2020年03月30日

TV エノケンの孫悟空 全話レビュー/第一回

放送日:1957.1.6(日)19:30-20:00
作・構成:井崎博之、岡田教和/音楽:若山浩一/企画:電通ラジオ・テレビ企画第二部
演出:鈴木利泰(※その他のスタッフ・配役は不明。前回に準じると思われる)

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五行山に閉じ込められ、岩肌から頭だけを出している悟空。その傍に観世音菩薩が立っている。「悟空、お前が天上界を騒がせた罪がどんなに重い罪であるか、しってるんですか」「だって、おいら決して、そんな事ァ、コレッポッチもした覚えなんかあるもんかい。ねえ観音様、どうか助けて下さい」「では助けてあげよう……だか喜ぶのはまだ早い。私が助けるのではありません」「えッ、じゃ誰が助けてくれるのですか」「それは今に誰かが来て、お前の頭の上のお札をはがしてくれるでしょう。そしたらお前はそこから出られるのです」「その人はいつ来てくれるのです」「五百年たったら来ます」五百年と聞いて落胆する悟空。「観音様、どうしておいらはこんな目にあわなきゃならないんです」「今までの行ないを、よーく、振り返ってみるがよい」そういって姿を消す観世音菩薩。「今までの行ないを振り返ってみろって……えーと……まず、おいらが生まれたのは……」悟空の脳裏に、生地である傲来国の花果山がうかぶ。「……傲来国の花果山で、おいらはその山のてっぺんから生まれたんだ……」

ここは天上界。天帝の御殿をイナヅマのような光が照らしはじめたのを見て、侍従と千里眼が何事だろうと話し合っている。天帝から調査を命じられた千里眼が遠メガネを取り出してあやしい光のほうへ向けると、花果山の頂上に石猿が座ってあたりを見回しているのが見えた。稲光とおもったものはその猿の眼光である。「何の光じゃ」「それが、下界の傲来国は花果山の頂きにおりまする、石猿の目から発している光にございます」「ほう、石猿の目から?」「はい、しかしながら、下界の水をのみ、木の実を食べておりますれば、やがて光は消え失せることと存じますが、猿は猿でもそんじょそこらの猿とは違うようでございます」「あッ、そう」

その頃、滝の見える花果山のふもとでは山猿たちが集まって、おそろしい狩人や外敵から身を守るために安全な場所へと移住するための相談をしていた。この滝壷の下にはかつて何者かが住んでいたことがあるらしいが、本当に住処にできるのかどうかはわからない。そこで、滝壷に飛び込んでそれを確かめ、無事に帰ってきた者は我々の王様にしようという話が持ち上がったが、物怖じして誰も確かめに行こうとしない。そこへ通りかかった悟空が名乗りを上げた。「よし、俺が飛び込んでみらぁ」「何だいお前は。あんまり見慣れない猿だなぁ」「さっきこの山のてっぺんから生まれたばかりの石猿さ」「お前、俺たちとは毛並みが違うな」「おいらだって立派な猿だぜ」「猿は猿でも石猿だろ」「石猿だって猿にゃ違いねえんだ、あんまり馬鹿にするなィ」天涯孤独の歌を歌いながら去っていこうとする悟空を山猿たちは慌てて引き止め、一人ぽっちは可哀想だから仲間にしてやると伝えた。悟空は重ねて、おいらでも滝壷に飛び込んで帰ってきたら王様にしてくれるのか?と尋ねる。「ああ良いとも、なァみんな!」「意義なし!」山猿たちの言質をとると、悟空はいちにのさんで滝の上から飛び込んだ。ザブーン!と滝壷に飛び込んだはずが、なぜか悟空は綺麗な橋の欄干の上にいた。滝の音に混じってどこからか妙なる曲が流れている。訝しみながら橋を渡ると「水簾洞」と書かれた石碑が建っていた。その洞窟の奥へと進むとそこには先住者が使っていたらしき鍋や釜、椅子などの調度品が揃っていた。

