2021年03月17日

宇宙物語・遊星人M 全話レビュー/第5話「不敵な挑戦」

宇宙物語シリーズその二 遊星人M
第五話「不敵な挑戦」
1957年1月9日(水)20:30~21:00放送

原作:香山滋、脚色:魚住大二、音楽:宇野誠一郎、広告代理店:博報堂、提供:シルバー携帯ラジオ(白砂電機)
制作:大垣三郎、演出:北代博、フロアマネージャ:忠隈昌、AD:柴田馨、デザイン:坂上建司、美術連絡:青山宏央、美術進行:芦田光長、小道具:高橋俊一、衣装:山我幸江、化粧:小松英子、音響:高橋孝・市川昭和・居作昌果、テクニカルディレクター:岩西浩、カメラ(ロケ):糸田頼一・藤波貞夫・中村昭三、ビデオエンジニア:北大路矗、オーディオエンジニア:林清男・須賀良浩、照明:倉本泰司

出演:
浅香(天文台勤務 理学博士)50歳……江川宇礼雄
園部伊都子(その助手)26歳……西朱美
水島亮吉(新聞記者)33歳……沼田曜一
関なち子(その恋人 インターン医学生)23歳……藤波京子
小野寺善樹(国立細菌学研究所長 医学博士)45歳……河野秋武
今井周一(科学小説家 アマチュア写真家)36歳……原保美
今井カズ子(その妹 サラリーガール)21歳……青島純子
寺尾晃(カズ子の恋人 サラリーマン)27歳……相原巨典
遊星人M(惑星ガロア人)……江見渉
守口(動物園守衛)……天草四郎
早野少年(給仕)……山本豊三
ゴリラ……高木新平
小塚(天文台要員)……寺田彦右
警視庁要員……荻原昂
ナレーター……浦野光

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この空のどこかに空飛ぶ円盤すなわち遊星ガロアの宇宙船が保護色を使って停止していると考えた浅香博士はサーチライトを使って円盤を照らし出す実験を「空の怪異対策委員会」で主張。その日の夜半、水島・周一・寺尾をはじめ大勢の野次馬たちが見守る中でその実験が行われた。しかしこの時すでに遊星人Mの空飛ぶ円盤は周一の妹カズ子を乗せたまま地球を遠ざかりつつあった。Mは武器として使っていた病原体に特効薬が作られてしまったことを逸早く察知し、新たな武器を調達する必要に迫られていたのだ。
M「必ず、再びやってくる、あの女のためにも」カズ子「あの女?」M「園部伊都子」
カズ子はMが無自覚な様子で口走ったその言葉を訝しんだ。Mは相変わらず感情を表に現さないようだったが、円盤を操縦している間にもMの頭の中ではだんだんと伊都子に対する執着が大きくなっていったようだった。
M「あの女……そうだ、引き返す」カズ子「えっ、何て言ったの」円盤が大きく方向転換したのを感じ取ったカズ子が聞き返す。「どうしたの……引き返すの?」Mは答えない。「引き返すのね!」目を輝かせて喜ぶカズ子。

一方地上では――浅香博士の予想に反してサーチライトは夜空の中に何も照らし出すことがなかった。何も起こらないことに飽きた路上の野次馬たちは三々五々と散っていく。周一は予想外の結果に自分が信じられない様子だった。寺尾はサーチライトで照らしたという行為が円盤に捕まっているカズ子にとって悪影響とならないか懸念して言う。「Mのやつ、腹立ちまぎれにカズ子さんを……」周一「Mはこれまでのところ、警告したとおりに行動してる……その点は大丈夫だよ」「あんたは信用し過ぎるよ、人を」「人……?」寺尾の言葉に引っかかるものがあったのか、変な顔をする周一。水島がピンときて周一に尋ねた。「今井さん、人でなけりゃ何だと思うんです、Mを」「さぁ……しかし少なくとも……」そのとき寺尾が路傍の闇の中に何かがいるのに気付いて「おやっ、何だ!?」と振り返った。突然のことにギョッとする三人。「どうしたの」「何だか唸り声みたいな……例のゴリラかと」「ゴリラ?」問い返されて考え直す寺尾。「まさかこんなところにねぇ……僕は臆病なんかじゃないですよ? なにしろあのゴリラ、摩訶不思議の術をMから授かってる……」そう言う寺尾の背後から本当にゴリラが姿を現わした! 周一と水島は驚き、ゴリラを刺激しないよう手真似で寺尾に知らせようとするのだが寺尾は気付かない。「そうじゃないですか、第一この大都会の中を逃げ回ってて誰にも見つからないなんて……そうだ、わかった。Mと一緒に円盤の中にいるんだ……何です、どうしたんです?」ようやく二人の様子に気づいた寺尾は振りかえり、驚いて水島にしがみつく。迫るゴリラ、じりじりと後ずさる三人……。ところがゴリラの様子が何だかおかしい。勢いがなく、何だかよろめくような足取りである。周一「こいつ変だぞ、死にかけてるんじゃ……」水島「あっ、そうだ、病気なんだ。遊星人Mの意志が働きかけているときだけ元気な、あの病気なんだ」周一「じゃ、今は……」ドタリとその場に倒れ伏すゴリラ。周一「今はMの意志が作用していないんだ。しかし、なぜだろう……ゴリラが捕まっちゃってもいいつもりなのかしら」水島「もう用済みなのかな」周一「あるいは、作用できる範囲の外にいるのか……もしかすると」周一は夜空を見上げて言う。「もう、円盤はいないのでは……」

円盤ではMが操縦をやめてテレビモニターのダイヤルを操作し始めた。カズ子は円盤がテレビを映せるほど地球の近くまで戻ってきたと喜んだが、そこに映し出された三鷹天文台の様子を見て驚く。「どうしてここは昼間なんでしょう? 私たちがさっき飛び出したのは夜中前で、あれからまだ1時間ちょっとしか経っていないのに」M「時間の収縮が起こったのだ。私たちの飛んだ時間は1時間でも、その間に地球では三日経ったのだ。非常な速さで飛んだから」カズ子はMの話が信じられないのでトリックではないかと疑うが、Mは「今にわかる」とそれ以上の説明はせず、天文台の施設の中から伊都子のいる一室を見つけ出した。「あの女……あの女だ」

園部伊都子の傍らには浅香博士がおり、そこへ周一、寺尾、早野少年が入ってきた。周一は浅香に、昨晩のサーチライト探索で円盤が見つからなかったのは既に円盤が飛び去った後だったからではないかと話し、昨晩遭遇したゴリラが半死半生になっていた一件を伝えた。そのゴリラは昏睡状態で動物園に引き取られていったという。「円盤は地球を去ったというのかね」「ええ、何かの事情で」「君の妹さんを乗せたまま……?」痛いところを指摘されて暗然とする周一。

円盤の中でその様子を見ていたカズ子はせめて自分の声だけでも兄・周一に伝えようとモニターのダイヤルに触れるが、画面は消えてしまう。Mはカズ子の手を静かにダイヤルから除け、音声はこちらから相手には伝えられない事、M自身の意志を伝える時は精神感応で聞こえたように感じさせていることをカズ子に説明した。そしてMが再びモニターを操作すると、今度は動物園のゴリラの檻が映った。檻の前には守衛の守口や警備主任、猛獣使いのシャムラたち数人が集まってなにやら話し合っているのが見える。

