2021年04月30日

ジェット・ジャクソン(Jet Jackson, Flying Commando) 放送リスト

「Jet Jackson, Flying Commando」は1954年9月9日〜1956年1月21日にかけてアメリカCBSで放映された全39話から成る冒険テレビシリーズである。日本ではKRT(ラジオ東京テレビ、現:TBSテレビ)が「ジェット・ジャクソン」の邦題で1957年4月から翌58年1月まで9ヵ月に亘って放送した。製作は数多くのハンナ・バーベラ製アニメやホームコメディ番組を配給したことでも知られるスクリーン・ジェムス(Screen Gems)。

本作を動画検索すると内容がほとんど同じであるにも関わらずタイトルが「Jet Jackson, Flying Commando」となっているものと「Captain Midnight」となっているものが見つかるが、このようなバージョン違いが生じた理由について簡単に説明していこう。JetJackson_01.jpgJetJackson_02.jpg

まず、この番組はもともと1938年から1949年まで続いた戦前の大人気ラジオドラマ「Captain Midnight」がベースになっている。本作の主人公ジム・オルブライト大尉は元・第一次大戦のエースパイロットで、かつて過酷なミッションをやり遂げ深夜12時の鐘とともに帰還したことから「キャプテン・ミッドナイト」との異名で呼ばれている。第二次大戦を前に組織された民兵組織シークレット部隊にスカウトされ、日夜スパイや傭兵部隊からアメリカを守って戦うという筋書きだ。シリーズを通しての敵は国際傭兵組織の首領イヴァン・シャークとその一味だったが、ラジオドラマ放送中に太平洋戦争が始まるとナチスのフォン・カープ男爵や日本海軍のヒマキト提督といった枢軸国側とも戦うことがあった。このイヴァン・シャークは後のTV版にも登場している。また当時アメリカの子供たちの間で流行っていた暗号解読バッジ(Secret decoder ring)が本作でも「コードオーグラフ(Code-O-Graph)」という名のスポンサーノベルティとして配布され、これをを使ってドラマ劇中の暗号を解読すると次週の展開のヒントがわかるというリスナー参加型のギミックが大いに受けた。子供向けの冒険活劇ではあったが、愛聴者の半数は大人が占めていたとも言われている。

1942年にはデイブ・オブライエン主演で全15回からなる連続活劇映画も作られた。これは戦後「Captain Midnight's Adventure Theatre」という枠名で1953年から翌1954年にテレビ放送されたが、その後を受けて始まったのがリチャード・ウェッブ主演の新作テレビドラマシリーズ「Captain Midnight」である。こちらもまたリアルタイムの世相を反映し、キャプテン・ミッドナイトの来歴は元・朝鮮戦争で活躍したエースに変更。その他のレギュラーにオラン・ソウル演じるシークレット部隊の頭脳「アリストテレス・ジョーンズ博士」(通称タット博士)、シド・メルトン演じる三枚目のメカニック・マン「イカボッド・マッド」(通称イッキー)を加え、ひとたび事件が起これば丘の上のドーム型秘密基地から最新鋭機ダグラスD-558-2スカイロケット「シルバーダート号」で駆けつける、科学時代のニュー・ヒーローへと衣替えした。もちろん視聴者向けの暗号解読コーナーも健在で、ラジオドラマ時代からスポンサーをつとめるワンダー・カンパニーの麦芽飲料オーバルティン(Ovaltine、日本では1977年9月にカルピス食品工業が「オバルチン」の商品名で発売したことがある)を買って瓶の内蓋シールを送ると暗号解読バッジを貰うことができた。

……ちっとも簡単な説明じゃありませんでした。端折りますけどここからが本題です。

CBSでの放映を終えた「Captain Midnight」は1958年までにシンジケーションを通じて番組販売されることが決まっていたが、「Captain Midnight」という名称の権利は旧スポンサーであるワンダー・カンパニーがガッチリ握っていた。困ったスクリーン・ジェムスは主人公の名前を変更することを決意、セリフにある全ての「Captain Midnight」を「Jet Jackson」に吹き替え直し、タイトルボードを「Jet Jackson, Flying Commando」に差し替えた(もちろんオーバルティンのCMを兼ねた暗号解読コーナーもカット)。

