2021年03月02日

TV エノケンの孫悟空 全話レビュー/第六回

放送日:1957.2.10(日)19:30-20:00
作・構成:井崎博之、岡田教和/音楽:若山浩一/企画:電通ラジオ・テレビ局
演出:鈴木利泰/フロアマネージャー:吉沢比呂志・政田一喜/テクニカルディレクター:吉本琢也/CCU:成田哲雄/カメラ1:坂本晃、カメラ2:木村忠雄、カメラ3:武谷雅博/オーディオ:吉田昭之助、須賀良浩/効果:金川勝利/照明:吉井澄雄/テレシネ技術:櫻井芳裕/美術:出口雄章/美術進行:芦田光長、清水専三、長島省吾、高野將夫、山田守/小道具:高橋俊一/化粧:小松英子/かつら:細野かつら店/衣裳:山我幸江
出演:榎本健一(孫悟空)、黒木憲三(竜王)、野々浩介(くらげ)、旭輝子(歌姫)、中原早苗(娘(おとと))、東山照子(その母)、大伴純(かながしら)、三越富夫(安甲)(※浦島役として一旦「久野四郎」を記入したのち上から鉛筆で塗り潰して消した跡がある)

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水中にある竜王の御殿へやってきた悟空、たまたま通りかかった太公郎に「あの立派な建物に竜王はいるんですか」と尋ねたところ「竜王? さァ知らないねえ……竜宮城にはキレイな乙姫様なら居るけど」という返事。自分を招待してくれたのはたしか竜王のはず……と訝しみながら、ふと太公郎が持っているものを見ると玉手箱である。太公郎は亀を助けた礼に竜宮城でもてなされ、お土産に玉手箱までくれたというのだ。

羨ましくなった悟空は自分ももてなされようと急いで竜宮へ向かおうとするが、そのときどこからか女の悲鳴が聞こえてきた。驚いてあたりを見回すと、巨大な貝に美しい乙女が足を挟まれている。駆けつけて貝を開こうとする悟空だが貝はびくともしない。「ウーム、こうなったら妖術を使って……いや待てよ、それよりいいことがある」と悟空は懐から不二家ゴールドチョコレートを取り出し、貝の前に差し出してみた。と、貝の中から手がニューッと伸びてくる。貝が不二家ゴールドチョコレートを欲しがるので、二度といたずらをしないよう言い含めてチョコと交換におととの乙女の足を離させる悟空。おととは礼を言って別れようとしたが、貝に挟まれた足に力が入らず歩けない。見かねた悟空はおととを支えて彼女の家まで送っていくことになった。

おととの家で母親からゆっくりしていくよう引きとめられた悟空は、これから竜王の御殿へ行かなければならないのでと言って固辞したところ、おととが大いに驚き、悟空の名を聞いてさらに驚く。なぜ自分の名前を知っているのかと尋ねても、うなだれて答えないおとと。
――おととは竜王の御殿でのことを回想していた。

竜王を中心に、家老のくらげ、側近の安甲とかながしらの4人が密談をしている。牛魔王より強い乱暴者の孫悟空をこのままのさばらせておくわけにはいかない、おびき寄せて殺してしまおう、かながしらが一太刀で斬り殺してご覧にいれます、仕損じた場合に備えて雷魚のもつ祖先伝来の毒薬で盛り殺してみせましょう……
竜宮の侍女であるおととは、たまたま通りかかって4人の密談を聞いてしまったのだ。
竜王「孫悟空が参ったら大宴会を催し、悟空めに散々酒を呑ませ、その酒の中に毒薬を入れるのじゃ。そして酔いつぶれた時を見計らって、かながしら、そなたが斬るのじゃ。相わかったな」――

落ちつかないおととに気を遣いつつも、竜王が待っているからと悟空は出かけようとする。おととは重い口の下で「……どうか竜王様の御殿へ行くのはおやめになってください……わけは申し上げられませんが……」と引き留めるが「折角招待されたのを、そうもいってられないよ。じゃ、あばよ」と悟空は行ってしまった。おととがオロオロとして「どうしよう、命の恩人の悟空様が竜王様に殺されるというのに……」と言うのを聞いて驚く母親。

竜宮に着いた悟空は期待通りの大歓待を受けていた。庭先から見える御殿の立派な造りに感心しきりの悟空は、ふと巨大な柱が建っているのに気付く。「あれッ、ありゃ何だい、この柱は?」家老のくらげが答える。「これは如意棒という柱でございます。何しろ重さ百万斤という目方のある、海底を計る物差しでございます」「海の深さを計る物差しねえ……あんな重たい柱を誰が持ち運びをするんだい」「いえ、この如意棒と申すのは、縮めれば耳の中でも入るという、竜宮の宝でございます」