そこへ鞄を抱えた関なち子と小野寺博士が園長に案内されて来た。例の熱病の特効薬でゴリラを治療しようというのだ。後ろにはちゃっかり水島記者と亀田カメラマンもついてきている。ゴリラが眠り続けているのを心配する動物思いの守口を、なち子は「大丈夫ですわ。この注射一本で……現に大勢の人が射つと同時に全快してるんですから」と元気づけた。小野寺が注射器を受け取り、シャムラの先導でゴリラの檻に入っていく。

カズ子は、Mがゴリラを治療させまいと遠隔操縦の機械に手を伸ばしたのに気付き、その腕にしがみついて邪魔をするが、Mに「お嬢さん!」と凄まれてハッと手を放してしまう。「……おとなしくせねば、ただではおかぬ」と長い指をヒラヒラさせてカズ子に迫るM。

地上の動物園では檻の中の寝床で眠っているゴリラの様子をシャムラが確かめ、小野寺に向かって頷く。それを受けて小野寺が注射にかかろうとしている――。

Mに迫られてカズ子は後退りしていたが、やがて壁際に追いやられてしまった。カズ子の背中がわずかに壁と触れたとき、Mが手をさっと振り降ろすと途端に怪しい音が響き、カズ子は失神してその場にくずおれてしまう。邪魔者を眠らせたMは急いで遠隔操縦機のもとへ戻り、ゴリラを目覚めさせた。

小野寺が今まさにゴリラへ注射しようとした時、どこからか怪しい音が響いたと思うと、突然ゴリラが唸り声をあげた。一瞬たじろいだ小野寺は、なお注射を射とうとしたが、ゴリラは勢いよく身を起こして立ちあがった。シャムラは小野寺となち子を檻の外へ逃がしながらゴリラに戻るよう命じたが、ゴリラはシャムラなど相手にせず、その場にいた人たちを威嚇しながら檻をから出て木陰へとかくれ潜んでしまった。シャムラは制御不能になったゴリラの射殺を決意し、銃を取りに行ってしまう。ゴリラが殺されてしまうのを憐れんだ守口は、小野寺から奪うように注射器を取って、自らゴリラに注射を射つべくゴリラが隠れているはずの木陰へと単身近寄って行った。ところが……「あれ、どこへ行っちゃったんだ……いませんよ」「そんなバカなことが……他に行きようがないじゃないか。みんな見てるんだもの」「だって、いないものはいませんよ」「変ね。病院の屋上でもMはこんなふうにいなくなったわね」この不思議な現象を目の当たりにして、小野寺は何かの仮説をつかんだようだった。しかし耳敏く聞き返した水島に対して小野寺は「いやいや、単なる憶測にすぎん。というよりも、夢のように架空な理論だよ」と慌てて口を閉ざした。

警察無線では脱走した依然ゴリラが発見されていないこと、厳重警戒のうえ見つけ次第射殺することが全管区に伝えられていた。警戒にあたる武装警官たち――。

円盤の中でカズ子が意識を取り戻すと、Mがモニターのダイヤルを操作していた。殺されていなかったことに安堵するカズ子にMは「殺しはせぬ、無益には。生かしておいて役に立つものは」と言う。「誰があなたなんかの役に立つものですか。ゴリラはどうなったの」と憤慨するカズ子だったが、Mは答えずに浅香たちがいる天文台のあの部屋の様子を映しだした。

浅香「……ガロアなんて遊星は世界の誰もまだ発見したことのない星だ。少なくとも数百光年、いや数千光年の向こうにある小さい星だろうと思われる」寺尾「数千光年……じゃ、そこからやってくるには」早野少年「光と同じ速さで飛んでも数千年かかるんですか」寺尾「大変だ、円盤に乗ってるやつだって死んじゃうじゃないですか、その間に」浅香は微笑んで、周一にアインシュタインの相対性理論を説明するよう促す。伊都子も微笑んで周一の説明を見守っている。周一「今世紀の初めにアインシュタインという科学者が時間収縮率の法則を発見したんだ。それによると、地球の時間と空飛ぶ円盤の中の時間とは、時間の長さが違うんだよ」寺尾「そんなバカな」周一「たとえば光が届くのに百億年かかる距離を、光と同じ速さのロケットで飛ぶとすると、何年で行けるか……」寺尾「やっぱり百億年さ、同じ速さなんだもの」周一「いや、三十三年で行ける。ロケットの中では時間が収縮するんだ……速度が速くなれば速くなるほど、その中の時間は地球の時間の何分の一、何十分の一に縮まってしまう」伊都子が早野少年に「わかった?」と聞くが、早野少年は首を横に振るばかり。寺尾「しかし、ほんとか嘘か誰も経験したものはないんだから……」浅香「いや、ある。現に今も一人……ねえ、今井君」寺尾「今も一人? 誰です」周一「カズ子だ。ガロアの円盤が飛び去ったものとすれば、多分あの時からだから三日経つ……しかし円盤の中のカズ子には、おそらく数時間しか経ってないだろう」

円盤の中でMがカズ子に振る。「その通りだ。お嬢さん、わかったか」カズ子も早野少年のように首を横に振るばかりだ。

そのとき天文台の小塚要員が浅香のもとへ報告に来た。「ただ今ラジオのニュースで、動物園から逃げ出したゴリラが……」周一「えっ、ゴリラが逃げ出した!?」伊都子「まあ、また……」小塚要員「どこにも姿を見せなかったんですが、ついさっき、この近くで見かけたものがあるから注意してくださいと」そこへ水島となち子が慌ただしく入ってくる。「ごめんなさい、ゴリラがまたずらかったんですよ」伊都子「聴きましたわ、この付近に現われたんですって?」周一「Mの仕業だ」水島「もちろん」寺尾「何を企んでるんだ」水島「また浅香博士か、あるいは園部女史……」伊都子「まあ、いやですわ」なち子「悪いわ、そんな冗談言って」水島「いや、どうもあの病院の屋上以来……」一同、それを思い出してギクリとする。

円盤内のカズ子「そうだ、わかったわ……ゴリラに園部さんを攫わせる気ね!?」Mは答えない。

水島はMの円盤がふたたび地球に舞い戻ってきていることを確信し、サーチライトの夜に寺尾が言っていた“空一杯に無数の風船を上げて円盤に当てる”作戦を浅香に提案した。それを試してみるのも面白いと思った浅香は、関係当局へ連絡するために席を立つ。

大喜びで早く風船を上げてほしいと浮足立つカズ子に「その必要はない。こちらから姿を見せてやる」と独りごちるM。

浅香が部屋を出ている間、周一はMやゴリラがなぜ自由自在に姿を隠せるのかについて、科学小説家独自の見地から考えを巡らせていた。水島「また保護色ですか?」周一「いや、少し違う」早野少年「じゃ、わかってるんですね。教えて下さいよ」周一「うん、夢みたいな説明だが理屈には合う」水島「夢みたいな……? 小野寺博士もそう言ってた」周一「小野寺博士も?」水島「面白い! さあ、君の話から聞きましょう」そのとき伊都子がアッと声を上げた。「窓が、今、開きかけたの」すると皆が見ている目の前で窓がスーッと開くではないか。凝然となる一同。水島と寺尾が窓の外を覗いて誰もいないことを確認したが、そのとき空にだんだんと何かが姿を現し始めた。「あっ水島さん、あれは円盤じゃないですか!?」「えっ」「なに、円盤!?」一同が窓へ駆け寄ると、空には円盤が次第に形を現していき、やがてその姿を完全に現した――。