こうした紆余曲折を経て日本でも放映されるようになったものが「ジェット・ジャクソン」というわけである。放送枠は毎週土曜の19:30~20:00、秋季改変期の第25話からは30分繰り上がって19:00~19:30となった。声の出演は真木恭介(ジェット・ジャクソン)、緒方敏也(タット博士)、太宰久雄(イッキー)。タット博士とイッキーの声優は逆かもしれない。誤りがあったら挙証資料を添えてコメント欄からご教示ください。

米国では全39話だがKRTでは3本も再放送する余裕があるにも関わらずトータル38話分しか放送されていない。これはおそらく米国版第35話(S2E9)「The Jungle Pit」がKRT放送時には欠番とされたためではないかと思われる。「The Jungle Pit」はジェット・ジャクソン(=キャプテン・ミッドナイト)とイッキーが行方不明の父親を探す日本人青年ジェリーに協力する話で、旧日本兵だった父キサノは今も太平洋の島に隠れ続けているという設定。ジェリー役はDominique De Leon、キサノ役はKazuo Togo=グレート東郷が演じた。JetJackson_03.jpgJetJackson_04.jpg

【1957年】19:30~19:00 枠 
1 04/13 放射能元素0
2 04/20 消えたロケット
3 04/27 誘導弾X
4 05/04 足のない幽霊
5 05/11 魔境に戦う
6 05/18 氷点下の恐怖
7 05/25 ダイヤモンド密輸団
8 06/01 ファラオの呪(のろい)
9 06/08 贋造紙幣
10 06/15 失われた人工衛星
11 06/22 鉄格子の裏の謀略
12 06/29 空をゆく密使
13 07/06 秘密の島
14 07/13 地下室の謎
15 07/20 電気博士の恐怖
16 07/27 狂人博士と殺人音波
17 08/03 爆弾魔の復讐
18 08/10 大森林の秘密
19 08/17 見えざる恐怖
20 08/24 人工台風
21 08/31 北極上空の謎
22 09/07 ねらわれた新兵器
23 09/14 十代の犯罪
× 09/21 (※ボリショイ・バレエ団「コッペリア」公演中継番組のため中止)
24 09/28 恐怖の脱走
25 10/05 秘密の部屋(※これより19:00~19:30 枠に移動 )
26 10/12 謎の根拠地
27 10/19 死の短剣
28 10/26 冷凍人間
29 11/02 原爆スパイ団
30 11/09 海底の宝石
31 11/16 潜入者
32 11/23 迷信の山
33 11/30 火の山
34 12/07 百万ドルのゆくえ
35 12/14 失われたスーツケース
36 12/21 ダイヤモンドの秘密
37 12/28 死のロケットパイロット

【1958年】
38 01/04 白昼の誘拐
EX 01/11 人工台風(※第20話の再放送)
EX 01/18 失われた人工衛星(※第10話の再放送)
EX 01/25 ファラオの呪(※第8話の再放送、「最終回」の表示あり)
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2021年03月28日

縮小人間ハンター(World of Giants) 放送リスト

1950年代にSFテレビドラマ「空想科学劇場(文春S・F劇場)」「宇宙探検(宇宙パイロット/マッコーレー隊長/宇宙にいどむマッコーレー)」を製作した米ZIVプロダクションは、もうひとつSFテレビドラマ史において特筆すべき作品「World of Giants」を世に送り出している。番組のオープニングコールから「WOG(ウォグ)」と呼ばれることもあるこの作品の邦題は「縮小人間ハンター」という。思いがけない事故で体が6インチの大きさに縮小してしまった主人公メル・ハンターがその隠密性を活かし政府の防諜エージェントとして活躍するという筋書きだ。

