2020年03月27日

TV エノケンの孫悟空 全話レビュー/プロローグ

放送日:1956.12.30(日)17:15-17:45
作・構成:井崎博之、岡田教和/音楽:若山浩一/企画:電通ラジオ・テレビ企画第二部
演出:鈴木利泰/AD:吉沢比呂志、政田一喜/美術:出口雄章
技術班・TD:吉本琢也、カメラ:木村忠雄、成田哲雄、坂本晃、武谷雅博/オーディオ:吉田昭之助、須賀良浩/効果:金川勝利
出演:榎本健一(孫悟空)、恩田清二朗(お釈迦様)、十朱久雄(天帝)、木田三千雄(侍従)、江戸屋猫八(千里眼)、丘寵児(章聖真君)、天城竜太郎(哪吒太子)、長谷川待子(観世音菩薩)、増田淑子(花摘む娘)、映演プロ(川上正夫、滝雅雄、横田年正、岸本清、山口勝美、柵田貴代男(天兵1~6)、増田淑子、宍倉榴美、水野禾子、鉤富美子、柳本隆子、野崎紀子(侍女1~6))/殺陣:桜井美智夫

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なにやら悟空が大勢の天兵に囲まれ、如意棒を振り回して大あばれしている。見得を切った悟空が頭の毛を抜き、テレビ画面に向かってフッと吹くと番組タイトルが現われ、テーマソングが始まる――。

ところかわって天上界。天帝がのどかに過ごしていると千里眼が慌ただしく駆け込んできて天帝に報告した。「天上界の侍大将達は誰一人悟空を取り押さえられず敗北しました」天帝の傍でそれを聞いた哪吒太子は自ら孫悟空の討伐を買って出る。天帝は安堵しつつも「あの悟空が何だってこうも暴れ出したのだろう……」と表情を曇らせた。

哪吒太子は天平を連れて悟空の根城である水簾洞へやってきたが、応対に出てきた悟空を見下して「石猿」呼ばわりしたことで悟空の怒りを買い、天兵ともども蹴散らされてしまう。千里眼は休む間もなく雷大将を差し向けるが悟空はこれも一蹴(天界での千里眼の実況で描写されるため雷大将の配役ナシ)。天帝から「もう誰も残っておらぬか」と尋ねられた侍従は章聖真君を遣わせることにした。

次から次へと現われる捕り手の相手にいいかげんくたびれてきた悟空は、章聖真君が水簾洞にやってきたのを見て「逃げるが勝ち」と觔斗雲で逃げ出す。どうやら悟空は何者かに化けて天上界の天帝の城に潜り込んだらしい。どうやって探し出すのかと尋ねる侍従や千里眼に章聖真君は、この場にいる5人の侍女の誰かが悟空ではないかと言い出す。口々に否定して騒ぐ侍女に「猿は欲張りだから物を食べさせると頬袋にしまいこむ習性があるからすぐわかる」と、そこにあった「不二家のショートケーキ」を持ってきて食べさせようとした。ところが今まさに食べられようとしたショートケーキが悟空へと姿を変えた。逃げていく悟空を追おうとする章聖真君だったが、天帝はこれを引き止め、かくなる上は雷音寺のお釈迦様にお願いするしかないといって侍従を名代に遣わせた。

雷音寺の宝蓮台で侍従から悟空の乱暴狼藉を訴えられた釈迦如来は「悟空は淋しいやつなのじゃ。根は至っていいやつなのじゃが」と庇いつつも、乱暴を働くことは許されぬと天帝への助力を引き受けた。