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【解説】
円盤と地上との2元中継のような構成の回。画面の対象が行ったり来たりするので放送局のスイッチャーはもちろんのこと、視聴者もさぞかし目まぐるしかったのではないか。

江見渉(=江見俊太郎)が演じる遊星人Mは細長い指をヒラヒラさせるという描写から一応香山滋の原作に沿った身体的特徴を持つようだが、性格は全く違うようだ。原作のMは魔術師ヨチヤムリを名乗って怪しげな言動で人々を引っ掻き回す怪人物だが、ドラマのMは寡黙で感情をほとんどみせない。宇宙物語シリーズの前作「誰か見ている」で白石奈緒美・戸川弓子・由美川淳一(=朝戸鉄也)が演じた宇宙人“アンチクトン人”が感情をみせない謎の人物として描かれていたことが、本作にも引き継がれているのかもしれない。
ゴリラを演じているのは戦前からのアクションスター高木新平。半年前にも同じラジオ東京テレビの特撮時代劇「猿飛佐助旅日記」で魔人ガラジャードを演じたが、その時のフランケンシュタインばりの特殊メイクは高木氏本人の考案によるもの。翌年からラジオ東京テレビ=TBSで放送が開始されることになる「月光仮面」シリーズで巨獣マンモスコングを演じたのも高木氏である。

今回は特に特撮を駆使した演出はあまりないようだ。冒頭で瀕死のゴリラに遭遇する夜の暗い歩道はスクリーン・プロセスを使用している。生放送劇中で撮影済みフィルムをインサートした場面は1.円盤が地球から遠ざかるところ、2.輝く天体の間を円盤が飛んで行くところ、3.円盤内の壁に三鷹天文台の遠景が映し出されるところの三か所。うち1と2は第4話でも使用したフィルムだろう。今回、円盤のモニター越しに地上の様子を見るシーンが何度かあるが、台本ではシーンによって「テレビ」「素」と注釈が添えられている。おそらく「素」は何も加工を施さない素の演出を指し、「テレビ」と注釈されているシーンは全て円盤のモニター越しに見ているシーンなので、テレビ画面を直接カメラに撮ったかまたはテレビ画面の枠の囲みを合成したと考えられる。下記画像は「遊星人M」から1年10ヵ月後、既にVTRが導入された時代の東芝日曜劇場「マンモスタワー」(作:白坂依志夫、演出:石川甫・蟻川茂男・神永方義)がTBSチャンネルで放映された際のキャプチャだが、黒木本部長がテレビインタビューに答える場面はテレビ画面撮り、奈美がミュージカル番組で歌う場面は合成と、それぞれ異なる方法で表現されていた。台本上での指示の有無は確認していない。みすず書房「季刊テレビ研究」第2号の脚本採録では技術指定に関する記述は含まれていなかった。同書では宇宙物語シリーズでもテクニカルディレクターを務めた岩西浩による技術解説も掲載されているが、VTRとフィルムとの調和に腐心した記述が主であり、このようなテレビinテレビを表現する演出方法についての言及はなかった。YuseijinM_03.jpgYuseijinM_04.jpg

なお、この第5話から放送時間が木曜ヨル8時から水曜ヨル8時30分へと移動し、スタジオもこれまでの60坪のBスタジオから100坪のAスタジオに代わっている。参考までに台本に記された進行予定によると、ドラマ本編が終わるのが8時57分22秒。そのあと次回予告を8秒とり、8時57分30秒からCMフィルム(1分14秒)、それに続いて横ロールテロップによる「今週の配役」を流す段取りとなっている。この配役紹介は生放送による本編時間が押したり余ったときのクッションの役割を兼ねており、結果的に8時58分48秒から提供タイトル(5秒)を映せるよう進行時間を調節する。8時58分53秒に終了タイトルを表示。ここもまたクッションの役割を兼ねており、アナウンサーが次のようなアナウンスを行なった。
この番組について皆様のご意見やご希望がございましたら、
港区赤坂局区内 ラジオ東京テレビ「宇宙物語」
の係までお寄せ下さいますようお願いいたします。
では来週のこの時間までさようなら
この局アナウンスを担当したのが誰だったかは現時点では判明していない。可能性のある人物を挙げるならば、番組ナレーターであるKRT劇団所属の浦野光、前番組「誰か見ている」でナレーターを務めたKRT局アナの鶴田全夫、生コマーシャル担当者の高橋恵美子……といったところか。

8時59分20秒から次の番組までの40秒間はステーションブレークとなる(詳細は下記「テレビ放送ハンドブック」参照)。
YuseijinM_05.jpg
posted by 猫山れーめ at 05:18| Comment(0) | 遊星人M(TV版) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月03日

宇宙物語・遊星人M 全話レビュー/第4話「火星を越えて」

宇宙物語シリーズその二 遊星人M
第四話「火星を越えて」
1957年1月3日(木)20:00~20:30放送

原作:香山滋、脚色:魚住大二、音楽:宇野誠一郎、広告代理店:博報堂、提供:シルバー携帯ラジオ(白砂電機)
制作:大垣三郎、演出:北代博、フロアマネージャ:忠隈昌、AD:柴田馨、デザイン:坂上建司、美術連絡:青山宏央、美術進行:芦田光長、小道具:高橋俊一、衣装:山我幸江、化粧:小松英子、音響:高橋孝・市川昭和・居作昌果、テクニカルディレクター:岩西浩、カメラ(ロケ):糸田頼一・藤波貞夫・中村昭三、ビデオエンジニア:北大路矗、オーディオエンジニア:林清男・須賀良浩、照明:倉本泰司

出演:
浅香(天文台勤務 理学博士)50歳……江川宇礼雄
園部伊都子(その助手)26歳……西朱美
水島亮吉(新聞記者)33歳……沼田曜一
関なち子(その恋人 インターン医学生)23歳……藤波京子
小野寺善樹(国立細菌学研究所長 医学博士)45歳……河野秋武
今井周一(科学小説家 アマチュア写真家)36歳……原保美
今井カズ子(その妹 サラリーガール)21歳……青島純子
寺尾晃(カズ子の恋人 サラリーマン)27歳……相原巨典
遊星人M(惑星ガロア人)……江見渉
川北利子(看護婦)……山岡久乃
ゴリラ……高木新平
阿古川(青年)……川上連太郎
ナレーター……浦野光

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 円盤内のテレビモニターで兄・周一(原保美)からの連絡を聴き取ろうと必死でダイヤルを回すカズ子(青島純子)だったが、突然モニターから浅香博士(江川宇礼雄)の声が響いてくる。「ガロアの宇宙船に告ぐ……Mは危機に落ちた……Mは危機に落ちた」画像の映らないモニターからは続けてゴリラの唸り声や女性の悲鳴などが聞こえてくる。カズ子がさらにダイヤルを回すと、どうやら水島記者(沼田曜一)たちが遊星人M(江見渉)をピストルで追い詰めているらしき場面が聞こえてきた。やがて聞こえる拳銃の音――ところが続けて聞こえてきたのは関なち子(藤波京子)の怪訝な声。「あらっ、もう居ないわ。どうしたんでしょう」水島「すばしこい奴だ……が、それにしても変だな」川北看護婦(山岡久乃)も言う。「魔法使いみたい……ガロアの人間って魔法も使うのかしら」三人がMを探し回る音はやがてノイズに紛れて聞こえなくなった。カズ子が円盤の底面シャッターから眼下を覗くと、街の灯の中からMがぐんぐん上昇している。驚いて身退りすると、カズ子の覗いていたシャッターからスーッとMがせり上がり、円盤内に入り込むとカズ子には目もくれずに機械の操作を始めた。カズ子は怖れつつも思い切ってまたシャッターから眼下を覗いてみると――街の灯が急速に遠ざかっているではないか。Mはカズ子へ示すようにテレビモニターを点けてみせると、そこには浅香が入院していた国立細菌学研究所附属病院の小高い裏山が映し出された。ゴリラは再び昏倒した浅香を抱えて裏山の松林の中に逃げ込んだのだ。