特筆すべき――というのは、この「縮小人間ハンター」が“思いがけない事故で特異体質になった主人公が、その能力を活かしてヒーローとなる”という設定に関係している。今でこそありふれたプロットではあるが、テレビドラマ黎明期においては1940年発表のアメコミ作品「グリーン・ランタン」が該当するくらいで、それ以前のヒーローといえば使命のために自らを鍛え抜いたマッチョ・ヒーローか、スーパーマンのような生まれつきのヒーローだけがSFドラマの主人公となっていた。一方、何らかの事故で突然変身したり超能力を身につけたごく普通の人間は、その力を犯罪や破壊に使うようになってしまうものとして描かれることが多かった。「ジキル博士とハイド氏」「透明人間」といった古典はもちろんの事、1955年「原子人間(The Quatermass Xperiment)」、1957年「戦慄!プルトニウム人間(The Amazing Colossal Man)」、1959年「4Dマン(4D MAN)」と当時の怪奇SF映画では枚挙にいとまがない。
ところが従来悪の存在であった透明人間が1958年に英ITP/OF製作のテレビドラマ「透明人間(H.G. Wells' Invisible Man)」でははじめて政府機関のエージェント――つまり“正義の味方”として描かれ(手放しに政府機関の一員となるわけではなく、第一話でいろいろと駆け引きがあるのも良く出来ている)、また1957年の映画「縮みゆく人間(The Incredible Shrinking Man)」では事故の被害者にすぎなかった縮小人間も1959年の本作「縮小人間ハンター」で透明人間同様に政府機関のエージェントとなって活躍することになった。悪人や怪物とみなされていた特異体質人間が「透明人間」「縮小人間ハンター」では一転して正義の味方になるという、「デビルマン」的パラダイムシフトが起きたのである。以後1961年「ファンタスティック・フォー」1962年「スパイダーマン」1968年「電撃スパイ作戦」1973年「600万ドルの男」1976年「ジェミニマン(TV)」etc.……と“思わぬ事故で超能力を得たヒーロー”というジャンルが連綿と続いていくのはご存知の通り。

ところがこの「縮小人間ハンター」、何かどうウケなかったのかアメリカ本国では13話しか作られなかった。米Wikipediaには「Not a success(成功しなかった)」としか紹介されておらず、原因に言及できるだけの情報が記されていない。(※"American Science Fiction Television Series of the 1950's: Episode Guides and Casts and Credits for Twenty Shows"という本にWOGの記事が若干あるようなので、翻訳して何か有益な情報が見つかれば後日追記する。)

現在、米本国でもDVDは発売されていないようだが、Youtubeに第1話「Special Agent」と第13話(最終回)「Off Beat」がアップロードされており、ある程度の内容を窺い知ることができる。第1話「Special Agent」は第一話であるにも関わらず縮小人間の誕生編ではなく、既にエージェントとなったメル・ハンターが任務を受けるところから始まるようだ。メルが縮小人間となった経緯は冒頭のナレーションで語られるだけらしい。現在の目で見ると、メルが鞄で運ばれるところからは1969年の英センチュリー21作品「ロンドン指令X(The Secret Service)」が、猫に襲われる場面からは1968年米アーウィン・アレン・プロ作品「巨人の惑星(Land of the Giants)」が、巨大な電話機の受話器を外して必死でダイヤルを回すシーンからは「ウルトラQ」の「1/8計画」が想起させられる。1957年の映画「縮みゆく人間(The Incredible Shrinking Man)」はもちろんの事、シーンによっては1940年の映画「Dr. Cyclops」を連想したりするかもしれない。巨大な人間と小さな人間がひとつの画面の中で動き回るモノクロ特撮の絵面は見ているだけでも楽しいものだ。
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日本では日本教育テレビ(NET、現:テレビ朝日)で1960年9月17日から毎週土曜19:00~19:30に放送されたが、10月15日の第5話をもって何の終了表記もなく消えてしまっている。日本で放送された際のサブタイトルと、そこから推測されるあらすじを持つWOGの各エピソードとを突合してみると、日本で放送した5本はWOGの第6話および第9~12話に該当するようだ。おそらく日本教育テレビでは最初から全話を放送するつもりはなく、この枠でレギュラー放送していたZIV製作の人気海外ドラマ「バット・マスターソン(Bat Masterson)」に1ヵ月の穴が開いたため、繋ぎとして同じZIV作品の「縮小人間ハンター」を買い付けたのだろう。「空想科学劇場」や「宇宙探検」のように他局で全話放送されたかについては今のところ調査できていない。声の出演は鷲見光保、大宮悌二、翠潤子ほか。

【1960年】19:00 枠
1 09/17 秘密薬品の行方 ……WOG#06「Chemical Story」
2 09/24 落下点へ急げ ……WOG#09「Rainbow of Fire」
3 10/01 人体密輸船 ……WOG#10「The Smugglers」
4 10/08 ニセ札 ……WOG#11「Unexpected Murder」
5 10/15 迫り来る悪魔 ……WOG#12「Panic in 3B」

