するとは思わなかったんだろうとマリオに言った。刻限4分前になって遂にクリフとイプスンがオリオン号に戻り、総員配置についてオリオン号を緊急離陸させるが、以前イプスンのシャトルがそうだったように、オリオン号も上昇途中でスーッと押し戻されてしまった。電磁フィールドがオリオン号の周囲を覆っているのだ。武装用のパワーも無くなっており、あと一回離脱を試みる分しかエネルギーが無くなっていた。エンジンをふかせばふかすほど電磁フィールドに吸収されるという罠であり、逃げられないのが分っているからトゥーレンヌはあっさりとオリオン号のクルーを解放したのである。そこへトゥーレンヌから勝ち誇ったような通信が入る。なぜ我々を解放しておきながらもてあそぶのか、と憤慨するマクレーンに「そこの失礼なエンジニアがオリオン号を爆破させてしまわないためだよ。そこで提案なんだが、私の部下にオリオン号の操縦法を教えてやってくれないかね?かわりに君たちの命は保証する、我々が旅立つとき君たちをこのコロニーに残して行こう」「あなたが約束を守る保証はどこにあるのか?」「君は私を信頼しなければならん」タマラが口添えをする。「受け入れましょう、選択の余地はないわ」渋々認めるマクレーンにトゥーレンヌが冗談で畳みかける。「素晴らしいね!ああ、それから、わざわざ武器を探してくるには及ばんよ、こちらで用意してあるからな」通信が切れてからハッソーがつぶやく。「でも、これがあるんだよな」ハッソーの手元には人質にした警備員から取り上げた光線銃があった。マリオが「ブタ野郎め、これがあるのを忘れてるな」ハッソーから光線銃を受け取ると、タイミングの打ち合わせをしてトゥーレンヌ一行が乗り込んで来るのを待ち構えるマクレーンたち。ところが武装した警備員2人を従えてエレベーターから出てきたトゥーレンヌは開口一番に尋ねてきた。「やあ、友人たち。さっき引ったくっていった銃を持っているのは誰かな?」「……銃だって?」「まじめにやれ。この私を馬鹿にしているのか?銃のことは忘れていないぞ。さ、誰が持っているんだ?」エレベーターから続々と乗り込んで来る武装した男たち。「言えないんなら全員裸になってもらおう。女もだ」マクレーンが懐から光線銃を取り出すと、トゥーレンヌがそれを奪って傍の男に渡す。「デモンストレーションを始めましょう。さぁ、マクレーン司令官どの!」

張りつめた空気の中で乗員とムーラの男が定位置に着き、マクレーンが通常離陸手順の実演を始めながら言った。「おめでとう、トゥーレンヌ。私たちをとりまいている力場は傑作だよ。直径はどのくらいあるんだ?」「なぜ聞く?」「離陸のデモ飛行を力場のぎりぎり真下のところで止めるのさ。これで自動操縦の精度がわかる」トゥーレンヌは傍で自動操縦を学んでいる男に「興味があるか?」と尋ねると「もちろんです、ボス」と同意してきたので「力場の直径は580メートル、頂点は860メートルだ」と答えた。マクレーンはアタンに頂点のアプローチ角を計算するよう指示。アタンは思わず「角度を計算だって?」と聴きかえしたが、それを反抗と誤解したトゥーレンヌが「言われたとおりにやれ!抵抗できると思うなよ」と叱りつける。傍の男が「何のための角度だ?」と尋ねる。「パワーレベリングのためだ。……イプスン、電力交換の概念を使ったことはあるかね?」目を白黒させて答えるイプスン。「は、はい、本で……」トゥーレンヌ「もう十分だ!さっさと始めろ!」マクレーンが再びアタンに振る。「プログラミングの準備はできていますか?」「……できました」マクレーン「司令官より機関室へ、離陸準備!S1フル加速までカウントダウン5秒前!」また傍の男が尋ねる。「S1とは何だ?」「小型の粒子加速器。……あなたの『専門家』は知らないことが多すぎるな」トゥーレンヌ「我々は学ぶためにここにいる」マクレーン「司令官より戦術室へ」「はい」真後ろで声がするので振り向くとマリオがそこにいる。「……なぜまだここに?離陸のために総員配置!」黙って戦術室て向かうマリオ。トゥーレンヌが「止まれ、どこへ行く?」と怒鳴る。傍の男に銃を突きつけられ立ち止るマリオ。「戦術室へ」「なぜだ?」マクレーンが代弁する。「このような宇宙船では最初のフェーズが重要だ。2つの独立したシステムを使用して電力消費を監視するんだが、そのために戦術室からも武装エネルギーを監視する必要がある」やむなくマリオに部下を付き添わせて戦術室へ行かせるトゥーレンヌ。「ハッソー、準備はOK?」「離陸準備完了!」「マリオ、……カウントダウン開始!」トゥーレンヌが意外そうに尋ねる。「それはコンピューターがしたと思っていたが」「よく見ていてください、すぐにわかります!」3……2……1……ゼロ!その瞬間、オリオン号から真上にシャトルが打ち上げられると、地上860メートルあたりで大爆発を起こし、ドームのような磁場フィールドが一瞬ゆらいで見えなくなった。そこへシャトルを追いかけるように上昇していたオリオン号が爆発でフィールドに空いた穴をすり抜けて行った。オリオン号はもう何ものにも引き戻されることなく宇宙空間へと飛び出していた。「今のは何だ、マクレーン?何をしたんだ?」部下に命じて銃を向けさせるトゥーレンヌ。「いま私を殺すのは自殺するのと一緒だぞ。ハッソー、休眠エネルギーオフ!」「完了」「マリオ、全サプレッサーをオン!」途端に激しい振動に包まれるオリオン号。部下たちがひるんだ隙をみて反撃に転じるマクレーンたち。激しい肉弾戦の末、クルーはトゥーレンヌとその部下たちを打ちのめし、人工冬眠送りにしてオリオン号を取り戻した。微力ながらも格闘に参加したイプスンをマリオがねぎらった。「君が作家と同じくらい上手くやれるんなら、見どころがあるぜ」