滝の外で山猿たちが悟空の死(?)を悼んでいると悟空が平気な顔をして戻ってきた。「おいみんな、おれは素晴らしい住処を見つけたぞ」「滝壷の中か?」「違う違う、あの滝の後ろだ。さぁみんな俺に続いてついて来い、連れてってやるぞ」「あの滝をうまくくぐれるかな」「大丈夫さ、いきおいつけてダイビングすれはへっちゃらよ」こうして山猿たちは滝の後ろに隠された水簾洞に住処を移し、悟空は約束通り王様となった。戴冠式を受けた悟空は猿彦王と名乗り、山猿たちを相手に酒宴を催す。コーラスつきで酒宴の歌を披露する悟空。そこへ、水簾洞の隣に住むウサギの餅月王の使者がお祝いを持ってきた。悟空が箱を開けると、貢物の中身は不二家のケーキである。「こんなものは猿彦大王が召し上がると思うか!」「召し上がれるか召し上がれないか、まず第一、召し上がって下さいませ」とりあえず口に入れてみる悟空。「ウム、これは美味しい。なかなかに美味しいぞ、これ御使者、帰られたら餅月王によろしくお伝えくだされい」

ウサギの使者が帰るのと入れ替わりに、山猿が報告にやってきた。何でも古ダヌキたちが水簾洞の前を何の挨拶もせずに通り過ぎようとしたので捕まえようとしたところ、暴言を吐いて暴れているという。悟空に命じられて山猿たちがタヌキを捕まえに出てくると、水簾洞の入口で中の様子を覗っていたタヌキは悟空に化けて山猿たちをケムに巻いた。「あれっ大王様がここにいるぞ」「おかしいなぁ、大王様は水簾洞の中にいるはずだが……」「何をそこでブツブツ言ってるんだ。狸は水簾洞の中へ入っていったぞ。早く行って召し捕れーっ!」山猿たちが洞窟の奥に行くと悟空がいて、早くタヌキを捕まえて来いという。混乱する山猿たちを見て、任せておけないと思った悟空は自らタヌキ退治に水簾洞の入口へと向かう。「やい古狸、猿彦大王じきじきに召し捕りにまいった」その途端、腹鼓が鳴り響いたかと思うと、悟空の目の前をグルグルと渦巻き模様が舞った。「あッ」ススキの原っぱでタヌキに化かされた悟空がひとりで大立ち回りを演じ、その挙句にのびてしまう。
悟空の帰りが遅いので山猿たちが様子を見に来ると悟空がのびている。「これは大王様じゃない、きっと古狸だ」と早合点した山猿たちは、さらに悟空を袋叩きにする。それを岩の上で飄々と眺めて笑っているタヌキ。

それからしばらく経った水簾洞の玉座。悟空がタヌキから完膚なきまでに化かされたことで落ち込んでいると、山猿が「大王さまも呪術を習ってみてはどうか」と提案してきた。山猿の話によるとここから海を隔てて十年もかかる西牛賀洲という所に呪術を心得た仙人がいるらしいという。呪術を習う決心をした悟空は山猿たちに後を任せ、「水簾洞も今宵限り……可愛い子分の手前たちとも別れ別れになる門出だ」と、浪曲国定忠治よろしく別れを告げて旅立つ。舟に乗って大海へ漕ぎ出した悟空の一部始終を、天上界の千里眼は遠メガネでつぶさに見ていたのだった。

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【解説】
花果山・山頂の石猿・滝・船の上の石猿でミニチュア使用の指示。またタヌキに化かされるシーンでは渦巻き模様をダブらせる指示あり。タヌキが悟空に化けるシチュエーションではあるが合成で2人の悟空が鉢合わせ、というトリックはまだ実現していない。生放送なので水簾洞の入口と玉座の間をエノケンが行ったり来たりするしかなかったようだ。
今回、不二家のケーキはパーティーの贈り物という形で物語の流れの中に割り込ませているが、ここはおそらく本放送だと画面下にスーパーインポーズで「不二家の洋菓子」とでも広告を流したのだろう。エノケンの歌は2曲、そのうち天涯孤独の歌は台本上は空欄で印刷され、鉛筆の手書きで書き込まれていた。ドライリハーサルの時にエノケンと打ち合わせて決めたのかもしれない。
posted by 猫山れーめ at 01:00| Comment(0) | エノケンの孫悟空(TV版) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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