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2021年03月25日

宇宙戦士コディ(Commando Cody: Sky Marshal of the Universe=ロケットマン・コディ) 放送リスト

「Commando Cody: Sky Marshal of the Universe」はアメリカで1953年に劇場で先行上映されたのち1955年7月16日〜10月8日にかけてNBCで放映された全12話から成る連続SFテレビドラマシリーズである。

日本では「宇宙戦士コディ」の邦題で、1958年にNET(日本教育テレビ、現:テレビ朝日)で放送されている。海外ドラマ史を取り上げた文献の中には「ロケットマン・コディ」という邦題で紹介しているものもあるが、この2つの邦題は「NETでの本放送タイトル」と「他局での放映タイトル」という関係ではない。
まず、NETで本放送が始まった当初、邦題は下記の新聞記事でも紹介されているとおり「宇宙戦士コディ」となっていた。
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わが名は“宇宙の保安官” NETテレビ「宇宙戦士コディ」
NETテレビ きょう午前11時からは、新番組・米テレビ映画「宇宙戦士コディ」。“宇宙の保安官”コマンド・コディの活躍をえがく空想冒険物語だ。
今夜の第一話は「宇宙の敵」。コディ(ジュト・ホールデン、声・青野武)は、地球を侵略しようとする宇宙の敵と戦うため新型ロケットの建造をはじめた。技術者のテッドとジョーンは、司令官ヘンダーソンの許可でコマンドといっしょに働くことになる……。

写真:熱線銃で活躍するコディ(ジュト・ホールデン)と助手ジョーン(アライン・タウン)

ところが本放送第4話から突然タイトルが「ロケットマン・コディ」に改題され、以後NETでの再放送は全て「ロケットマン・コディ」に統一されて現在に至るという次第である。改題の理由はわからないが、あえて邪推するならば……まだ戦争の記憶も残る時代でもあり「戦士」という直訳由来の単語を誇らしく番組名に使うのは教育番組専門局として放送免許を受けた「日本教育テレビ」には相応しくない、と判断されたのかもしれない。
吹き替えでは主人公コディを青野武、ジョーンを前田敏子、テッドを愛川欽也が演じている。

ストーリーについては改めて触れるようなものもない典型的な連続活劇であり、登場する宇宙人の容姿も中世の騎士のようでアナクロ感を拭いきれない。しかし実景と見比べたときに違和感をおぼえにくいというモノクロ特撮のメリットが効果的に発揮されていることは特筆に値する。
たとえばロケットパックを背負ったコディ(の人形)が矢のような一直線でオープンセットの空を飛んで行き、また別の回では光線砲を受けた岩山がグニャグニャに溶けて曲がっていく。実景のつもりで見ていると突然ありえない光景が目の前に現れて「えっ?」と驚く、そんな心地よい混乱を体験できる理想的なセンス・オブ・ワンダーを内包した痛快娯楽SF作品と評してよいだろう。

【1958年】朝 11:00 枠 ※ちなみにアメリカNBCでの本放送も朝11時枠であった。
題名「宇宙戦士コディ」
1 07/14 宇宙の敵
2 07/21 ロケットを盗め
3 07/28 遊星人の逆襲

題名「ロケットマン・コディ」(以後、全話を「ロケットマン・コディ」に統一)
4 08/04 暴風雨作戦
5 08/11 敵ロケットを逮捕せよ
6 08/18 黒い太陽
7 08/25 怪物ロボット現わる
8 09/01 月の基地を爆破せよ
9 09/08 太陽を撃て
10 09/15 北極の嵐
11 09/22 水星を探検せよ
12 09/29 支配者を逮捕せよ

【1958年】夕方 18:15 枠(前番組「アラーの使者」と後番組「狼少年ケン」の繋ぎ)
再1 10/14 宇宙の敵
再2 10/21 ロケットを盗め
再3 10/28 遊星人の逆襲
再4 11/04 暴風雨作戦
再5 11/11 敵ロケットを逮捕せよ
再6 11/18 黒い太陽

【1959年】夕方 16:30 枠
再7 01/06 (サブタイトル不明)
再8 01/13 (サブタイトル不明)