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オリオン号の帰路、ブリッジにはウィスキーで乾杯して互いの労をねぎらうクルーたちがいた。あの以心伝心のヒントがまだわからないというタマラに、酔っ払ったイプスンが解説する。「簡単でしたよ……もし、シャトルに限界を超えたエネルギーを注入して、力場の頂点へ向けて80度の角度で発射するとですね、互いに相殺し合う2つのフィールドが形成されるわけですね。するとほんの一瞬のあいだ、トラップが口を開ける。そこを狙って……シュッ!」持っていたグラスごと両手を前に伸ばし、グラスの中身が前へすっ飛ぶ。驚きと笑いに包まれる一同。「素晴らしいアイデアさ!」なぜか得意顔のイプスンにマクレーンが笑いながら釘を刺す。「残念だが君のアイデアじゃないぞ」「ああ、そうさ。でも……そうだったかもしれないじゃないか。できれば次の本で使おうと思ってるよ」「ロイヤリティが貰えるなら構わないがね」アタンも「大勢に読まれると思うとドキドキするな!」と上機嫌。だいぶメートルの上ったイプスンはなおも続ける。「ひらめいた!次の小説のヒーローは、私たちみたいに罠を吹き飛ばすぞ」ハッソーがイプスンに言う。「SF小説は純粋なファンタジーだと思ってたんだけど、今回のはリアルだったねぇ。未来について書いてみないのかい?」「もう違うね、君に限って言えば――フィクションを超えた事実だよ!アハハハ、乾杯!」酔いが回ってソファの下へ滑り落ちるイプスン。その上から「これが宇宙旅行者の運命……」と言ってイプソンの頭の上にグラスのブランデーを注ぐハッソー、慌ててその蛮行を制止するタマラ。「ちょちょっと待って。あのぅ、司令官? まず宇宙パトロール本部へ連絡をとるべきじゃないでしょうか。私たちは予定から7日間も遅れています」
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地球当局では外務大臣とスプリングブラウナー、そしてワムスラーがヤキモキしていた。「警報は届いていませんので……」「君は7日間そればかり言ってきた。率直な答えが欲しい。オリオン号はどうなったのだ?」「私は千里眼ではありません。ですが、マクレーンは任務のため17日間連絡が遅れたこともあります。やつは18日目になってようやく現われ、血圧はいかがと笑って私に尋ねよりました」「ひどい冗談だ。彼は瓶を持っていくというのは本当かね」「酒を飲むか、という事ですか?ええ、魚のように」「そうか、わしの義理の息子は酔っ払いの世話をしとるんだな。娘に見られたら……」「ご心配なさらないで。機内に蒸留酒は持ち込めません」
そのとき秘書が執務室へ駆け込んできた。「将軍、オリオン号からの呼び出しです!」秘書が執務室のモニターを操作するとマクレーンの顔が映った。「どこにいたんだ?心配したんだぞ」「ムーラに立ち寄りました」「ムーラ?君への指令は……」「将軍は私の報告書に興味があると確信しております」「マクレーン君、わしの義理の息子はどうしてるかね?」マクレーンは軽く溜息をついてからこう切り出した。「私が最後に彼を見た時、彼は元気でした」「どういう意味だ?わしはすぐ彼と話をしなきゃならん」「それはできません」「なぜだ?わしは引き下らんぞ」「彼はキャビンに横たわっています」「病気なのか?」「いやいや、酔っ払ってべろべろなんですよ。通信おわり!」
思わず吹き出してしまうワムスラー、スプリングブラウナー、秘書の三人。それと対照的に外務大臣は唖然としたまま三人を眺めていた。