地上では周一や水島たちがMとゴリラを追って裏山に集まっていた。水島の話によると、クリスマスパーティーでゴリラに引っ掻かれた女の子は今流行っている例の熱病を発症して病院に担ぎ込まれたそうだ。熱病に感染しているゴリラに接触すれば自分も熱病に罹る惧れがある……水島の話を聞いて戦慄する周一たち。水島は浅香博士の助手・伊都子(西朱実)に戻るよう呼びかけ、自分の恋人であるなち子にも伊都子を送っていくよう頼んだ。なち子は一旦は承諾しつつも、それよりあなたに話があると切りだす。周一たちは気を遣って水島となち子の二人だけを残してその場を離れるが、その隙をみてゴリラが忍び寄ってきた。水島はゴリラに気付かず立木のつもりでゴリラにもたれかかっている。
なち子は後を向いたまま水島に、特効薬の実験に失敗した小野寺所長(河野秋武)の実験を引き継ぎ、調合を変えて自ら実験台になるつもりだと打ち明ける。その前に水島から自分への感情を確かめておきたい……というなち子に、水島はお互いの気持ちが同じであると語った。なち子が喜んで水島の方を振り返ると、水島の真後ろにゴリラがいる! 仰天したなち子を見て水島もようやくゴリラの存在に気付いたが、逃げる暇もなくゴリラの一撃を喰らってその場に倒れてしまった。足がすくんで動けないなち子を尻目に、ゴリラは木の陰に隠していた浅香を抱え上げ、周一たちが去った向きとは逆の方向にノッシノッシと去って行った。
我に返ったなち子は悲鳴をあげて助けを呼び、倒れている水島にすがりついた。気が付いた水島はすぐさまゴリラを追いかけようとしたが、なち子から「あなたはもうゴリラから熱病をうつされてしまったのよ。症状は急激に来るわ。高熱・めまい・それから幻覚……」と聞かされるとショックで目を回し、再びひっくり返ってしまう。なち子はオロオロして立ったり座ったりと落ちつかない……ところが倒れた水島が目をキョロリと開いて「おい、変だよ。何でもないらしいよ」とその場で体操を始める。「変ね、どうしてあなただけ……あなたは特別なのかしら」「免疫かな……そんなら僕から血清をとるといいんだがね」「そうね、そして小野寺先生の薬の代わりに飲むといいんだわ、ウィスキーに混ぜて」「ウィスキー? 君、その薬はウィスキーに混ぜて飲むものなのか!」なち子の話を聞いてようやく、自分が小野寺所長の研究室でこっそり飲んだものはただのウィスキーではなく熱病の特効薬だったことを知る水島。「それじゃ、先生がお飲みになったのは……」「僕が新しく注いでおいたから、多分それを」「馬鹿……」だが、水島がピンピンしているということは特効薬の効果が証明されたということでもあるのだ。「すてきな馬鹿ね、あなたは」

宇宙空間に浮かぶ地球からぐんぐん遠ざかっていく円盤――その円盤内で機械を操作し続けているM。距離をおいて床にしゃがみMを睨みつけているカズ子。Mに何を尋ねても返事をしないのでカズ子は苛立っていた。「いいわ、兄さんが今に助けに来てくれるから。兄さんはそう言ってたもの。みんな力を合わせて助けに来てくれるわ」それを聞いたMがはじめて振り返って言う。「力を合わせて助けにくると?」Mがシャッター窓を開いてカズ子に見るよう促すと、窓からは遠ざかっていく地球が見えた。「君の体にショックを与えないよう速度を徐々に増した……今では光と同じ速さで地球から飛び去りつつある」戦慄するカズ子。「いやっいやっ、降ろしてっ……あたしをどこへ連れて行くの」「ガロア」いくらカズ子が泣き喚いて懇願してもMは顔色一つ変えない。「私は一旦ガロアへ帰らねばならぬ。大人しくしていれば害を加えはせぬ。おかげで君は珍しい旅行ができるというものだ。地球人の誰もまだしたことのない宇宙旅行を」絶望してガックリとその場にくずおれるカズ子。
やがて円盤は火星に近づいていく。機械を操作しながらMが放心してうずくまっているカズ子に言う。「しばらく火星の引力を利用して飛ぶ……見るがいい……地球人の誰一人、見たことのないものだ。君も二度とは見られぬ」Mの話を聞いているうちに好奇心が湧いてきたカズ子は、Mに対しては硬い表情を崩さないまま、シャッター窓を覗いてみた。火星の表面が急速に近づくのが見える。「火星の引力圏を抜ける。次は木星へ向かう……木星までは地球の時間であと約30分かかる」無数の星々の間を飛んで行く円盤の姿。
「あなた、なぜ一旦ガロアへ帰るの」「……」「また来るの、地球へ」「必ず来る」「そんならなぜ、一度ガロアへ戻るの」「私の大きな武器の一つが地球人に敗れた……あの便利な病気が」それを聞いて喜ぶカズ子にMが釘を刺す。「喜ぶのはまだ早い……私が一旦ガロアへ帰るのは新しい武器を積み込むためだ。そして再びやって来る……今度こそは失敗せぬ」

地上ではMが地球から一旦退去した事が知られないまま、「空の怪異対策委員会」で浅香がサーチライトを使った円盤探索を訴えていた。最初は笑って聞き流していた大鳥博士(清水一郎)も、全快した浅香と小野寺の両博士の決意表明を聞いて「まあやってみるのもいいでしょう。円盤が見つからなかったところで別にどうという事はないのですから」と鷹揚な態度を示した。「ただし、円盤が存在すると称して世人に衝動を与えた責任は、博士、この実験が失敗したら……」浅香「もちろん取ります」

その夜、水島記者から取材を求められて喫茶店に来た周一が、カズ子の行方について寺尾(相原巨典)と話をしていた。カズ子を人質に取って周一の口を塞いでいても、浅香博士が全快した今となっては円盤が目に見えない秘密は遅かれ早かれ明かされる。だからもうMにはカズ子を捕らえておく必要はない。とすると、帰してよこすか、あるいは――
そこへ水島が遅れてやって来た。早速、円盤が見えなくなる理論を尋ねる水島に周一は笑いながら事もなく話しはじめる。「つまり、保護色です」寺尾の胸のハンカチとマフラーが同色同柄なのを見て、それらを重ねてみせる周一。なるほどパッと見だと区別がつかない。「これと同じ理屈ですよ。円盤の表面が全てそのままテレビスクリーンだとすると……」周一はコーヒー皿を持ち上げながら説明していく。「上の風景がそっくり下の面に映る。昼なら雲と青空を、夜なら星空を……下から見て区別がつかないほど精巧に」寺尾が話に乗っかって言う。「じゃ、風船を上げればぶつかるから位置がわかる」周一は笑って頷き「そして夜ならば……」と言葉を継ぐと――「あっ、やった!」ふと窓の外を見た寺尾が素っ頓狂な声をあげ、水島たちも窓の外を見ると、夜の街に煌々とサーチライトの灯が伸びている。「サーチライトで照らせば、円盤に映っている星空の部分だけ特に光って見えるはずです」喫茶店の一隅から窓の外を見守る三人……そこにサーチライトに気付いた客が一人また一人と集まって窓の外の様子を眺めはじめるのだった。