なお本作を語る上ではリパブリック・ピクチャーズがかつて製作した“砲弾型ヘルメットをかぶり背中にロケットを背負って空を飛ぶヒーロー”の登場する連続活劇映画「King of the Rocket Men(1949年6月公開)」、「Radar Men from the Moon(1952年1月公開)」、「Zombies of the Stratosphere(1952年7月公開)」といった各作品についても紹介するべきだが、これらは日本未公開作品であり、当時テレビを見ていた日本の視聴者は他の映画との関係など知らず宇宙戦士コディの活躍だけを楽しんでいたことであろうから今回は取り上げない。
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2021年03月05日

イギリスCFF製作SFテレビ映画「宇宙人カドイン」「金星から来たミーバ」「宇宙から来たボール」

子供のころ、夕方にNHKで不思議な海外ドラマが放送されているのを偶然見たことがある。子供向けののどかな宇宙人モノなのだが、宇宙人の頭から生えた肉質のネギ坊主が食事中のお母さんの方に向かって動くシーンや、底なし沼のようになった芝生に人間が顔まで埋まってしまうシーンがトラウマのように焼き付いて十数年経っても脳裏から消えなかった。大学生になって併設図書館の書庫に入り浸るようになると新聞の縮刷版を手繰る楽しさを覚え、ふとあの番組はいったい何だったのか探してみようと思いついた。タイトルどころか何年何月のことかもわからないので、自分が物心ついたころにあたる数年分のテレビ欄の全ページを片っ端から探してまわった結果ついに「これに違いない!」という番組を特定することができた。それはイギリスの児童劇映画財団「Children's Film Foundation」(略称CFF)が1972年に製作・放映したSFテレビ映画「Kadoyng」で、日本ではNHK総合テレビが「宇宙人カドイン」という邦題で1973年12月31日(月)――つまり大晦日の18:00~18:50に放送していたものだった。

大まかなストーリーを掻い摘んで紹介しよう。
イギリスの小さな村で農業を営むバルフォー家の3人の子供たち、長男のビリー・長女のルーシー・末っ子のバーニーは林の入口に不時着している巨大なタマゴ型の宇宙船を発見、中から出てきたちょっとトボケたヒッピー風の宇宙人・カドインと友達になる。惑星ストイカルの住人であるカドインは見た目は地球人にそっくりだが、頭のてっぺんからネギ坊主のような触角が生えていて、瞬間移動や人間を自由に操る超能力を使うことができた。ルーシーが持ってきたシルクハットで触角を隠したカドインは、地球人のふりをしてしばらくバルフォー家に住むことになった。
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そのころ彼らの村にはひとつの問題が立ち上っていた。地元の政治家が不動産業者と組み、広場に高速道路を通すというのだ。バルフォー一家は高速道路に反対する村民の代表で、推進派との公開討論会を控えている。ちなみに政治家の息子とその取り巻きはふだんからビリーたちをいじめているイヤなやつ。バルフォー夫妻に協力することになったカドインは、公開討論会の傍聴席から推進派にこっそり超能力をかけて発言をめちゃくちゃな言葉に変えて妨害活動を行なったが、むなしくも高速道路の建設は決定してしまった。
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こうなったら最後の手段、植物を一晩で巨大に育てるコンキーという薬を広場に撒いて巨木だらけにし、工事を邪魔するしかない。起工式を明日に控え宇宙船の自立型コンピューターに相談して薬品の調合方法を調べるカドインだったが、猛烈な睡魔が襲ってきて頭がうまく回らない。困ったバルフォー一家はカドインの補佐となって薬品作りを行ない、夜が明けないうちに一家総出で広場に薬品を撒いて回った。
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翌朝、広場では政治家やその息子、不動産業者たちが集まってセレモニーが始まった。固唾をのんで見守るバルフォー一家だったが、テープカットが始まっても何も生えてくる様子はない――と、そのとき政治家たちの足元の芝生がグズグズと柔らかくうねり始めた。まるで底なし沼のようになった芝生は、その場にいた政治家や息子や不動産業者を地面の中に飲みこんでいくではないか。驚いたカドインがルーシーにどうやって薬を作ったか聞きだし、さらに驚いて叫んだ。「そりゃコンキーじゃない、スロンキーの作り方だ! スロンキーは何でもグニャグニャにしてしまう薬なんだ……」
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後日、高速道路計画は撤回され、カドインは広場を元に戻すために改めてコンキーを作り直した。ところが広場の入り口に入るとき、バーニーが気を利かせて有刺鉄線を持ち上げようとしてくれたのにカドインはちゃっかり瞬間移動で広場内に入ってしまう。ムッときたバーニーがカドインの尻を叩くと、びっくりしたカドインはコンキーをその場にこぼしてしまった。コンキーを被った草はたちまち見上げるような巨木に早変わり。たまたま自転車で巡回中だったお巡りさんは目の前で伸びていく巨木に仰天、転倒して腰を抜かしてしまう。それを見て気まずそうにそそくさと帰っていくカドインとバーニーだった……