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第4話で任務のためにオリオン号へ同乗したシャーコフ教授とは異なり、イプスンは完全な公私混同のトラブルメーカーなので、これまでのオリオン号のクルーの活躍を見てシンパシーを感じてきた視聴者から見ればイプスンは邪魔で苛々する存在だろう。公私混同でイプスンの同乗をゴリ押ししてきた親馬鹿の外務大臣閣下と同様に、身内への異物混入と排除という、長期シリーズがマンネリ化した頃に行なうある意味定番のイベントだが、本作の打ち切りが決まったせいか、惜しみなく投入してきた感がある。流刑地民の反乱もまた定番だが、首魁トゥーレンヌはこれまでのエピソードに見られない純粋な悪役で、クライマックスの格闘もあわせて、どうも今回はいつもと毛色が違うなと思わせるエピソードだった。ハッソーの啖呵もあのトゥーレンヌがたじたじになるくらい凄まじく、過去のエピソードでは直情径行なのはアタンという印象があったのでハッソーに「えっそんなキャラだったか?」と違和感を覚えないこともなかった。
外務大臣からイプスンがオリオン号の女性メンバーと浮気するのではと不安を口にした際、ワムスラーが「へルガはマクレーンに片思いしているし、タマラは女と思われていないから大丈夫だ」と答えるシーンにおいても、とんだ節穴じゃないかと思えてしまう。とはいえヘルガは過去のエピソードでもマクレーンのことを好意的に思っているような節があったりなかったり――無いと言えば嘘になろう。初期設定にはあったけれど活かしきれなかった設定なのかもしれない。タマラはまだ人前でマクレーンにデレたことはなかったから致し方ないだろう。

2019年08月12日

TV 宇宙パトロール・オリオン 全話レビュー/オープニングナレーション

「宇宙パトロール~宇宙船オリオン号の素晴らしき冒険~」OPナレーションに日本語字幕をつけてみた。
直訳ではなく、ナレーターがアテレコする際にできるだけ自然な感じになるよう意訳した部分がある。
(webmではブラウザで正常に再生できなかったためmp4へ変換してみた。)

2019年08月07日

TV 宇宙パトロール・オリオン 全話レビュー/第5話「太陽への戦い」

第五話「太陽への戦い(Der Kampf um die Sonne)」1966年11月22日(土)20:15~21:15放送 視聴率40%
監督:Michael Braun、脚本:Rolf Honold, W. G. Larsen (※5人の共同ペンネーム)

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任務によって小惑星N116aへ向かっていたオリオン号のメンバーは、そこが事前に得ていた情報から全く様変わりしていることに驚いていた。N116aは生物はいないはずだったが、まばらに草が生えているのだ。マクレーンが内心調査したがっているのを察したタマラは自分からハッソーに着陸準備の指示を出す。驚いたハッソーがマクレーンに問い返すので、マクレーンも着陸指示を追認した。
マクレーンとマリオの二人が植物および岩石のサンプルを採取するために船外へ出た。地表は砂と岩場に覆われていたが、所々に水の流れがあり、背の低い草が生えていた。