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【解説】
さて、前話から年末年始を挟んでおり視聴者にストーリーを思い出させるためか、少々長めの「これまでの粗筋」が番組冒頭に設けられている。――が、本作は基本的に生放送ドラマ。前話のフィルムを焼き増しして繋ぐという事など出来はしない。なんと“これまでの粗筋”も生放送での実演である。浅香博士のバストショットをテロップボードで映すカットが1つある以外は、2台のテレビカメラを切り換えながら、俳優が異なる背景のセットを行き来して浦野光のナレーションにあわせた演技をした。

裏山での水島となち子の会話では、二人が話している間中、ゴリラが水島を襲おうとしては知らず知らずにすり抜けられ、また水島も木の枝と思い込んでゴリラの腕に寄り掛かるといったコント仕立て(今でいうところの「志村ー、後ろー!」)になっているのが微笑ましい。
ゴリラは水島を殴ったあと浅香博士を抱えてどこかへ姿を消してしまったはずだが、ラスト近くの「空の怪異対策委員会」の席上では浅香博士は全快して熱弁を揮っている。山狩りで発見されたゴリラが浅香を置いて逃げ出したのかもしれないが、言及する描写がないので唐突さが拭えない。なおネタバレになるがゴリラは次回、Mによる支配力が失われており熱病で半死半生になっているところを発見される。

Mはガロアへ向かう際、火星へ接近することでその引力を利用して飛び(スイングバイ)、続いて木星に舵を向けている。ところが放送当時の火星の方向は木星と正反対の方向にあり、見たところスイングバイするメリットがあまりない位置関係のように見受けられる。
YuseijinM_02.jpg
(※国立天文台・4次元デジタル宇宙プロジェクトが公開しているマルチ天文ソフトウェア「Mitaka」で再現した放送当日の位置関係)
それでもMがあえて円盤を火星の傍まで接近させた理由は、接近中のMの言動から考えるとやはり観光目的でカズ子にサービスしたかったからという気がしてならない。

今回の特撮シーンはカット繋ぎ用の「宇宙空間に浮かぶ地球から円盤が遠ざかっていく様子」と「無数の星々の間を円盤が飛行する様子」がミニチュアを用いて16mmフィルムで撮影されており、生放送中にインサートされた。こういうカット繋ぎシーンの間に出演俳優が大慌てでセットを移動したり衣装を着替えたり、スタッフが背景セットを組み替えるのである。
また粗筋冒頭の星空、円盤のモニターに映し出される裏山にはスライドが用いられている。裏山のスライドはミニチュアを作って撮影したものを種板に使っており、台本では「この山の裾に夜の病院をも作れればなお結構。なくてもよし」という記述が見られる。

この「宇宙物語シリーズ」では本番終了後にデスク連が次回のためのブレーンストーミングを開き、この段階で「劇中でやりたいこと」と「それが技術的に実現できるか否か」の擦りあわせが行なわれたという。今日でいう美術監督の坂上建司、特技監督の岩田浩らが「こうすれば映像化できると思う」と判断したものが最終的に台本上に残った描写であるが、中には「ここまでやれればベターだけど、スケジュール厳しくて間に合わなさそうなら無くてもいいよ」と鷹揚に判断されたカットなどもあるだろう。上記の「山裾のミニチュアに夜の病院があると尚よし」もあらかじめ柔軟に対応できる範囲を示すことで多忙な現場に配慮した当時の知恵と工夫の痕跡なのかもしれない。
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2019年09月15日

宇宙物語・遊星人M 全話レビュー/第3話「ガロアよりの使者」

宇宙物語シリーズその二 遊星人M
第三話「ガロアよりの使者」
1956年12月27日(木)20:00~20:30放送

原作:香山滋、脚色:魚住大二、音楽:宇野誠一郎、広告代理店:博報堂、提供:シルバー携帯ラジオ(白砂電機)
制作:大垣三郎、演出:北代博、フロアマネージャ:忠隈昌、AD:柴田馨、デザイン:坂上建司、美術連絡:青山宏央、美術進行:芦田光長、小道具:高橋俊一、衣装:山我幸江、化粧:小松英子、音響:高橋孝・市川昭和・居作昌果、テクニカルディレクター:岩西浩、カメラ(ロケ):糸田頼一・藤波貞夫・中村昭三、ビデオエンジニア:北大路矗、オーディオエンジニア:林清男・須賀良浩、照明:倉本泰司

出演:
浅香(天文台勤務 理学博士)50歳……江川宇礼雄
園部伊都子(その助手)26歳……西朱美
水島亮吉(新聞記者)33歳……沼田曜一
関なち子(その恋人 インターン医学生)23歳……藤波京子
小野寺善樹(国立細菌学研究所長 医学博士)45歳……河野秋武
今井周一(科学小説家 アマチュア写真家)36歳……原保美
今井カズ子(その妹 サラリーガール)21歳……青島純子
寺尾晃(カズ子の恋人 サラリーマン)27歳……相原巨典
遊星人M(惑星ガロア人)……江見渉
川北利子(看護婦)……山岡久乃
ゴリラ……高木新平
ナレーター……浦野光

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 熱病の正体は依然不明だったが、国立細菌学研究所の小野寺所長(河野秋武)は新薬の効果を試すため、熱病患者の血液から採った病原体を自らに注射して試そうとしていた。小野寺はかつて別の熱病を同じ療法で治療したことがあったのだ。理論的に確かめている暇がないと言ってウイスキーグラスに入れた新薬を飲もうとする小野寺を、この熱病で入院している浅香博士(江川宇礼雄)の助手・園部伊都子(西朱実)とインターンの関なち子(藤波京子)は、無謀だと言って止めた。さらに伊都子は自分が代わりに実験台になると申し出るのを聞いて、なち子はいかなる場合でも人体実験は認められないといって反対する。そんな押し問答が続く中、水島記者(沼田曜一)が三人の間に割り込んできて、ゴリラ失踪事件の現場に残されていた遺留品を鑑定してほしいといって緑色の血に濡れた指を小野寺に見せた。水島記者の恋人でもあるなち子が「先生は細菌学が専門だからお門違いよ。生物学の先生に見てもらったら?」とあしらうが、既に水島はあちこちの専門家に見せて回って結論が出なかったのだという。最初は苦笑いしていた小野寺も、知的好奇心をそそられて観察を始める。そこへ浅香博士付きの川北看護婦(山岡久乃)が「浅香博士がどこかへ行ってしまった」と駆け込んできた。受付に浅香博士への面会希望者がきたというので断りに行ったほんのわずかの隙にいなくなったのだという。小野寺たちは慌てて浅香を探しに部屋を飛び出すが、水島はその行きがけのドタバタに紛れて、目をつけていたウィスキーのグラス(実は熱病の新薬)を飲み干し、それをごまかすため空のグラスにウイスキーを注ぎ直してから出て行った。