原作・脚本および主人公カドインを演じたのはレオ・マグワイア(Leo Maguire、声:富山敬)。三兄弟の長男ビリーをアドリアン・ホール(Adrian Hall、声:沢村正一)、長女ルーシーをテレサ・コドリング(Teresa Codling、声:関口奈緒美)、末っ子のバーニーをデビッド・ウィリアムス(David Williams、声:内海敏彦)が演じた。監督:イアン・シャンド。
ちなみにカドインが着ている宇宙服は「謎の円盤UFO」で宇宙人が着用している宇宙服のうちの1つを流用していることでも知られている。

今回DVDを見返しながら記憶の細部を補完してあらすじを書いてみたが、50年ちかく前に一度見たときの記憶とだいたい合っていたのには驚いた。それほど子供心にも記憶に残るような作品だったということだろう。本作の映像ソフト化はビデオテープ草創期にβとVHSで発売された事はあるが、絶版になってからはソフト化の機会に恵まれず再見することができなかった。しかしCFF作品を管理している英国映画協会「British Film Institute」(略称BFI)は近年になって協会が保管する映像作品の再評価に積極的となり、「Children's Film Foundation Collection」と銘打って過去の作品を次々とリリースするようになった。そして2014年、CFFの代表的なSF作品をカップリングしたDVDシリーズ第6弾「OUTER SPACE」に「宇宙人カドイン」が晴れて初DVD収録されるに至ったのである。よって今では手軽に鑑賞することができるのだが――イギリス版DVDなので映像規格がPALであることや、字幕が含まれていないなど、日本のファンが視聴するにはまだまだハードルが高い面がある。なんとかNHKで当時の日本語吹き替え版を再放送してもらえないものだろうかと切に願っている次第。上記あらすじも私が日本語吹き替え版で視聴したのが50年近く前なので、ストーリーはともかく台詞まわしはもうほとんど記憶の彼方になっており、せいぜいカドインの頭に生えている触角のことをバルフォー一家が「タマネギ」と呼んでいた事くらいしか覚えていない状態だ。従って聞き取りミスや思い違いが含まれている可能性があるので気の付いた方はコメント欄から御指摘をお願いしたい。
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さて2014年発売のDVD「OUTER SPACE」には「宇宙人カドイン」の他にもCFFが製作した子供向けSFテレビドラマが2本収録されているが、こちらも「宇宙人カドイン」と同様にNHK総合テレビで日本語吹き替え版が放送されているので放送履歴を簡単に紹介しよう。

ひとつは1956年作品「Supersonic Saucer」。これは劇映画「E.T.」を先取りしたような作品で、空飛ぶ円盤に変身できる宇宙人の子供ミーバを操り人形を使って演じ、生身の子役俳優たちと絡ませるという独創的な方法で撮られた。例えるならアメリカのSFコメディ「アルフ」のような作品だが、ミーバの外見が何となくベールを被った中東の女性っぽい出で立ちなので(ただしミーバは男の子らしい)、私は「透明ドリちゃん」の主人公青山ミドリと水の精との絡みを連想した。
日本ではイギリス放映から10年後の1966年8月15日(月)、13:25~14:15に「金星から来たミーバ」のタイトルで放送されている。ミーバと交流を結び誘拐犯から彼を守る少女スマックをマルシア・マノルシュ(Marcia Manolescue、声:陳嘉子)が、同じくグレタをギリアン・ハリソン(Gillian Harrison、声:松尾佳子)が、堅物の少年ロドニーをフェラ・エドモンズ(Fella Edmonds、声:野中繁夫)が演じた。原作:フランク・ウェルズ、脚色:ダラス・バウアー、監督:S・G・ファーガソン。