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地球ではマクレーンから報告が星間バイオコントロール委員会の議題にさっそく取り上げられていた。今季の太陽は例年の2倍のエネルギーを放出する異常活動を続けており、このままでは地球は荒廃の危機に瀕するに違いないが、地球よりもはるかに遠い星にとっては太陽エネルギーの増加によって棲みやすい環境に変わることもある。N116aの環境変化はその兆候と考えられた。諜報部のヴィラ大佐はそれが自然に起きている事なのか、誰かがN116aを地球のような環境に改造しようとしているのかを突きとめなければならないと指摘した。ワムスラー将軍は太陽を人間の手で加熱するなどということができるとは信じられず、人類と敵対するエイリアン――フロッグスの仕業ではないかと発言するが、ヴィラ大佐はフロッグスの本拠を猟犬座のどこかだと考えており、我々の太陽からは遠すぎること、また仮にフロッグス以外のエイリアンの仕業かもしれないにしても、誰が裏で糸を引いているのかをすぐに突き止めなければいけない事に変わりはないと指摘した。重ねてワムスラーが、もしこれが人為的でなく自然現象だったら?と尋ねると、委員会の議長は「人類は移住可能な他の星を探さなければならなくなるだろう」と答えた。

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ワムスラー将軍からの命令でN小惑星ベルトの他の小惑星を調査していたオリオン号は、全ての小惑星でN116aと同じ変化が起き、コケや地衣類の発生を確認していた。そのうち、ある小惑星でハッソーはオリオン号より先に別のシャトルが着陸しているのを発見。ハッソーが止めるのも聞かずシャトルに近づいたアタンは、突然現れた二人組の男からレーザー銃で威嚇されシャトル内に連れ込まれてしまった。ようやくたどり着いたマリオとマクレーンがシャトルの着陸脚をレーザーで撃ち、横転したシャトルからアタンを助け出して二人組の男を拘束した。男は研究に来ていた科学者を名乗ったがそれ以上の事は口を割らず、ハッソーは彼らのシャトルが自分の経験上見たことのないモデルであることをマクレーンに知らせた。

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彼らは地球に送られて脳波の尋問を受け、その結果、彼らは地質学者と生化学者ではあったが、驚くべきことにその出身地は400年前の銀河戦争時で元海王星植民地の反政府勢力が居残ったとされる惑星クロマだったことが分かった。クロマは銀河戦争に敗れた結果地球との交流を断ち、独自の規律と文化を維持しつつ自治を続けてきたのだ。そして彼らの使命もまた、N小惑星ベルトの小惑星に起った環境変化の調査だった。ただ地球人と違うのは、小惑星での植物の発生は太陽放射の影響であることをあらかじめ知っていたことだった。太陽を人為的に活発化させていたのはクロマ人だったのである。アーサー卿はクロマとの戦争を決断した。

地球へ戻ったマクレーンが海底都市の自宅で休養していると、科学センターのスタス博士から緊急電話がはいった。用件はマクレーンが小惑星N116aとN108で集めた岩石サンプルに太陽と同じ物質が含まれていたことから、本当に小惑星で採取したもので間違いないか、という確認であった。質問の意図を訝しむマクレーンにスタス博士は「小惑星を太陽と同じくらいに加熱して活性化させれば新しいエネルギー源となる――おそらく君には関係のない話だが、気になったので」と独りで納得して電話を切ってしまった。マクレーンはワムスラー将軍に連絡を取ろうとするが、重要会議に出席中とのことで秘書に門前払いされてしまう。弱ったマクレーンはタマラに連絡すると、タマラは音声通話だけでモニターのスイッチを入れない。マクレーンが「来客中なのか」と言うとタマラは慌てて「違う、違うの、服を着てないから。お風呂に入ってたから……」と慌てて取り繕うように言う。「冗談だろ?顔しか映らないのに」「でも、顔に何も着てないから……すっぴんなのよ。ちょっと待ってて」しばらくしてモニターにタマラの顔が映った。「……で、火事はどこ?」見ると慌てて着替えたのかバスローブの胸元が大きくはだけている。「い、いや、まだ何も起きちゃいない。でも君の上司に会えないと大変なことが起きるかもしれないんだ」「今からヴィラ大佐に?」「そう、すぐに」「でも彼はいま会議中よ」「だから君の力が必要なんだ。アルファ・オーダー(最優先命令)で頼むよ、30分後にそっちへ行く」ずっと目を閉じたまま話すマクレーン。「この借りは高くつくわよ? クロマに関する決定が今夜決まるって知ってるの?」「まさにその事についてなんだ。じゃ、行こう」「はぁ、わかったわ」「ありがとう。ちなみに、素敵なバスローブだね」「あらそう?」「ボタンをかけ忘れてるとこなんか特に」「!?」