御殿へ入ると竜王自ら悟空を出迎えての大宴会が始まった。竜王は歌姫に命じて一曲歌って聴かせ、その歌にあわせて侍女たちが舞い踊る。手を打って大喜びの悟空。竜王がくらげに目配せ――くらげが歌姫に目配せ――歌姫がうなずいて微笑むと、悟空の傍らにすり寄っていく。くらげ、歌姫に毒杯を飲ませろというマイム。歌姫、うなずいて徳利を取ろうとするが……同じ形の徳利が2つあるではないか。「あら!どっちの徳利だったかしら」「え、何かおっしゃいました?」「いえなに……確かこちら……」と誤魔化す歌姫、ドキッとしている竜王とくらげ。悟空は気付かないまま、毒薬の入ったほうの徳利を取り上げて「なぁに、徳利などどっちだって同じですよ。まァ一杯いきましょう」と歌姫に勧める。「どうぞ」「いえ私はお酒はダメなんです」「じゃ一杯だけでも……」「いえその一杯がいけないので……口をつけたトタン、ころっと……」「そんなに弱いんですか」「ですから、どうぞ、お客さまから一杯……」「では、遠慮なくいただきます」おとと、ハラハラしている。悟空が酒を飲んだのを見て思わず声が漏れる歌姫。「うまくいった! ……海のお酒はおいしいという評判ですが」悟空が「ウーム……」と唸るのでハッとする一同だが……「ウマイ!」という返事に一同落胆。

歌姫「するとやっぱりこっちだったのかしら……でも確かに……それともやはりこっちだったかしら」悟空「何をさっきから独りでブツブツ言ってるんだ?」くらげ「姫! もっとお勧めしなさい」竜王「くらげ、そちもお相手いたせ」「は、はい……」くらげは悟空の横に行って「あんた達は向こうへ行きなさい!」とおととを押しのけ「えへへ、どうも不調法者ばかりで申し訳ございません。さあ、どうぞどうぞ」「そうガブガブ呑めんよ」悟空が嫌々ながら盃を受けて飲もうとしたとき、はらはらと見ていたおととが咄嗟に「あらッ!」と声を上げた。驚いて呑むのを止める悟空。おととはくらげから嗜められて「あんまり良いお月でしたので……」と誤魔化すが「海の底から月が見えるわけがないじゃないか」とまた叱られる。そこでまたくらげに酒を勧められ、今度は止める間もなく呑む悟空。「ウーイ、なるほど、さすがは竜宮だ! いい酒だ! もっとじゃんじゃん持ってこい」くらげが勧める酒をぐいぐいと呑み干す悟空。くらげは首をひねって「ちっとも利いてこないじゃないか」とボヤくと、悟空は「いや利いたぞ、利いたぞ! すっかりいい気持ちになった」と言ってその場にいびきをかいて眠り始めた。「……おかしいな、やっぱり徳利を間違えたのかしら。この毒薬の酒は確か一舐めしただけでその場にのびてしまうはずなのに……」とくらげは徳利の酒を指につけて舐めてみたところ、突然のショックでその場に倒れてしまう。やっぱり毒薬入りの徳利で合っていた、と大騒ぎの一同。それを竜王が制すると、かながしらに手筈通り悟空を斬るよう命じた。かながしらが刀を振り上げた瞬間、おととがキャーッと悲鳴をあげる。その途端、悟空がガバッとはね起きた。「ウム、何をする」「ぬかるな、それッ!」「さては俺を謀ったな!」たちまち始まる悟空と竜王の手下たちとの大立ち回り。悟空は庭先へ飛び降り如意棒の大柱の周囲をぐるぐる回りながらとうとう手下を全て叩き伏せてしまう。