もうひとつは1977年作品「The Glitterball」、ボールのような宇宙生物の活躍をコマ撮りアニメーションで活き活きと描いた。日本のマンガや特撮でいうと「星雲仮面マシンマン」のボールボーイのような感じか、手足がない点でいえば益子かつみの「怪球Xあらわる!!」のほうが近いが「The Glitterball」はそこから更に目もアンテナもないただの銀のボールに見える。
日本ではこれまたイギリスから遅れること4年後の1981年4月29日(水)、17:05~17:55に「宇宙から来たボール」の邦題で放送されている。主人公マックス・フィールディング役をベン・バックトン(Ben Buckton、声:小山渚)、ピート役をキース・ジェイン(Keith Jayne、声:大見川高行)、ジョージ役をロン・ペンバー(Ron Pember、声:大泉滉)が演じている。原作・脚本:ハーレイ・コークリス、ハワード・トンプソン、脚色:ハワード・トンプソン、マイケル・エイブラムス、監督:ハーレイ・コークリス。

DVD「Children's Film Foundation Collection vol.6 OUTER SPACE」ではこれら3作品が現存する35mmインターポジフィルムを元に(音声は「宇宙人カドイン」のみ光学トラック、他の2本はシネテープを使用)デジタルリマスタリング処理を経て収録されており、ハーレー・コークリス監督、BFIプロデューサーのアレックス・デビッドソン、BFI映像キュレーターのヴィック・プラット、ウェールズ大学映像文化上級講師のロバート・シャイルらによる詳細な解説書が付属している。

子供のための映画を専門に数多く製作したCFFには他にも1962年のテレビシリーズ「Masters of Venus」などSFドラマがいくつか存在するようだが日本で放送されるケースはあまりなかったようだ。少年ドラマシリーズにCFF作品が含まれていないだろうかとアスキー出版局刊「NHK少年ドラマシリーズのすべて」巻末の放映番組リストを眺めてみたが、米英仏豪いくつもの国の数多くの制作局から番組が取り寄せられており、CFF製作の作品は含まれていないようだった。CFFは1947年から児童映画を製作しているが、私が見落としていなければ、NHK総合テレビではじめて放送されたCFF作品は1962年12月31日(月)11:00~11:55に放送された「空飛ぶテレビ」(1955年作品「The Flying Eye」)だと思われる。Youtubeで見ることができる冒頭5分の番組紹介映像を見た印象では模型飛行機に超小型テレビカメラを取り付けて空撮する話らしく、各国の動画視聴者から「幼い頃に見た」「懐かしい、DVD化してほしい」「1955年型ドローンだ」と数多くコメントを集めていた。日本での声の出演は松島ミノリ(現:松島みのり)、中野慶子、古賀浩二。

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2021年01月27日

空想科学劇場(Science Fiction Theatre =文春S・F劇場) 放送リスト

NHK版「宇宙探検」の放送リストを紹介したとなれば、「空想科学劇場」の放送リストも紹介せねばなるまい。

初期の海外ドラマの書籍ではよく「ハイウェイ・パトロール」と一週交替で放送されたことが紹介されているが、実際そのように放送されたのは最初の半年間(第1話~第13話まで)だけで、その後は放送枠を変更して毎週放送となっている。といっても曜日は当初の火曜から金曜・水曜・木曜と度々変わり、時刻も午後7時から午後10時まで様々だった。中断となる週も多く、リアルタイムで全話コンプリートできた視聴者は数えるほどしかいないのではないだろうか。

放映リストを比較してもらえれば判るとおり、放映順はアメリカオリジナル版・NHK版・東京12チャンネル版いずれも異なっている。ブログだと表作成に手間がかかるので、3バージョンの突合はそのうちホームページのほうで紹介するつもりだ。