 円盤の中ではこの一部始終がモニター画面に映し出していた。遊星人M(江見渉)にさらわれ、円盤の中でMとモニター画面を見ていた今井カズ子(青島純子)は、今の面会希望者とは自分の兄であるSF作家・今井周一(原保美)のことだと気がついた。Mは、周一と浅香博士が邪魔されることなく面会できるよう、自分がある場所へ誘導したのだと語り、モニター画面を調節し始めた。するとモニターに浅香博士と周一、それにカズ子の恋人・寺尾晃(相原巨典)の三人が会見している様子が映し出された。熱病で昏睡状態と聞いていた浅香博士が何事もなく話しているのを見て驚くカズ子。Mは浅香博士の状態を「私の意思の通りに動く時だけ元気でいられる、そんな病気なのだ」と言い、東京で流行している熱病は自分の仕業であると語った。今から自分もこの会見の場へ行くとカズ子に告げるM。

 先ほどモニターに映し出されていた場所では、浅香博士が周一に不穏な話を続けていた。「……そうだ、私も君と会うように命令を受けたのだ。君と会って説得するように」「説得? 何を説得なさるんです」「君は、円盤が消えたことについて、ある理論を持っている」うなずく周一に浅香が畳みかけるように言う。「しかし、その理論は間違っているのだ」周一は何も話さないうちから間違っていると決めつけられたことを怪しみ「どうしてご存じなんです、私の考えを」と逆に問いかけるが、浅香は答えない。「私の考えはこうです……」「いや、言わなくてよろしい。私にはわかっている。そしてそれは、まちがっているのだ。だから捨てなさい、そんな空想は。発表しようなどという馬鹿げた考えはよしなさい」「しかし……そんならなぜ、妹をさらっていったんでしょう……」何かに思い当たる周一。「……僕を黙らせようとして」「他に要求があるのだ。君に対して」「どんな要求です」「それは……あの者が来て、直接君に話す」「あの者?円盤に住む生物ですね」うなずく浅香。「この屋上へ舞い降りてくる」「屋上へ?」「夜の闇とともに舞い降りてくる……もう間もない……」

 その頃、小野寺は伊都子やなち子が浅香博士の捜索に掛かりきりになっている隙をみて一人研究室に戻ってきていた。そして新薬が入っているはずのウィスキーグラスをあおってから、自らの腕に病原体を注射する。だが……小野寺が飲んだのは熱病の新薬ではなく、水島記者に差し替えられた本物のウィスキーだったのだ。なち子が研究室に戻ってきたとき、小野寺は熱病を発症して今まさに昏倒するところだった。全てを察して駆け寄るなち子に小野寺は、今まさに自分の身に起きている症状を記録するように言って症状を伝えながら意識を失った。

 夜が来て病棟の屋上から眼下に眺める街々には明かりが灯り始め、ジングルベルの音がかすかに聞えてきた。そのとき病棟の屋上に待機していた浅香博士、周一、寺尾の眼前に忽然と遊星人Mの姿が現われる。周一がMと向き合っている隙をみてその場からそっと抜け出す寺尾。

 研究室では水島、伊都子、なち子、川北が小野寺の発病を知って落胆していた。水島がなち子に、小野寺の作った新薬というのは注射なのかと尋ねかけたとき、息を切らせて寺尾が駆けこんできた。「け、警察へ電話を」「何です、どうしたんです」「あらわれたんです、円盤……空飛ぶ円盤のやつが」「えッ」「屋上で会ってる……今井さんと浅香博士が」「えっ、浅香先生が」

 屋上で周一はMから、妹と引き換えにMのスポークスマンとなり、地球人にMの意思を広めるよう迫られていた。「君の意志?どんな意志です」と尋ねる周一にMは「そんな質問は許されぬ。私に従うか、そもなければ……」といって浅香を指さした。その時、寺尾に案内されて水島・伊都子・なち子・川北が屋上へドヤドヤと駆け上がってきた。Mの姿を目の当たりにして戦慄する水島たち一同。Mは浅香を指して言葉を続ける。「……彼はすでに私の味方だ。心を失ってしまったのだ、地球人の心を……永久に。君をこのようにしないのは、君には今いった役目を与えたいからだ。従わねば、君も死ぬのだ。よけいな人間どもと同じように……」ふとMの言葉が途切れる。「……これらのよけいな人間と……同じように……」Mは駆けつけてきた面々を見まわしながら話をしていた。Mはその中に伊都子の顔を見てとると――どういうわけかMは放心状態になってしまったのだ。Mの様子が変なことに気付いた水島が「おいッ、何だ君は」とMに怒鳴る。Mに見据えられておびえ、人の後ろに隠れる伊都子。水島が重ねて問いかける。「どっから来たんだ!何で来たんだ!」「……私は、遊星ガロアの使者……」「ガロア?」水島は遊星ガロアと聞いて伊都子が何か知っているのかと目を向けるが、伊都子はわからないそぶりで首を振る。「何の使いだ!」「……命令を伝えに来た」「命令?馬鹿にするな、こっちには命令される覚えはない」「従わねば、全滅する」「大きく出たね!むざむざやられると思ってるのか」Mは屋上から眼下に広がる街の灯を指さした。「見るがいい。君たちの街……クリスマス・イブとかいい踊り楽しんでいる地球人たち……何が起きるか、よく見るがいい」そして何かの合図を始めようとするように手を高々と振り上げるM。円盤の中でもカズ子がモニター画面を見ながら心配そうに両手で胸を押さえている。手を振り降ろそうとするM――その時、怯えた伊都子から「待って……怖いわ、やめて……お願い」という言葉が口を突いて出た。Mは明らかに意志を動かされた様子で「あなたが言うのか。お願い、と……」と伊都子に問いかける。うなずく伊都子。Mは静かに手をおろした。

 その時、寺尾からの通報を受けて駆け付けた出窪刑事が警官隊とともに屋上に駆け込んできた。武装警官の姿を見て俄然強気になった寺尾は、Mを指して「こいつはカズ子をさらった誘拐犯だから早く捕まえてくれ」と刑事に訴える。水島となち子もそれに同調して「動物園のゴリラをさらったのもこいつに違いない、その証拠に指が1本欠けているはずだ」「熱病菌を撒き散らした犯人もきっとこいつよ」と口々にMを非難した。警官隊にピストルを向けられたMは、そのこと自体にはまるで無関心のようにふるまい、浅香に小型の機械を与えて円盤に連絡を取るよう指示した。浅香は伊都子の静止を振り切ってクリスマスパーティーに浮かれる夜の街へと出て行く。後を追う伊都子、周一、寺尾。Mは警官隊から銃で威嚇されて身動きできないようだった。浅香は街のキャバレーで開かれていたダンスパーティーにもぐり込み、飛び入り参加のボーカル客を装ってバンドマイクに機械を付けて円盤への連絡を始めた。「ガロアの宇宙船に告ぐ。Mはいま……」パーティーの喧騒の中でマネージャーに引き摺り下ろされる浅香。その隙を見て壇上に上がった周一は、やはり飛び入り客を装って歌を歌いながら、合間合間に円盤内のカズ子に向けたメッセージをはさむ。「カズ、聞こえるか――きいてるか――カズ、すぐ助けるぞ――もう少しの辛抱だ――Mはね、Mのやつは……」円盤の中でモニターから周一の声だけが伝わってくるのを聞いたカズ子は、画像も映し出そうとして焦ってダイヤルを回し、かえってチューニングを外してしまう。周一は何か肝心なことを伝えようてしていたようだったが、カズ子には伝わらなかった。「……だから、もうすぐだぞ――」その時、周一の歌に合わせて踊っていた人々のダンスの輪の中に、行方不明になっていたゴリラ(演:高木新平)が突然現われた。たちまち大混乱となるパーティー会場、その機に乗じてバンドマイクへ歩み寄っていくゴリラ――その後ろには浅香博士が付き添うように歩いてきている。屋上ではMが警官隊に迫られて絶体絶命、円盤ではカズ子が必死にダイヤルを操作中、そしてパーティー会場では浅香が今まさにマイクを手にして円盤への連絡を行なおうとしていた――。