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諜報部でヴィラと面会したマクレーンは、スタス博士の説に基づいて小惑星を小太陽化すればクロマのエネルギー需要に応えることができ、今ある太陽を肥大化させるのを阻止するためのクロマへの軍事行動を不要にできることを説いた。ヴィラはクロマの科学者は狂っており交渉など不可能だと一笑に付す。先の大戦での反政府勢力の末裔であり対等の交渉などありえないというヴィラ。
タマラ「彼らも同じ人間です」ヴィラ「じゃ今回の災いは誰のせいなんだね?」マクレーン「率直に申し上げて――我々の発明が宇宙の他の住人にどんな悪影響を及ぼすか検証した事がありましたでしょうか?」ヴィラ「……君はちょっとした哲学者だな。今じゃ珍しい趣味だ」「……わかってます。今じゃ戦争と平和はコンピューターが決めることだ!」ヴィラ「それは真実じゃない。政府はまだ決断を下していないよ。我々は中央コンピューターがクロマへの先制攻撃を推奨していることしか知らない」マクレーン「火ぶたは将軍に切らせるということですか!?」「違う。それに反対する者がいるからな」タマラ「マクレーンにチャンスをください」ヴィラ「……何をやる気かね?」マクレーン「特別任務をください。2時間でクロマに向います。当局への連絡を」ヴィラ「彼らとは国交がないんだぞ」マクレーン「だから非公式に行なうんです。政府高官や将校では無理ですが、私……つまりマクレーンなら秘密の任務でそれを行なうことができます」ヴィラ「君が上陸前に行方不明になったら?」マクレーン「連れてきた二人のクロマ人科学者も同行させて、彼らにコンタクトをとってもらいます」
ヴィラは一応納得し、話を通すために大臣へ電話をかけ始めた。マクレーンがタマラにオリオン号メンバーの招集とスタス博士の研究の根拠となる書類を手配するよう指示しているうちに、ヴィラが特別任務の手配を整えた。礼を言って出て行くマクレーンをヴィラは呼び止めた。
ヴィラ「君は自己責任で行動すること。万一オリオン号が行方不明になっても我々は関知しない」マクレーン「わかっています」ヴィラ「我々にはもう時間がない」マクレーン「知っています」ヴィラ「君は知らないだろうが、ヒマラヤのダムが決壊したそうだ。それでも政府は、軍の助言に反して待つことにした。とはいえ、これ以上の災害が48時間以内に起これば攻撃開始もやむを得まい。誰も淋しがってはくれないぞ」マクレーン「誰も淋しがりませんよ」ヴィラ「女性士官候補生を除いてはな。……もうひとつ、君は『最後通牒』をしてはならん。脅された彼らがボタンを押すかもしれないからな。どんなボタンを持っているかは我々も知らないのだ」

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クロマへ向けて猛スピードで飛行するオリオン号に、クロマの4隻の宇宙船が接近してきた。刺激したくないマクレーンは力場バリアを展開せず、スピードを落とす。クロマ側との交信の仲立ちに同乗のクロマ人科学者ヴァールハイムをたてて、着陸誘導の指示を受けた。オリオン号はクロマ管制に着陸のための自動プログラムを送るよう依頼したが返事はクロマ語で聞きとれず、ヴァールハイムもニヤニヤと笑うばかり。仕方なく手動で指定座標の自然公園のような所へ円盤を降下させると、今度はクロマから「シャトルにマクレーンとクロマ科学者二人だけを乗せて指定の座標へ来るように」と指示がある。クロマ科学者二人のうち一人はオリオン号に残すと伝えると、クロマ管制もそれでよいとのこと。