なお第10話「蜜蜂博士(The Strange Dr. Lorenz)」はNHKクロニクルでは「蜂博士」となっているが誤記と判断して改めた。朝日新聞では朝刊・夕刊とも「蜜」表記になっている。NHKクロニクルは放送番組確定表を底本としているそうなので、転記ミスまたは底本に含まれる誤記であろう。
また第54話「砂漠の怪自動車(The Phantom Car)」はNHKクロニクルおよび朝日新聞朝刊で「砂漠の自動車」となっているのだが……当該エピソードの中で爆走するこの無人車はどう控え目に言っても軽自動車には見えない。どうやら「軽自動車」というのはNHKが新聞各社に配った原稿の段階で含まれていた誤字らしく、その証拠に朝日新聞は誤りに気付いたのか夕刊のテレビ欄でサブタイトルを「怪自動車」に改めている。
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【1956年】
1 10/02 明日の世界から來た男
2 10/16 謎の磁気円盤
3 10/30 死の実験室
4 11/13 脳細胞の奇蹟
5 11/27 殺人者の声
6 12/11 猿の読心術
× 12/25 (歳末プログラムのため中止)
7 12/22 凍った音
【1957年】
8 01/15 甦える鼓動
9 01/29 海底都市
10 02/12 蜜蜂博士
11 02/26 ピラミッドの秘宝
12 03/12 午前二時の死
13 03/26 第三遊星人
14 04/09 泡の中の謎
15 04/12 沈黙の壁
16 04/19 野性の少年
17 04/26 陰電気を帯びた男
× 05/03 (GWプログラムのため中止)
18 05/10 月の裏側
× 05/17 (舞台中継のため中止)
19 05/24 人間改造ホルモン
20 05/31 恐怖の人工太陽
× 06/07 (中止)
× 06/14 (プロ野球毎日×西鉄戦中継のため中止)
21 06/21 生きかえるマンモス
22 06/28 火星旅行計画
23 07/05 透視する脳細胞
24 07/12 白アリの洞穴
25 07/19 台風警報
26 07/26 二世紀を生きた男
27 08/02 防彈人間
28 08/09 葉緑体の殺人
29 08/16 時間を盗む男
30 08/23 恐怖の盲目飛行
31 08/30 地層にひそむ謎
32 09/06 深夜の怪光線
33 09/13 姿なき科学者
× 09/20 (舞台中継のため中止)
34 09/27 水を作る男
35 10/04 殺人方程式
36 10/11 影なき送信機
37 10/18 宇宙博士の訪問
38 10/25 北極の怪信号
39 11/01 人間革命
40 11/06 霧の夜の怪電波
41 11/13 夢遊殺人
× 11/20 (オペレッタ中継のため中止)
42 11/27 冬眠療法の奇跡
43 12/04 緑の爆弾
44 12/11 宇宙から来た手紙
45 12/18 姿なきウラニウム
× 12/25 (クリスマスプログラムのため中止)
【1958年】
× 01/01 (正月プログラムのため中止)
46 01/08 この男は誰だ
47 01/15 明日の終り
48 01/22 ICBMの秘密
49 01/29 人工細胞
50 02/05 心臓からの通信
51 02/12 読心機械
52 02/19 円盤の謎
53 02/26 陰よりの声
54 03/05 砂漠の怪自動車
× 03/12 (舞台中継のため中止)
55 03/13 殺人光線
56 03/19 魔法使いのこどもたち
57 03/26 生きている光
58 04/02 染色体の秘密
× 04/09 (中止)
× 04/16 (中止)
59 04/17 宇宙での一夜
60 04/24 暗やみの中の顔
61 05/01 高速度頭脳
62 05/08 宇宙ロケット追跡
63 05/15 指紋殺人事件
× 05/22 (中止)
× 05/29 (中止)
64 06/05 “赤い幽霊谷”の火
65 06/12 人間機関車
66 06/19 魔の大木
67 06/26 電波伝染病
68 07/03 テレビで消えた男
69 07/10 魔法のトランク
70 07/17 犯人透視機
71 07/24 悪夢の瞬間
72 07/31 人造医師
73 08/07 金庫の中の奇跡
× 08/14 (日本選手権水上競技大会中継のため中止)
74 08/21 電光を作る男
75 08/28 電送手術
76 09/04 重力ゼロ
× 09/11 (プロボクシング中継のため中止 )
× 09/18 (プロ野球西鉄×阪急戦中継のため中止)
× 09/25 (プロ野球阪急×西鉄戦中継のため中止)
77 10/02 砂漠の生存者
× 10/09 (舞台中継のため中止)
× 10/16 (舞台中継のため中止)
78 10/23 光の誕生
posted by 猫山れーめ at 00:00| Comment(0) | クラシック海外ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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