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 出窪刑事を演じた俳優名は不明。12月27日放送なのでリアルタイムとのシンクロを図ってかクリスマス・イブの喧騒を劇中に取り込んでいる。台本では夜にまたたく街の灯をテロップで表現する指示がある。これと、円盤内のモニター画面に地上での出来事が映るシーンくらいが今回のトリック(特撮)シーンだろうか。もしかしたら病棟屋上のシーンで夜景にスクリーンプロセスを用いたかもしれない。各テレビ局は開局当初よりスクリーンプロセスを導入していたが、当時のスクプロは後方からスクリーンに投射するタイプ(リア・プロジェクション)だったので場所をとる割に画質が悪く、邪魔扱いされて早々と使われなくなった……という話を当時「遊星人M」で美術デザイナーを担当した坂上建司氏から伺ったことがある。ちなみに前作「誰か見ている」ではリア・プロジェクションの前で江川宇礼雄が演技をしているスナップ写真が当時の雑誌に掲載されている。
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2019年08月23日

宇宙物語・遊星人M 全話レビュー/第2話「悪魔指さすところ」

宇宙物語シリーズその二 遊星人M
第二話「悪魔指さすところ」
1956年12月20日(木)20:00~20:30放送

原作:香山滋、脚色:魚住大二、音楽:宇野誠一郎、広告代理店:博報堂、提供:シルバー携帯ラジオ(白砂電機)
制作:大垣三郎、演出:北代博、フロアマネージャ:忠隈昌、AD:柴田馨、デザイン:坂上建司、美術連絡:青山宏央、美術進行:芦田光長、小道具:高橋俊一、衣装:山我幸江、化粧:小松英子、音響:高橋孝・市川昭和・居作昌果、テクニカルディレクター:岩西浩、カメラ(ロケ):糸田頼一・藤波貞夫・中村昭三、ビデオエンジニア:北大路矗、オーディオエンジニア:林清男・須賀良浩、照明:倉本泰司

出演:
浅香(天文台勤務 理学博士)50歳……江川宇礼雄
園部伊都子(その助手)26歳……西朱美
水島亮吉(新聞記者)33歳……沼田曜一
関なち子(その恋人 インターン医学生)23歳……藤波京子
小野寺善樹(国立細菌学研究所長 医学博士)45歳……河野秋武
今井周一(科学小説家 アマチュア写真家)36歳……原保美
今井カズ子(その妹 サラリーガール)21歳……青島純子
寺尾晃(カズ子の恋人 サラリーマン)27歳……相原巨典
遊星人M(惑星ガロア人)……江見渉

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 新聞社に押しかけて円盤が消える原理を水島記者(沼田曜一)と早野少年(山本豊三)に説明しようとする今井周一(原保美)だったが、そのとき何者かから「妹を愛するなら語るのをやめよ、直ちに帰りて妹の運命を見よ」というテレパシーでの警告を受け、妹カズ子(青島純子)の身を案じて説明もそこそこに新聞社を辞去した。

 入れ替わりに来た写真班の品川カメラマンは水島記者に、動物園から逃げたゴリラの取材への同行をもちかける。ゴリラは熱病に罹っており動けないはずだったが、誰かが故意に檻から逃がしたらしい。それを聞いた早野少年は熱病の流行とゴリラの脱走には今回の円盤騒動と何か関係があるのでは、と推理を巡らせ、同行をねだる。ゴリラの件は報道禁止のお忍び取材だったため、弱った水島記者は早野少年に仕度してくるように言っておいて、そのすきに早野少年を置いて品川カメラマンと二人で取材に出てしまった。

 一方、周一がアパートに戻るとカズ子の姿はなく、スーツケースにはヒトデのような手型が残されていた。周一はカズ子の恋人・寺尾晃(相原巨典)を呼び出し、円盤でやってきた生物にカズ子がさらわれたらしいことを説明していると、再びあの不思議なテレパシーが伝わり、細菌研究所附属病院に入院している浅香博士の病室に来るよう指示される。寺尾と周一は指定された場所へと向かった。

 病室で眠りつづける浅香博士(江川宇礼雄)を助手の園部伊都子(西朱実)が看病していると、突然浅香博士が目を開き、これから来客があること、その者の名は今井周一であることを告げると、再び気を失ったように眠ってしまう。浅香博士が目覚めたことを川北看護婦(山岡久乃)から知らされた小野寺所長(河野秋武)が少し遅れて病室にやってきたが、その時はもう浅香博士は眠りつづけるだけであった。このとき小野寺所長のそばにインターン医学生で水島記者の恋人・関なち子(藤波京子)の姿はなかった。彼女は小野寺所長の指示でゴリラが脱走した動物園に出向いていたのである。

 動物園へ忍び込んだところを守衛に見つかって逃げ惑っていた水島記者と品川カメラマンの二人を救ったのは、調査に来ているなち子、そして水島から置いてきぼりを食らったと知るや、なち子に連絡をとってまんまと同伴してきた早野少年だった。人心地ついて現場の調査を始めた水島は、草むらで緑色の血に濡れた細長いヒトデのような指を発見。これはゴリラを連れ去ろうとしてゴリラにもぎとられた犯人の指に相違なかった。

 そのヒトデのような指の持ち主である謎の人物―遊星人M(江見渉)は、先ほどからの水島たちの一部始終を円盤の中のテレビで監視していた。テレビを見終えた彼は、気絶していたカズ子を目覚めさた。驚くカズ子にMは、ここが地上300メートルの空中に停止している円盤の中であること、自分は遊星ガロアに住むMだと語った。カズ子はMが宇宙人だというのは嘘で、その証拠にMは地球の言葉を話しているじゃないかと指摘する。これに対してMは、言葉でなくテレパシーを伝えているのだと答え、またカズ子からの様々な問いに対しても、カズ子を誘拐したのは円盤の秘密に気づいた周一の言動を牽制する人質のため、地球に来た目的はガロアの指示する条件を地球人が受け入れなければ皆殺しにするため――と答えた。そしてMが円盤内のテレビを操作すると、そこには病室の窓辺にうつろな目で立つ浅香博士の姿が映った。博士の頭には何かを受信しているかのように稲妻のような電光が閃いている。病室に入ってきた伊都子が驚いて浅香博士をベッドに連れ戻そうとすると、浅香博士は来客がもう来る頃だと答えた。続いてテレビの画面が切り替わると、病院への坂道を急ぐ周一と寺尾の姿が映し出された。Mはカズ子に、これから自分もその場へ行く、何が起きるかテレビで見ているがいいと語るのだった――。