「竜王、覚悟!」「申し訳ございません。さすがは悟空様だ! 噂に違わず、いや噂より数倍お強い……その代わり当竜宮のものでお気に召した物がありましたら、何なりとお持ちくださいまし」「ほう、そうかい。何でも好きなものをくれるっていうのかい。じゃあ竜宮の宝という如意棒をもらって行こうか」「えッ! あの如意棒!?」「さっき聞けば、あれは伸び縮みするという事だが、あれを縮める方法を教えてくれよ」「それが……それが……」「おう! やだって言うのか? あれはくれねえって言うのか」「いえいえ、とんでもない。では縮める方法をお教えしましょう」竜王が悟空に耳打ちし、それを聞いた悟空が「ヤッ!」と試すと如意棒が三寸ばかりに小さくなった。さらに如意棒を伸ばす方法を聞きだして試すと、如意棒は振り回し易い大きさになった。「これならちょうどいい。じゃ、もらっていくぜ。これさえ手に入れれば鬼に金棒……じゃなかった猿に如意棒ッてなものさ。もう怖い者なんかあるもんか!」そしておととを呼び寄せ「おととさん、帰ろうか。俺ら、おととさんの家まで送っていくよ。こんな竜王の御殿なんて気持ちの悪い奴のいるところにいつまでも勤めていないで、家に帰ってお母さんと二人で楽しく暮らしなよ……さあ、行こう」一同はボンヤリと気が抜けたようになっていて、悟空がおととの手を引いて連れて行くのを黙って見送るだけだった。
竜王の御殿から遠く離れたところまで来ると、おととは悟空に尋ねた。「このまま、陸にお帰りになるのですか」「ああそうだよ、俺ら水簾洞へ帰るんだ!」悲しみを堪えて別れの挨拶を告げ、悟空から走り去るおとと。悟空はおととの去った方へ手を振りながら、おとととの切ない恋の別れの唄を歌うのだった。

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【解説】
命を狙われたからとはいえ、如意棒を分捕る際の悟空の口調はほぼほぼやくざだ。最後に竜宮からおととを連れ出した事も場当たり的で手前勝手、おととは別に竜王たちから裏切り者と目されたわけでもないのにわざわざ目立つように連れ出されたあと、竜王たちから保護するわけでもなくリリースしてしまう。悟空が去ったあとのおととの立場が気の毒でならない。

太公郎は台本では「浦島太郎」と印刷されており、上から鉛筆で「太公郎」に訂正されている。歌姫は台本中では全て「姫」としか書かれておらず、悟空にすり寄るシーンでは「悩殺型の姫」とも表現されており、竜王の娘にしては俗っぽいなと思っていたら香盤表に「歌姫」と書かれてあった次第。
今回のミュージカルノルマは3ヵ所。冒頭の水中シーンで悟空が軽快に歌う唄、大宴会で歌姫が歌う唄、ラストで悟空がおとととの別れを惜しむ唄。歌姫の唄のみ歌詞の書き込みがないが、歌姫役の旭輝子の持ち歌か何かを使ったのだろうか。ここで触れる事でもないが俳優の神田正輝は旭輝子の実の息子にあたる。
スポンサーノルマは貝(子供の声が指定されている。実は貝は子供なので不二家のチョコが大好き、という事らしい)にゴールドチョコレートを与えるシーン。

特撮は水中シーンの背景にスクリーンプロセスを使用。遠景で見える竜宮の建物にはミニチュアを用いた。水中行や太公郎とのやりとり、貝に足を挟まれているおととのシーンでは「マスク」という指定がみられる。画面に波ガラスのようなフィルターをかけて水中撮影のような効果を出すための指示か。庭先で巨大如意棒の柱を見上げるシーンでは、カメラ割りのメモから察するに柱の根元部分のセットの前で悟空とくらげが見上げながらセリフのやりとりをしたようだが、台本ではそれに加えて「天をつく如意棒(ホリゾント使用)」というカットが入るはずだった。これは鉛筆で×印をつけてキャンセルされており、どうも特殊効果シーンを極力減らそうという意図が感じられてならない。
ラストの大立ち回りで柱の周囲を竜王の手下と悟空が周るシーンではスローモーションにして背中合わせにぶつかったタイミングで元の速度に戻るという指示がされているが、当時の機材的にはスローモーションは使えない。俳優がわざとゆっくり動く人力スローモーションによって、狭いセットで走り回っている様子を表現しようとしているのである。

台本のスケジュール表によると、放送日の前日に「音楽先取(ラジオ九州)」という鉛筆でのメモ書きがある。当時「エノケンの孫悟空」をネットしていたのはCBCテレビ(同時ネット)と大阪テレビ(キネコ送り)だけで、ラジオ九州(現:RKB毎日放送)はまだテレビ放送を開始していない。現時点で何を意味しているのかは不明。
posted by 猫山れーめ at 00:38| Comment(0) | エノケンの孫悟空(TV版) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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