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マクレーンはクロマに降り立ってから1時間もの間、広大な庭園の中の官邸に招き入れられるも、美女二人からお茶の接待を受けるばかりで進展が見えず、やきもきしていた。どうやら宇宙飛行士には禁止されている煙草もここでは自由であり、通信器を取り上げられたこともここでは些細な事だと言われる。男性の姿をほとんど見かけないことを尋ねると、ここでは男性は庭師、技術者、科学者、兵士……といった専門家として働いているという。マクレーンが軽く混乱していると、彼女らの上司にあたる女性指導者からオフィスへ来るよう呼び出しがあった。この星では「極めて重要な事項」を女性が担当する女性優位の世界で、太陽を暖めたのは科学者階級である男性の意見だったが、指導者階級の女性はそのことをあまり高く評価していないようであった。マクレーンが実験の中止を求めると女性指導者は席を離れて窓の外を眺め、生き残るためにはもっと太陽エネルギーが必要なのだと語った。かつて地球は権力を欲するために二つの大戦を引き起こしたことから、クロマ人は権力を渇望しないことを学んだ、植民地化も宇宙艦隊も将軍もない平和な世界が望みだ、と言う。闘争に明け暮れる地球が干上がってしまってもそれは仕方ない事だと考えているのだ。クロマ人の歴史も元をたどれば500年と経たない地球人の子孫ではないかと訴えるマクレーンだが、女性指導者は皮肉な言い回しで応じるばかりで埒があかない。業を煮やしたマクレーンは「君たちが地球の価値をのんきに熟考している間にも、地球では氷河が溶け、伝染病が発生し、大災害が止まらない。なのに、どうしてそんな傲慢な態度がとれるのか!?」と声を荒げてしまう。女性指導者はソファに座り直し、「どうぞ、話を聞きましょう、マクレーン少佐」と言う。

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ちょうどその頃オリオン号には諜報部が新しい洪水の発生を暗号メッセージで知らせてきた。それはつまり先制攻撃の始まりを意味し、我々は6時間でここから退避しなければならない。だがクロマはオリオン号の周囲を磁気シールドで覆って脱出できないようにしている。タマラはもう一人のクロマ人科学者と話し合ってみることにした。

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一方、女性指導者はマクレーンを応接室に招き入れ、いい雰囲気にして「岩石サンプルから同じ結果が確認されれば実験を中止しましょう」と言う。「それでは遅いんだ!」と言うマクレーンにムッとして「それは最後通牒?」と突き放す指導者。

地球ではワムスラーが自分の部下であるマクレーンを知らないうちにクロマへ送られたことでヴィラの元へ怒鳴り込んできた。「あなたが自分と同じことをされたらどう思う!?」と食ってかかるワムスラーに「私なら理由を尋ねるでしょう」と答えるヴィラ。「ようし、じゃあ理由を聞こうじゃないか。それから、マクレーンはクロマで何をやらされてるんだ?」「マクレーンは自分からクロマに行きたいと言ったんだ」「なぜ秘密にしたんだ」「その理由もある」「私はてっきりマクレーンは休暇中だと思ってた! そしたらオリオン号がクロマに向ってるというじゃないか! 全て知ってたんだな!?」「そうだよ。私には止められなくてね」「マクレーンを見殺しにする気か!?」「攻撃計画は暗号にして送信してある。ヤジェロフスクは暗号を理解してるから、マクレーンには警告したことになる」「彼が捕まってたらどうする? もし逮捕されてたら……」一拍置いてヴィラが答える。「彼はそのリスクを自分で選んだんだよ」

マクレーンと女性指導者の非公式会談は平行線をたどっていた。説得するマクレーンをさえぎり、聞こえてくる鳥のさえずりに「このナイチンゲールは地球上ではすでに絶滅したものなのですよ」と解説する安気な指導者。

オリオン号では議論の末にタマラとクロマ人科学者がシャトルに乗り込んで地上に降りることになった。

夜になっても説得に進展が見えないマクレーンはついに、クロマが先制攻撃の危機に晒されていることを打ち明ける。ナイチンゲールもまた長生きできないであろうと……。「あなたがまだここにいる間に攻撃をするのですか?」「私は自己責任でここにいます」指導者は地球に「太陽のプロミネンスはクロマからでなければコントロールできません。コントロールを破壊することは、太陽を正常に戻す唯一の方法ですか?」とメッセージを送るという。全てを危険に晒して平然としている指導者に呆れるマクレーン。

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タマラは官邸に着くとクロマ人科学者に銃を向けて彼を脅して連れてこさせた風に見せかけた。その一部始終は官邸の執務室で監視されており、指導者の指示でその様子がマクレーンのいる応接室に映し出される。タマラが乗り込んでくるという予想外の事に驚くマクレーン。指導者はマクレーンの拘留とタマラの逮捕を命じる。マクレーンは指導者に、攻撃をやめさせる唯一の方法は「太陽の実験はすぐに終わる」と伝えることだと訴えた。

