2021年04月12日

53年前の資料系同人誌「TVSF番組名鑑」全文再録

同人誌のうち、創作ではなく記録や調査研究を掲載した資料的価値が生じているものは現在「資料系同人誌」というジャンル名で呼ばれている。資料系同人誌と呼べるもの自体は昭和の昔から発行されていると思うが、ジャンルとして注目されるようになったのは2009年に大手古書店「まんだらけ」の主催で資料系同人誌即売会「資料性博覧会」が開かれるようになってからだろう。この催しは年一回のペースで続けられており今年で12年目を数える。

特定分野のファンによる同人誌は1980年代まで「ファンジン」という通称で呼ばれていた。英語版Wikipediaで「Fanzine」の解説を読むと1940年10月にラス・ショーヴネがSFファンダムで用いた造語が発祥だという。この英語版Wikipediaの「Fanzine」は日本版Wikipediaにリンクされておらず、日本版Wikipedia「同人誌」から英語版Wikipediaにリンクされている項目は「Doujinshi」となっている。アチラのニュアンスでは何が違うのかと斜め読みしてみたが、由来はともかく現在ではこれといって創作・二次創作・記録研究との違いではなさそうだ。現状ではどうも映画やロックミュージックといった三次元分野のファン同人誌が「Fanzine」、漫画やアニメなど二次元分野のファン同人誌が「Doujinshi」として棲み分けられているようにも感じる。一方、日本ではファンジンという呼び方は廃れてしまい、商業出版でなければ全て「同人誌」で一括りにされているような感がある。機関紙・会報・ミニコミ誌は個人が発行しても通常「同人誌」とは呼ばれないが、それは本来目的としている掲載内容が会員同士の情報共有や連絡周知だからであり、継続的に創作や研究発表の場として使われるようなら「同人誌」と呼ぶのが相応しい場合もある。

話が取っ散らかってしまったが、SFファンジンのうちSF作品についてデータを記録収集したり研究結果をまとめた同人誌、つまり今でいう資料系同人誌はいつ頃から存在していたのだろうか――というのが今回のお話。

朝日ソノラマ刊「季刊 宇宙船」1980年2月創刊号ではSF映画のファンジン特集が組まれ「PUFF」「衝撃波Q」「コロサス」等の主宰者座談会や論文が再録されている。何年か前にテレビドラマとなった「怪獸倶楽部」の発足は1975年らしい。機関紙や会報も含めるなら1953年発足の日本宇宙​旅行協会会誌「宇宙旅行」や1956年発足の日本空飛ぶ円盤研究会会誌「宇宙機」も誌面にデータの記録収集・研究報告がみられるが、テレビ番組の放映データ紹介はあくまでもワン・コーナー扱いなので会報そのものを資料系同人誌と呼ぶのには少々無理がある。「宇宙機」では柴野拓美がまるまる1ページを費やして邦画特撮「空飛ぶ円盤恐怖の襲撃」をレビューしたりもしているが、冊子のすべてをSF作品の記録研究に費やした同人誌はまだ現われていない。ちなみに「宇宙機」から柴野拓美らを中心にSF小説愛好家が枝分かれしたのが科学創作クラブ会誌「宇宙塵」なので「宇宙機」には「宇宙塵」の広告がよく載っている。

少なくとも資料系同人誌の歴史はここまでさかのぼれる、という一例を入手したので紹介したい。下記書影は「怪獸倶楽部」が発行される7年前、第一次怪獣ブーム真っ盛りの1968年に発行された同人誌「TVSF番組名鑑」である。
TVSFBM.jpg

内容は誌名が示す通り、国内でテレビ放映されたSF的要素を含む番組を可能な限り収集列記した総目録である。発行日は1968年3月1日となっているが、掲載されている番組に1967年以降のものがないため、おそらく1966年末頃には編纂が完了していたと推測される。
著者は当時の「宇宙塵」会員であり現在も「ハードSF研究所」公報誌上で古典SFに関する執筆を続けているSF研究者の大先輩、島本光昭氏。各作品に添えられている寸評は相当な辛口だが、それらは全て1966年当時の視聴者が抱いた飾らない生の感想である。後の特撮ブームやアニメブーム、ハリウッド製大作SF映画を体験した後ではそれらがバイアスとなりかねないので、リアルタイムの感想は貴重な歴史の生き証人といえるだろう。
シャボン玉ホリデーの番組中に放送されていたという「鉄腕P」や、小松左京原作の「ああ夫婦」、三島由紀夫原作の「美しい星」、安部公房原作の「お気に召すまま」なども等しく取り上げている点には、当時のSFファンが持つ視座が現在「SF番組」とカテゴライズされている番組の視座とは異なるものであることを予感させないだろうか。着眼点の差異といえば、「ウルトラマン」の題名を「ウルトラQ・ウルトラマン」と表記してあるのも、なるほど先入観なしにあのOPを見たらそう受け取る人もいるかも……と納得することしきりである。

今回、著者である島本光昭氏のご厚意で「TVSF番組名鑑」の内容をJESFTV・日本初期SF映像顕彰会のウェブサイトに転載させていただけることになった。当方が入手した原本は謄写版印刷の紺色インクが所々掠れ、また本文の更紙が経年で変色しており、あまり閲読向きの状態ではないこともあり、Web再録にあたっては全文をテキストに打ち直し、索引を設けて希望の項目に飛べるよう便宜を図ってある。なお原本に含まれるデータの欠落や誤記は歴史的価値を鑑みて一切訂正していない。私も直したい埋めたいという気持ちを必死で堪えたのでどうかご理解いただきたい。

下記リンクから該当ページに飛べます。
http://jesftv.in.coocan.jp/NOVA_BOOKS.html
posted by 猫山れーめ at 14:40| Comment(0) | 古書(SF) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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