天上界の花園を歌いながら散歩していた悟空は、侍女が花を摘んでいる所へ出くわす。悟空が話しかけると、彼を乱暴者と聞き及んでいる侍女は恐怖に震え「どうか乱暴しないで……」と必死に懇願する。驚いた悟空は「おいら、お前さんには何のうらみもないんだから何もしやしねえよ。それより、おいらも花が摘みたいんだ」となだめる。実際に出会った悟空が噂とは違ってやさしいことに侍女はとまどいながらも安堵していた。
そこへ割って入るように、お釈迦様の声が響き渡ってきた。「これ悟空!お前はだいぶん腕に自信があるようだが、わしと腕比べをしようじゃないか。もしお前が勝ったら、お前を天帝にしてやろう」「本当ですかい?おいら人がいいからいつでも騙されて損ばかりしてるんだ」「わしは嘘など言うものか」「でも『嘘も方便』ってお釈迦様が言ったんでしょ?」「それは時と場合によるのじゃ」こうして悟空はお釈迦様の右手のひらから飛び出すことができるかという賭けに乗ることになった。もしできなければ、また下界に戻って修行してもらうという――。
さっそく悟空が頭の毛を抜いて觔斗雲に変え、ジェット機のように飛ばしていくつもの雲と山を越えていくと、やがて行く手を阻む奇妙な岩山が見えてきた。「ははぁ、あれが空の果てなんだな。一番高いのがきっとマナスルだ」そうして岩山こと五行山の山頂に降り立った悟空は証拠として岩肌に『斉天大聖孫悟空此処へ来る』と書き、元来た道へと踵を返した。カメラがバックしていくと、五行山は岩山と思いきや、手の形をしている。

悟空は天上界の花園へ戻ってくるなりお釈迦様から「これ悟空、下界で修行してまいれ」と言い渡される。「あれっ、嘘はいいっこ無しっていったじゃないか。俺は空の果てまで行ってきたんだぜ。チャンと証拠まで残してきたんだ」「その証拠とはこれであろう」お釈迦様が右手のひらを広げると『斉天大聖孫悟空此処へ来る』と書いてある。驚いた悟空がもう一度行ってくると言うが、そのときお釈迦様の大きな手が悟空を包むと大音響とともに山崩れが悟空を埋めていき、やがて五行山が出来上がった。悟空が岩の隙間から頭を出しているそばの岩場にお釈迦様が『オムマニパビウン』と書いた札を貼ると、悟空がどんなに力を入れても岩場から抜け出すことができなくなった。
しばらくすると悟空のそばに観音様が姿を現した。助けてほしいと哀願する悟空に観音様は、天上界を騒がせた悟空の罪は重いため今すぐに助けてやるわけにはいかない、五百年たったら助けてあげよう――と伝えて消えてしまう。途方にくれ、水簾洞に帰りたいと願う悟空だった。

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【解説】
「エノケンの孫悟空」は1957年1月6日放送の「第一回」から始まる『1月の新番組』であり、年末の夕方に放送された「プロローグ」は話数に含めないとするものが多い。だがあらすじを紹介したとおり「プロローグ」もまたドラマであり、前夜祭のような内容ではなかったことがわかる。続く放送第2回「第一回」では、冒頭で「俺は悪い事なんかしていない」と愚痴をこぼす悟空に対して観音様が「今まで自分が何をしてきたか思いだしてみなさい」と諭し、悟空が「ええと、おいらが生まれたのは……」と自身の生い立ちの回想を始める……というもの。驚くなかれ、ここから1クールたっぷり悟空の回想シーンとなるのだ。岩山に閉じ込められる「プロローグ」のラストシーンへ回想が追いつき、やってきた三蔵法師に助けられるまで、視聴者はあと3ヵ月も待たされることになる。

オープニングは天兵との立ち回りからタイトルが出るところまでが16mmフィルム30秒で、続くキャスト表示は文字テロップのみ(第11回のキューシートによれば1分40秒)。
飛行する觔斗雲の遠景や五行山はミニチュア、觔斗雲から半身を乗り出している悟空のアップはスクリーンプロセスで撮られている。ショートケーキから元に戻った悟空と、岩山に閉じ込められた悟空の前に姿を現わす観音菩薩は二重写し。悟空が岩山に閉じ込められるシーンはあらかじめ山を爆発で崩す様子を16mmフィルム1分50秒撮っておき、逆再生させることで瓦礫が摘み上がって山が生まれる様子を表現した。

後に「8時だョ!全員集合」のプロデューサー等を務めた居作昌果は著書「8時だョ!全員集合伝説」の中で「エノケンの孫悟空」担当時を回想した際、三蔵法師役は松竹少女歌劇団の長谷川待子だったと記しているが、前述のとおり長谷川が演じたのは観音様で(代打で小野敦子が観音様を演じたこともある)、2クール目でようやく登場する三蔵法師を演じたのは花柳寛(後の二代目 花柳壽應)である。ちなみに猪八戒は由利徹、沙悟浄は八波むと志。
posted by 猫山れーめ at 00:32| Comment(0) | エノケンの孫悟空(TV版) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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