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タマラが拘束されている部屋に連れてこられたマクレーンは憤慨するが、タマラはマクレーンに女性指導者が言い寄ってきたか、彼女のことをどう思うか、綺麗だと思うかと言って話がかみ合わない。タマラは自分が嫉妬していることをマクレーンに伝えて自分からキスをする。キスしたことで落ち着くことができた、これまで頻繁に反目し合ったのは無駄だったと語るタマラに今度はマクレーンからキスをする。いつの間にか入室してその様子を見ていた指導者はマクレーンとタマラに実験の中止を地球に知らせたと伝える。「なぜ考えを変えたのか?」と驚くマクレーンに指導者は答える。「我々の実験で地球にどのような影響があったかをあなたが説明した時、私は攻撃の時が迫っており、あなたが時間を迫られていると気づきました」マクレーン「なら、どうして最後の最後まで待ったのか?」指導者「私はあなたたちがここにいるうちに将軍が攻撃を始めるなんて信じたくありませんでした。でもそれは間違いでした。500年前から地球は何も変わっていません。仕方なく分析の結果に期待することにしただけです」
地球に帰れることになったマクレーンは「ありがとうございます。きっとクロマで過ごした時間を懐かしく思うようになるよ」と謝辞を伝えると指導者は「そうなればいいわ。まだ始まったばかりですもの」と答えた。「どういう意味ですか?」「これから惑星間での交渉が長期にわたってあるでしょう? その間の連絡先として、あなたをクロマに駐留させてもらえるよう、地球政府に頼んだのよ。そりゃ正規の外交官であるに越したことはないけど、非公式の外交官でも空気を変えられると思うわ」「いったい私に何をしろと?」「あなたのような有能な人にはやるべきことがたくさんあります。相談、教育、士官の訓練など。たぶん私たちは女性の権威を大げさに考えすぎていたのでしょう。マクレーン、あなたのような男性がいてくれたら、その思い込みを正してくれるかもしれません」指導者が話している間、タマラに睨まれてバツの悪いマクレーン。

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後日、地球の海底サロン・スターライトカジノにて。マクレーンを除いたオリオン号のメンバーを前にして、大笑いしてみせているワムスラー。アタン「それで、宇宙軍の幹部陣は何と言ったんですか?」ワムスラー「みんな私たちのように笑ったよ。マクレーンはついてるな!」ヘルガ「それのどこが面白いの? マクレーンがさせられる事を誰か知ってるの?」ワムスラーは「彼らに何ができる?」といってまた笑う。ハッソー「交渉にはどのくらい時間がかかると思いますか?」ワムスラー「それはマクレーンがいつまで耐えられるかによるな! ……中尉、その場にいたんだろ。彼女はマクレーンに恋してると思うかい?」タマラ「熟女の心の中なんて私にはわかりませんわ」ワムスラー「若い人だっているよ?(爆笑)」憮然としているタマラ。マリオ「何で僕をとばすかな。彼女は連絡員を選ぶ前にクルー全員と会ってるはずなのに」ヘルガ「それじゃあなたは今頃クロマにいたと思う?」真顔で「他に誰が?」と返すマリオ、大笑いするヘルガ。仏頂面のマリオとタマラを除いて、笑いに包まれるオリオン号の男たち。

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タマラがもうすっかりデレである。冒頭、N116aの変化を不思議がるマクレーンたちのところへタマラが何と冗談を言いながらやってくる。以前ならこんなことはなかったはず。マクレーンに対するタマラの口調も柔和で、笑顔で話している。「あれ?こんな役柄だったかな?」と戸惑うが、続いてタマラが内線でハッソーに着陸指示を出すときは今までの毅然とした軍人口調になり、オンオフの差にびっくりする。テレビ電話での会話といい、クロマで拘留されてからのマクレーンに対する嫉妬といい、第5話で急にタマラのキャラがブレるので調子狂っちゃうなという印象のエピソードだった。N小惑星ベルトの詳細は不明だが、クロマ人が海王星植民の末裔であることからエッジワース・カイパーベルト天体をイメージしているのかもしれない。クロマの太陽Xun-1が弱体化したため地球の太陽の熱量を増加させて補おうというというアイデアは面白いながらも少々荒削りすぎてすぐには納得できない。ドイツ本国で2度出版されている資料全集があれば設定がわかるのかもしれないが、この手の洋書は例外なく少々どころでないお高さなので、あまりこだわらないほうがよさそうだ。
クロマ人科学者がレーザーでアタンの足元の地面を撃つシーンや、マリオが長距離からクロマ人のシャトルの着陸脚を撃ち抜いて実物大シャトルのセットが崩れ落ちるシーンの特撮が見もの。
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