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 この時点ではMの肉体は原作小説に準じて「ヒトデのような指」を持ち「緑色の血」が流れる植物性宇宙人として描かれているが、この設定はストーリー後半のオリジナル展開において大きく改変されることになる。
 水島記者のセリフで、今井周一がSF作家として一応知られた存在であること(ただし売れない作家という認識)が語られている。この設定自体はストーリー上ほとんど活かされていないが、やはり後半のオリジナル展開で熱狂的なファンもおり、それが事件を解決に導くキーマンを引き合わせる鍵になるという形で活かされている。
 今回は第一話のように劇中にスポンサーの製品を織り込めるような演出は台本上に見当たらないようだ。浅香の病室で伊都子が看病をしているシーンあたりでシルバー携帯ラジオから音楽を流しているような演出を加えていたのかもしれない。
 特撮シーンの有無も不明。脚本からの推測ではあるが、Mからのテレパシー指令を受けている浅香の頭に稲妻が閃くシーンをテロップ合成、円盤のテレビ画面に映る映像をハメコミ合成かグラスワークで表現したのだろう。
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2019年07月05日

宇宙物語・遊星人M 全話レビュー/第1話「円盤飛来?」

宇宙物語シリーズその二 遊星人M
第一話「円盤飛来?」
1956年12月13日(木)20:00~20:30放送

原作:香山滋、脚色:魚住大二、音楽:宇野誠一郎、広告代理店:博報堂、提供:シルバー携帯ラジオ(白砂電機)
制作:大垣三郎、演出:北代博、フロアマネージャ:忠隈昌、AD:柴田馨、デザイン:坂上建司、美術連絡:青山宏央、美術進行:芦田光長、小道具:高橋俊一、衣装:山我幸江、化粧:小松英子、音響:高橋孝・市川昭和・居作昌果、テクニカルディレクター:岩西浩、カメラ(ロケ):糸田頼一・藤波貞夫・中村昭三、ビデオエンジニア:北大路矗、オーディオエンジニア:林清男・須賀良浩、照明:倉本泰司

出演:
浅香(天文台勤務 理学博士)50歳……江川宇礼雄
園部伊都子(その助手)26歳……西朱美
水島亮吉(新聞記者)33歳……沼田曜一
関なち子(その恋人 インターン医学生)23歳……藤波京子
小野寺善樹(国立細菌学研究所長 医学博士)45歳……河野秋武
今井周一(科学小説家 アマチュア写真家)36歳……原保美
今井カズ子(その妹 サラリーガール)21歳……青島純子
寺尾晃(カズ子の恋人 サラリーマン)27歳……相原巨典
遊星人M(惑星ガロア人)……江見渉

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1956年初冬のある日、大空に高音を発する発行体が現れ、それは空中に停止すると、大勢の人々が見守る中で忽然と消えてしまった。
その正体について日東新報の新聞記者・水島亮吉(沼田曜一)は三鷹天文台長の浅香博士(江川宇礼雄)に取材を試みるが、博士は言葉を濁して明言を避ける。それを横から取って代わるように現れた博士の助手・園部伊都子(西朱実)は、発行体の正体はアル・アーラーフ、つまり超新星爆発であろうと話す。辻褄は合うが本能的なところで納得のいかない水島がなおも食い下がると、伊都子は、博士もある仮説を持っており今日の会議で発表するかもしれないと語って去っていった。

その夜、昼間の騒ぎに出合わして首尾よく発行体をカメラに収めたSF小説家の今井周一(原保美)は、同居する妹カズ子(青島純子)と、訪ねてきた妹の恋人寺尾晃(相原巨典)に暗室でネガを現像してみせたが、写真は全て真っ黒に感光していた。露光を間違えるはずはないんだがと訝しむ周一に、カズ子は昼間の騒ぎが宇宙人の襲来ではないかと不安をのぞかせる。そんなカズ子に周一は、宇宙の住人は全て本質的に平和主義者だから心配することはないと説く。ちょうどその時ラジオから臨時ニュースが流れてくる。都内で原因不明の熱病が発生し、浅香博士が会議の席上で「サーチライト……」と言い残して倒れたというのだ。周一はこの言葉に思い当たるものがあったらしく、浅香の代理とばかりに新聞社へ向った。

倒れた浅香博士を診察した国立細菌学研究所長の小野寺博士(河野秋武)は熱病の病原体をいまだに発見できず悩んでいた。インターン医学生の関なち子(藤波京子)は発生のタイミングから考えてこの熱病の原因が空飛ぶ円盤に関係あるのではないかと推察する。

これらの空飛ぶ円盤について思索を巡らせる人々の一部始終をテレビモニターで監視している何者かの姿(江見渉)があった。
ヒトデのような指を持つその人物が機械を操作すると、テレビは小野寺博士と関なち子が話し合う病室から一転し、日東新報で水島に何かを説明している周一の様子を映し出した。怪人物がさらに機械を操作すると、今度は寺尾を送り出してひとりアパートに残っているカズ子の様子を映し出す。そしてカズ子が眠りについたとき、その部屋の前へと何者かの影が近づいていった――。

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スポンサーが当時ポータブルテレビとラジオを製造販売していたシルバー携帯ラジオなので、劇中でラジオが音楽やニュースを流すシーンを意識的に設けている。本放送ではこのシーンで画面下にCMテロップが挿入された。CM枠は他に、スタジオで高橋恵美子が製品を紹介する生CMを冒頭に1分、番組の最後にフィルム製作によるCM1分が設けられている。

ドラマの最初に現れる発行体(空飛ぶ円盤)はテロップまたはマジックシーンを用いたハメコミ合成で表現したらしいが、「大空」から「ビルの窓から顔を出して空を眺める人々」のシーンに切り替わったのに円盤の合成が消えておらず、円盤がいつまでも画面の下に残っていた……と当時第一話を見た報知新聞の記者に書き記されてしまっている。また、円盤の内部の光の点滅がクリスマスツリーのイルミネーションに使う点滅球のそれで、こどもだましに感じたとのこと。ただ前作「誰か見ている」に比べて出演者がのびのびと演じていた点は評価されている。

当時TBSには少し広いAスタジオと狭いBスタジオの2つしかなく「遊星人M」の放送に使われていたのは狭いBスタジオだった。テレビカメラも2台しか無かったため、生放送では片方のカメラが映しているうちにもう片方のカメラがサッと移動して画面の切り替えに備えなければならない。パズルを組み合わせるような複雑なワメラワーク、スイッチングのセンスが求められていたのは想像に難くない。また冒頭の浅香博士と水島記者が話しながら近づいてくるシーンでは、はじめの会話3つをあらかじめ録音しておいて本放送時に流すよう指定されていた。二人がまだセットの端で演技しているうちはマイクが声を明瞭に拾えない可能性があったため、別録りのセリフで補完したのである。機材もノウハウも足りない生放送の時代に知恵と工夫で「特撮SFドラマ」という複雑怪奇なものを放送した先達の勇気には敬服するばかりだ。なお「遊星人M」でブームマイクが使われるようになったのは番組も終わり間際の第10話からになる。

第一話でレギュラー陣が全員何らかの出番を与えられているのは登場人物紹介の意味合いもある。ラスト間際になって登場する謎の男=遊星人Mは台本の記述では手か影しか映らないはずだが、配役一覧では江見渉が第一話からクレジットされており、顔が映らないからといって代役をたてたわけではないようだ。

【追記】2019/8/23
※放送時刻を20:30~21:00(台本の表紙にある記述)から20:00~20:30(ラテ欄で確認した実際の放送時刻)訂正した。
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